Nvidiaの新世代GPU「RTX 5080」において、一部のROP(レンダリング出力ユニット)が欠損している問題が報告された。この欠陥により、ベンチマーク「3DMark Time Spy」では12%の性能低下が確認され、場合によっては前世代の「RTX 4080 Super」を下回るスコアとなっている。

当初、この問題は「RTX 5090」や「RTX 5070 Ti」に限定されるとされていたが、Redditユーザーの報告と「Hardwareluxx」の検証により「RTX 5080」にも影響がある可能性が浮上した。Nvidiaはこの問題がGPU全体の0.5%に限定されるとしており、平均的な性能低下は4%程度と説明しているが、ROP数が特に重要なシナリオでは影響がより顕著になることが分かっている。

Nvidiaは影響を受けたユーザーに対し、購入元のボードパートナーを通じた交換を推奨しているものの、供給不足の影響で交換がスムーズに進むかは不透明な状況だ。Blackwell世代のGPUはすでに供給問題や価格高騰といった課題を抱えており、今回の欠陥がユーザーの不安をさらに高めることは避けられない。

RTX 5080のROP欠損問題の発覚とNvidiaの対応

RTX 50シリーズの新たな欠陥として浮上したROP欠損問題は、当初Nvidiaが認めた影響範囲よりも広がっている可能性が指摘されている。RTX 5090やRTX 5070 Tiの一部に製造上の問題があることは既に発表されていたが、新たにRedditユーザーの検証によりRTX 5080にも影響が及ぶケースが確認された。

この問題が明らかになったのは、あるユーザーが自身のRTX 5080を3DMark Time Spyでテストした結果、12%もの性能低下が発生していたことが発端である。この結果はドイツのハードウェアメディア「Hardwareluxx」の協力を得て検証され、ROPパーティションの一部が無効化されている可能性が高いことが示唆された。通常、ROP数が減少すればレンダリング処理能力が制限され、特定のワークロードでの性能低下につながる。

Nvidiaは問題の影響範囲を限定的とし、製造されたGPUの0.5%のみが影響を受けると説明している。しかし、ROP数の減少による影響はシナリオによって異なるため、ユーザーが体感する性能低下が4%程度に収まるとは限らない。特にROPに依存する負荷の高いタイトルや処理では、より顕著な影響が生じる可能性がある。Nvidiaは該当する製品の交換対応を推奨しているが、市場の供給不足を考慮すると、交換品がすぐに入手できるかどうかは不透明である。

ROP欠損の原因とNvidiaのビニング戦略

今回のROP欠損問題は、GPU製造時の「ビニング」と呼ばれる工程に起因している可能性が高い。ビニングとは、製造されたシリコンダイの品質を選別し、一部の機能を無効化することで異なるスペックの製品を作り分ける手法である。これは半導体業界で一般的なプロセスであり、Nvidiaも例外ではない。

たとえば、RTX 5090に使用される「GB202」ダイには192基のストリーミングマルチプロセッサ(SM)が搭載されているが、実際に有効化されるのは170基のみである。これにより、同じダイを活用しながら歩留まりを向上させることが可能となる。一方、RTX 5080にはフルスペックの「GB203」ダイが搭載されていると考えられていたが、一部のメディアエンジンが無効化されている可能性が指摘されている。この際、ROPパーティションにも影響が及び、意図しない性能低下を招いた可能性がある。

ビニングの過程でROPが一部無効化された場合、その影響を事前に特定し、適切な品質保証テストを行うことが求められる。しかし、今回の問題ではNvidiaやAIB(ボードパートナー企業)がこの点を見逃した可能性がある。特に、ROP数が減少することで発生する性能低下は、特定のテストシナリオでしか顕在化しないこともあり、通常の検証工程では見落とされる可能性がある。

Blackwell世代GPUの課題と市場への影響

RTX 50シリーズは、新アーキテクチャ「Blackwell」を採用したことで大きな注目を集めているが、発売当初からいくつかの課題に直面している。今回のROP欠損問題に加え、供給不足や価格の高騰といった問題があり、ユーザーの期待とは裏腹に不安要素が増している状況だ。

さらに、過去のRTX 40シリーズで問題視されたケーブルの過熱問題が再び報告されており、特定の環境では電源接続の安定性にも懸念がある。これらの問題が重なることで、Nvidiaの最新GPUに対する市場の評価は慎重にならざるを得ない。特に、競合するAMDの「RDNA 4」世代が適正価格で登場すれば、Blackwell世代の市場競争力に影響を及ぼす可能性がある。

Nvidiaは高性能GPU市場をリードする立場にあるが、今回のような問題が続けば、ユーザーの信頼を損ないかねない。特に、高価なハイエンドGPUを購入するユーザーにとって、製品の品質保証は最優先事項であり、交換対応が遅れることは不満につながる。今後、Nvidiaがどのようにこの問題に対応し、ユーザーの信頼を回復するのかが注目される。

Source:Tom’s Hardware