世界のテクノロジー市場において、時価総額3兆ドルを超えた企業はApple、Nvidia、Microsoftの3社のみである。しかし、新たにAmazonがこの独占的クラブへ加わる可能性が高まっている。現在、同社の時価総額は2.4兆ドルだが、AWSの急成長とAI技術の活用により、今後2年以内に3兆ドルを突破するとの予測が出ている。

特に、AWSはハードウェアからソフトウェアに至るまでAIの主要レイヤーを支配し、企業向けAIサービスの中核を担う。自社開発のAIチップ「Trainium2」や、大規模言語モデル(LLM)プラットフォーム「Bedrock」、そしてAIアシスタント「Q」など、次世代テクノロジーを駆使した収益拡大が進む。

また、AIはAmazonのeコマース事業にも変革をもたらしている。物流最適化によるコスト削減、AIアシスタント「Rufus」や「Amazon Lens」による購買体験の向上、生成AIによる販売者支援など、あらゆる領域で効率化が進行中だ。こうした要因を背景に、Amazonの株価が2026年までに約37%上昇すれば、時価総額3兆ドル達成が現実味を帯びる。

AWSのAI戦略がもたらす圧倒的競争優位

Amazon Web Services(AWS)はクラウド市場において圧倒的なシェアを誇るが、近年はAI分野への投資を加速させている。AWSはAIの3つの主要レイヤーを支配することで、企業向けのAIサービス市場を牽引しようとしている。最下層のハードウェアでは、NvidiaのGPUを活用しつつも、自社開発のAIチップ「Trainium2」によって最大40%のコスト削減を実現し、差別化を進めている。

また、中間層の大規模言語モデル(LLM)では、AnthropicやDeepSeekの外部モデルをBedrock上で提供しながら、独自の「Nova」モデルも展開し、コスト削減と効率向上を両立させている。最上層のソフトウェアでは、企業向けAIアシスタント「Q」を導入し、データ分析やコード生成などの業務自動化を支援する。2023年には社内利用で2億6000万ドルのコスト削減と4,500年分の開発時間の短縮を達成したとされ、実用面での成果もすでに表れている。

これらのAI戦略は、AWSが単なるクラウド事業者ではなく、企業のAI導入を加速させる不可欠なプラットフォームへと進化することを意味する。特に、企業が独自のAIを開発するためのインフラとしてAWSを利用するケースが増えれば、AmazonはAI市場全体の成長とともに大きな利益を享受する可能性がある。これにより、AWSの収益は今後も安定して拡大し、Amazonの時価総額3兆ドル達成の原動力となるだろう。

AIによるeコマース変革と収益性向上

AmazonのAI戦略は、AWSだけでなくeコマース事業にも革新をもたらしている。同社の物流ネットワークは、2023年に米国内で8つの地域に分割され、AIによる需要予測を活用することで最適化が進んだ。これにより、配送距離の短縮と在庫配置の最適化が実現し、コスト削減と配送スピードの向上が同時に達成された。具体的には、AI活用により需要予測の精度が10%向上し、地域ごとの予測の正確性も20%改善されたとされる。

また、AIはショッピング体験そのものにも大きな影響を与えている。Amazonが開発したAIアシスタント「Rufus」は、商品比較を容易にし、消費者が適切な購入判断を下せるよう支援する。さらに「Amazon Lens」は、ユーザーが撮影した画像をもとに類似商品を検索する機能を提供し、視覚情報を活用した新たな購買体験を生み出している。これに加え、Amazonは生成AIを活用し、サードパーティ販売者向けに新商品ページ作成の自動化を進めている。AIが商品情報を自動入力することで、作業時間の短縮と検索ランキングの向上が実現し、販売者の収益向上にも貢献している。

これらの取り組みにより、Amazonのeコマース事業の効率性は飛躍的に向上している。従来、低利益率が課題とされていたeコマース部門だが、AI技術によるコスト削減と収益性向上が進めば、企業全体の利益構造にもポジティブな影響を与えることになる。AmazonがAIを駆使して収益源の最適化を進める中で、投資家の期待も一段と高まりつつある。

2026年までに3兆ドルを達成するための条件

Amazonが2026年までに時価総額3兆ドルに到達するには、株価が現在の水準から約37%上昇する必要がある。2024年の1株当たり利益(EPS)は5.53ドルと、前年比90%増と急成長を遂げた。さらにウォール街の予測では、2026年にはEPSが7.60ドルに達すると見込まれている。この場合、株価収益率(P/Eレシオ)は現在の40.9から29.9に低下し、市場全体と比較して割高感が薄れることになる。

しかし、Amazonが確実に3兆ドルクラブに加わるには、AWSのさらなる成長が不可欠だ。CEOのアンディ・ジャシーは「AWSのAI関連ビジネスは2024年にさらなる成長が可能だったが、データセンターの容量制限がボトルネックとなった」と指摘している。この問題は2025年後半には解消される見通しであり、AWSの収益拡大に寄与するだろう。

また、AIを活用したeコマース事業の収益改善もカギを握る。現在のAI導入は主に効率化を目的としているが、今後はより積極的に収益創出に直結するサービス展開が求められる。たとえば、AIアシスタント「Q」や「Rufus」をサブスクリプション型のプレミアム機能として提供することで、新たな収益源を確保する可能性がある。

これらの条件が順調に進展すれば、Amazonの時価総額3兆ドル達成は十分に現実的なシナリオとなる。AIを軸としたクラウドとeコマースの変革が、同社の成長を支える重要な要素であり、投資家にとっても今後の動向を注視する価値があるといえる。

Source:The Motley Fool