S&P500が過去最高水準を更新し続ける中、投資家の間では市場の行方に対する懸念が高まっている。バークシャー・ハサウェイを率いるウォーレン・バフェットは、近年アップル株を67%削減し、バンク・オブ・アメリカ株も34%削減するなど、売り越しを続けている。
これにより、同社のキャッシュポジションは3,340億ドルを超えた。この動きが市場撤退の兆候なのか、それとも慎重な資産運用の一環なのか。バフェットが最新の株主書簡で述べた「18の言葉」が、その答えを示唆している。
彼は「バークシャーは現金同等資産の保有を良質なビジネスの保有よりも優先することは決してない」と明言している。これまでの成功を支えてきたのは堅実なアメリカ企業であり、この方針は今後も変わらないという。S&P500のシラーCAPEが歴史的な高水準にある中、バフェットは「割高な市場では慎重に行動し、適正価格で質の高い株を買う」という長年の投資哲学を貫いている。
バフェットの売却戦略 大規模な現金化の背後にある意図とは

バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年に1430億ドル以上の株式を売却し、キャッシュポジションを過去最高の3340億ドル超へと引き上げた。この動きは、短期的な市場調整を見越したものなのか、それともより戦略的な意図があるのかが注目されている。
特に注目すべきは、同社がアップル株の67%を削減した点だ。アップルは長年にわたりバークシャーの主力銘柄であり、過去の株主総会でもバフェット自身が「バークシャーにとって最も価値ある企業」と評価していた。しかし、この大幅な削減は、成長鈍化への懸念、あるいは利益確定のための判断と考えられる。また、バンク・オブ・アメリカの34%削減も同様に、金融株の先行きに対する慎重な姿勢を示している。
一方で、売却により得た資金をどこへ向けるかは、今後の焦点となる。バークシャーは、9四半期連続で純売り手の立場を維持しながらも、新規投資の動きは限定的である。このことから、バフェットは市場に割安な投資機会が訪れるまで待機する意図を持っている可能性が高い。彼が長年掲げてきた「良質な企業を適正価格で買う」という哲学に照らせば、現在の市場水準では、割安な銘柄が少ないと判断しているのかもしれない。
「アメリカのビジネスを信頼する」バフェットのメッセージの真意
売却戦略が目立つ一方で、バフェットは市場からの撤退を明確に否定している。彼の株主書簡には、「バークシャーの株主は、私たちが常に資金の大部分を株式に投じ続けると確信してよい」と記されており、これは単なる市場の高値警戒による一時的な対応であることを示唆している。
また、「現金同等資産の保有を良質なビジネスの保有よりも優先することは決してない」という言葉は、同社の投資方針が揺るがないことを強調するものだ。これまでのバフェットの投資戦略は、長期的な視点で米国市場と企業の成長を信じることに根ざしており、その基本方針が変わることは考えにくい。
さらに、彼が現在キャッシュポジションを高めている理由の一つには、将来的な投資機会への備えがあると考えられる。市場が過熱している局面では慎重な姿勢を取りつつ、大幅な調整が発生すれば即座に行動に移せる準備を整えているのかもしれない。これは、2008年の金融危機時にバフェットが割安になった企業に対して積極的に資金を投じた戦略と一致する。
投資家が学ぶべきバフェット流の市場対応
バフェットの動きは、投資家にとって重要な示唆を与える。彼は短期的な市場の熱狂には流されず、長期的な価値に基づいて投資判断を行っている。S&P500のシラーCAPEが37を超えるなど、歴史的な割高水準にある中で、彼の慎重な対応は、一般の投資家にとっても参考になる。
特に、強気相場が続くときほど慎重に行動し、適正価格で質の高い株を買うという姿勢は、成功する投資の鍵である。バークシャーのキャッシュポジション増加は、市場の異常な高騰時には買いを急ぐべきではないことを示唆している。
また、バフェットのように市場全体に過度な楽観が広がる中でリスクを管理する姿勢は、個人投資家にとっても重要だ。短期の値動きに一喜一憂するのではなく、長期の視点で割安なタイミングを待つことが、持続的な資産成長につながる。バフェットは決して市場から逃げているわけではなく、むしろ慎重な構えを続けることで、次の大きな投資機会を狙っているのかもしれない。
Source:The Motley Fool