バークシャー・ハサウェイの最新10Kレポートに、バンク・オブ・アメリカの名前が記載されなかったことが市場で注目を集めている。本来、同レポートでは大規模かつ高収益の企業としてバンク・オブ・アメリカが言及されるのが通例であったが、今回は明らかに意図的とも取れる形で省略された。この異例の対応が何を意味するのかは不明であり、市場関係者の間で様々な憶測を呼んでいる。

しかし、この出来事にもかかわらず、バンク・オブ・アメリカの株価は安定して推移しており、月曜日の取引ではわずかに上昇した。さらに、同行のデジタルインタラクション数が前年同期比12%増の260億回を超えたことも発表され、オンライン利用の拡大が顕著になっている。一方で、2024年には126の支店を閉鎖し、業界全体の縮小トレンドにも直面している。

ウォール街のアナリストは、同社株に対して強い買いの評価を維持しており、今後の上昇余地は約18%と見られている。バフェットのレポートでの省略が、同行の将来にどのような影響を与えるのか、今後の動向が注視される。

バークシャー・ハサウェイの10Kレポートにおける異例の省略

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが発行した最新の10Kレポートでは、これまで頻繁に言及されてきたバンク・オブ・アメリカ(BAC)の名前が省かれるという異例の事態が発生した。通常、このレポートには同社が保有する主要な投資銘柄が詳細に記載され、バンク・オブ・アメリカもその中で特筆されていた。しかし、今回の文言を見る限り、同銀行の名前は一切登場せず、リストに並ぶ他の企業と比較して明らかに欠落している。

特に「我々はApple(AAPL)などの有名な非常に大きく高収益の企業の小さな割合を所有している」との記述があるにもかかわらず、バンク・オブ・アメリカはここに含まれなかった。さらに、その他の企業がアルファベット順に並べられている中で、「B」の企業が抜け落ちている点も注目に値する。これは偶然なのか、それとも意図的なものなのか、投資家の間で様々な憶測を呼んでいる。

バークレイズのアナリストであるジェイソン・ゴールドバーグがこの事実を最初に指摘し、メディアもこれを大きく報じた。しかし、市場の反応は限定的で、バンク・オブ・アメリカの株価は大きく下落することなく、むしろ微増して取引を終えた。この点から、投資家は今回の省略を重大な問題とは捉えていない可能性が高い。それでも、バフェットが長年保有してきた主要銀行株の扱いに変化が見られるとすれば、今後の動向には注視が必要である。

バンク・オブ・アメリカのデジタル戦略と支店閉鎖の実態

一方で、バンク・オブ・アメリカはデジタル戦略を強化しており、その成果が顕著になりつつある。最新のデータによれば、同行のデジタルインタラクションは260億回を超え、前年同期比で12%の増加を記録した。これは、顧客の銀行利用が物理的な支店からオンラインサービスへと移行していることを示唆するものであり、金融業界全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れに沿った動きといえる。

特に、AIを活用したバーチャルアシスタント「Erica」や企業向けの「CashPro」サービスアドバイザーが好調で、顧客の利便性向上に貢献しているとされる。さらに、プライベートバンク向けの新機能の採用も進んでおり、富裕層へのサービス拡充も戦略の一環となっている。このように、バンク・オブ・アメリカはデジタル領域で競争力を高めることで、新たな収益機会を模索している。

しかし、デジタルシフトの影響は支店網の縮小にもつながっている。2024年には同行が126の支店を閉鎖しており、これは米国の大手銀行の中でウェルズ・ファーゴに次ぐ規模である。支店の削減はコスト削減には寄与するものの、地域密着型の顧客には不便をもたらす側面もあり、長期的にブランドへの影響を懸念する声もある。デジタル化による成長と従来型の店舗サービスのバランスをどう取るかが、今後の課題となるだろう。

ウォール街の評価と今後の株価見通し

バンク・オブ・アメリカに対するウォール街の評価は依然として堅調であり、アナリストは強い買いの推奨を維持している。過去3ヶ月間のレポートでは、18の買い推奨と2のホールド評価が下されており、市場全体として同行の成長性を高く評価していることが分かる。直近1年間で株価は37.1%上昇しており、現在の市場環境を考慮すると依然として好調な水準を維持している。

また、平均目標株価は1株あたり53.03ドルとなっており、現在の株価水準から約17.92%の上昇余地があると予測されている。バフェットのレポートで名前が省かれたことに対する懸念はあるものの、現時点でバークシャー・ハサウェイの投資方針に大きな変化が生じたとは言い切れない。むしろ、バンク・オブ・アメリカの強固なデジタル戦略や収益構造が、引き続き投資家の信頼を維持している要因といえる。

今後の焦点は、同社がデジタル領域でどこまで収益を伸ばせるか、また、支店削減によるコスト削減が業績にどの程度寄与するかにある。金融市場の変動が激しさを増す中で、バンク・オブ・アメリカがいかに適応し、成長を続けるかが問われている。ウォール街の評価を維持し続けるためにも、今後の経営戦略と投資家へのメッセージが重要な鍵を握ることになるだろう。

Source: TipRanks