デジタル決済のリーダーであるPayPal(NASDAQ: PYPL)は、2025年に株価125ドルを達成できるのか。2024年第4四半期の決算では、売上高84億ドル(前年比4%増)、調整後EPS1.19ドル(同5%増)と堅調な成長を示したが、競争激化の中で成長の鈍化も見られる。
2025年に向けて、同社は決済技術の革新、パートナーシップ強化、AI活用による効率化、BNPL(後払い決済)の拡大を軸に成長戦略を推進する。しかし、主要事業の一つであるBraintreeの成長鈍化や価格戦略の影響も懸念されている。
アナリスト予測では、2025年の利益成長率は8.2%とされ、株価は依然割安な水準にある。41人のアナリストのうち半数以上が「ホールド」を推奨し、最高目標株価125ドルに達する可能性も指摘されているが、市場環境や内部改革の進捗次第となるだろう。
PayPalの成長を支える戦略転換と競争環境

PayPalは2023年にアレックス・クリスCEOが就任して以来、収益性の向上と業務効率化を最優先課題としてきた。その成果として、2024年第4四半期の売上高は前年同期比4%増の84億ドル、総決済取扱高(TPV)は7%増の4,378億ドルを記録した。加えて、Venmoの利用者数増加や「Pay with Venmo」の成長が、同社の収益基盤を拡大させている。
しかし、競争環境は厳しさを増している。VisaやMastercardといった伝統的な決済ネットワークだけでなく、Apple PayやGoogle Payといったテクノロジー企業も決済市場での影響力を強めている。さらに、Braintree部門の成長鈍化は懸念材料であり、特に大手顧客であるUberやAirbnbとの契約条件の見直しが収益に影響を及ぼす可能性がある。2023年には30%増だったBraintreeの決済取扱高成長率は、2024年第4四半期には2%にまで低下している。
この環境下でPayPalは、2025年以降も技術革新とパートナーシップの強化を軸に成長戦略を推進する。特に「PayPal Everywhere」や「Fastlane」といった新機能は、決済プロセスの簡素化とコンバージョン率向上を目的としており、取引の効率化が期待される。加えて、NBCUniversalやRoku、StockXといった新たな提携先との協力を通じて、利用者の増加を狙っている。
2025年の業績見通しと市場の評価
2025年のPayPalの業績見通しは、取引マージンの増加率が4〜5%、調整後1株当たり利益(EPS)が前年比6〜10%増の4.95〜5.10ドルになると予測されている。また、フリーキャッシュフローは60億〜70億ドルを創出し、同額の自社株買いを計画している。成長率としては堅調に見えるが、競争環境や価格戦略の影響を受ける可能性もあり、慎重な見方が必要だ。
市場の評価は分かれている。アナリスト41人のうち、17人が「強気(Strong Buy)」、2人が「やや強気(Moderate Buy)」と評価する一方、半数以上が「ホールド(Hold)」を推奨している。現在の株価水準は、2025年の予想利益の14倍のPER(株価収益率)で取引されており、過去5年間の平均PER50.5倍と比較すると割安感がある。
一方で、Braintree部門の成長鈍化や競争の激化により、売上成長率は4%にとどまると見られている。ただし、2026年には売上成長率6.6%、利益成長率12%と改善が見込まれており、中長期的な視点では回復の可能性もある。投資家にとっては、短期的な市場動向だけでなく、PayPalの改革がどのように進展するかを見極めることが重要となる。
株価125ドル到達の可能性と今後の課題
PayPalの株価が2025年に125ドルに達するかどうかは、複数の要因に左右される。現在の平均目標株価は93.62ドルであり、これは現在の株価から約25%の上昇余地を示している。最高目標株価は125ドルとされ、成長戦略が成功すれば、この水準に達する可能性もある。
ただし、競争環境は依然として厳しく、特にBraintreeの成長減速はリスク要因の一つだ。大口顧客との契約再交渉が2025年の売上成長を約5ポイント押し下げる可能性があるため、他の事業部門の成長がどこまでカバーできるかが鍵となる。また、AIの活用や自動化技術による業務効率化が進めば、コスト削減と利益率向上に寄与する可能性がある。
PayPalはBNPL(後払い決済)事業にも注力しており、2024年のTPVは前年比21%増の330億ドルに達した。この成長を維持できれば、新たな収益源としての期待は大きい。一方で、規制の強化や競争激化が影響を及ぼす可能性もあり、慎重に動向を見極める必要がある。
最終的に、PayPalが125ドルに到達するには、現在進めている戦略が実を結び、市場の期待を超える成長を実現できるかが問われることになる。
Source: Barchart