人工知能(AI)の急速な進化により、半導体大手Nvidiaの成長が加速している。2015年の収益は47億ドルだったが、2024年には609億ドルに達し、2025年度には1,293億ドルと予測されている。株価も過去10年間で24,275.3%の驚異的な上昇を記録し、時価総額は3.3兆ドルに達した。
この成長を牽引するのは、AIデータセンター分野の拡大と高度なGPU技術の需要増加だ。特に、H100やA100などのAI向けGPUは市場を圧倒し、データセンター事業の収益は前年同期比112%増となった。加えて、通信、自動運転、ロボティクスといった分野にも積極的に進出し、企業価値のさらなる向上が期待されている。
しかし、2026年度の予想利益の30倍という高いバリュエーションを考慮すると、投資判断には慎重さが求められる。2月26日の決算発表が今後の株価の行方を左右する可能性があり、投資家は適切なエントリーポイントを見極める必要がある。
Nvidiaの成長を支えるAI戦略 GPU市場の独占的地位とは

Nvidiaは、人工知能(AI)時代の中心に立ち、データセンター向けGPU市場をほぼ独占している。同社のH100やA100といった高性能GPUは、AIトレーニングや推論処理において不可欠な存在となり、特にクラウド企業や大手テクノロジー企業がこぞって導入している。第3四半期には、データセンター事業の売上が前年同期比112%増の308億ドルに達し、総収益の88%を占めるまでに成長した。
この成功の要因の一つが、2006年に開発されたCUDAプラットフォームである。GPUを汎用計算に活用するという当時革新的なアイデアが、現在では550万人以上の開発者を抱える強固なエコシステムを形成し、他社の追随を許さない技術的優位性を築いている。また、同社のAI Aerialプラットフォームは、T-MobileやEricssonといった通信企業がAI-RANの導入を進める上で不可欠な技術基盤となっている。
一方で、この独占的地位は、競争環境の変化によるリスクも伴う。AMDやインテルもAI向けGPU市場への参入を加速させており、特に新興企業による新技術がNvidiaの優位性を脅かす可能性がある。AI市場の急速な発展に伴い、企業間競争が激化する中、Nvidiaがどこまでその地位を維持できるかが今後の焦点となる。
次世代チップと自動運転技術 Nvidiaが狙う新たな市場
Nvidiaは、AI向けGPUだけでなく、自動運転技術やロボティクス分野にも積極的に進出している。同社のDRIVEプラットフォームは、TeslaやMercedesなどの大手自動車メーカーが採用しており、自動運転技術の進化を支えている。2023年第3四半期には、自動車およびロボティクス部門の売上が前年同期比72%増の4億4900万ドルに達しており、将来的な成長が期待される分野である。
また、次世代チップ「ブラックウェル(Blackwell)」の初期出荷が始まる見込みであり、これが業績をさらに押し上げる可能性がある。これまでのH100やA100に続き、AIトレーニングや推論処理をより高速化することで、データセンター市場だけでなく、自動車、製造業、医療分野への応用も広がると考えられる。特に、自動運転車の普及が進めば、NvidiaのGPU技術がその中核を担うことになる。
しかし、この分野では競争も激化しており、特にテスラは独自のAIチップ開発を進めている。Nvidiaが今後も技術革新を続けることで、自動車メーカーとのパートナーシップを強化し、市場シェアを維持できるかが問われている。自動運転技術の発展が加速する中、Nvidiaの取り組みは業界全体に大きな影響を与えるだろう。
株価の高評価は妥当か 投資家が考慮すべきポイント
Nvidiaの株価は、過去10年間で24,275.3%の驚異的な成長を遂げ、時価総額は3.3兆ドルに達している。ウォール街のアナリストの多くは引き続き「強い買い」の評価を下しており、今後12か月で最大63.6%の上昇余地があるとの見方もある。しかし、2026年度の予想利益の30倍という高いバリュエーションを考慮すると、慎重な投資判断が求められる。
短期的には、2月26日に発表される決算が株価の方向性を決める要因となる。Nvidiaは第4四半期の収益を375億ドル(±2%)と予想しており、アナリストの見立てでは収益が72.4%増、1株当たり利益が0.85ドルになるとされている。もし予想を大幅に上回れば、株価はさらに上昇する可能性があるが、市場期待を下回れば一時的な調整が入ることも想定される。
また、競争環境の変化や景気循環リスクも無視できない。特に、AI市場の拡大が進む中で、AMDやインテルなどの競合企業がシェアを奪う動きが見られれば、Nvidiaの成長速度に影響を及ぼす可能性がある。現在の株価水準を踏まえると、投資家は一時的な調整局面を待ちつつ、長期的な視点でエントリーポイントを見極める必要がある。
Source: Barchart.com