ビットコインが3カ月ぶりの安値である8万7,000ドルを記録し、MicroStrategyの株価も急落した。2月25日には11%下落し、過去5日間で合計24%の下落幅となった。この背景には、15億ドル規模のBybitハッキング事件があり、市場全体が動揺している。

しかし、MicroStrategyはこの状況でも強気の姿勢を崩さず、約20億ドル分のビットコインを追加購入した。同社の会長マイケル・セイラー氏は、ビットコイン価格が長期的に大幅な上昇を遂げると予測しており、歴史的なデータから見ても、同社株価はビットコインと強く連動する傾向にある。

投資会社KBWはMicroStrategyの投資妙味を評価し、買い推奨を発表。目標株価は現在の2倍以上の560ドルとし、ウォール街のアナリストも同様に強気な見方を示している。短期的な市場変動が続くなか、投資家は売却か押し目買いかの判断を迫られている。

ビットコインとMicroStrategyの深い関係 株価下落の本質とは

MicroStrategyの株価は、2月21日に発生したBybitのハッキング事件による市場の動揺と、ビットコインの急落に直接影響を受けた。このハッキング事件では、約15億ドル相当の暗号資産が流出し、市場の信頼性が揺らいだことで、ビットコイン価格が3カ月ぶりの安値となる8万7,000ドルまで下落した。MicroStrategyは自社資産の多くをビットコインとして保有しているため、この価格変動が株価にも大きく反映される構造になっている。

また、同社の経営戦略自体が「ビットコインの価格上昇を前提とした投資モデル」である点も、価格変動の影響を増幅させる要因となっている。MicroStrategyは企業としての本業であるビジネスインテリジェンス事業を持つが、投資家の関心はむしろ同社のビットコイン戦略に向けられており、株価も暗号資産市場の動向と連動している。そのため、ビットコイン価格が下がればMicroStrategyの株価も下落し、逆にビットコインが上昇すれば株価も上昇するという極めて単純な相関関係が成り立つ。

このような相関関係は、投資家にとって魅力的な投資機会となる場合もあれば、急落時のリスクを増幅させる要因ともなる。今回の株価下落が一時的なものなのか、それともビットコイン市場全体の大きなトレンド転換の兆しなのかは慎重に見極める必要がある。

MicroStrategyの強気姿勢と投資家の評価 560ドルの目標株価は実現するか

こうした市場環境の中で、MicroStrategyはむしろ積極的にビットコインを買い増し、約20億ドル分の追加購入を実施した。これは、同社が短期的な価格変動に影響されることなく、長期的な視点でビットコインの価値上昇を確信していることを示している。会長のマイケル・セイラー氏は、ビットコインが最終的に500万ドルに達する可能性すら示唆しており、この見解が同社の戦略の根幹を支えている。

こうした背景から、投資会社KBWのアナリストであるビル・パパナスタシウ氏は、MicroStrategy株を「買い」と評価し、目標株価を560ドルと設定した。これは現在の株価水準から120%以上の上昇余地を示唆しており、ウォール街のアナリストも同様に強気な見方をしている。実際、同社のコンセンサス評価は「強い買い」とされており、目標株価の平均は540.36ドルとなっている。

しかし、こうした予測が現実のものとなるかは、結局のところビットコイン市場の動向次第である。過去のデータから見ても、MicroStrategyの株価はビットコイン価格に強く依存しており、短期的な変動が大きいため、投資家は高いボラティリティを前提にした戦略を取る必要がある。今回の下落を「買い場」と見るか、それともリスク回避のための「撤退のタイミング」と見るかは、ビットコイン市場の今後の動向をどう評価するかにかかっている。

ビットコイン会計基準の変更とS&P 500への組み入れ期待

MicroStrategyにとって追い風となる可能性があるのが、金融会計基準審議会(FASB)がビットコインの保有を公正市場価値で報告できるようルールを変更したことだ。これにより、同社の財務諸表においてビットコインの価値がより正確に反映されることとなり、投資家にとっての透明性が向上する。従来の会計基準では、ビットコインの時価評価が困難であり、企業の財務状況を正しく把握することが難しかったが、新基準によってMicroStrategyの実際の資産価値がより明確に示されることになる。

さらに、このルール変更に伴い、MicroStrategyがS&P 500指数に組み入れられる可能性も浮上している。これは同社の企業価値を大きく押し上げる要因となり得る。S&P 500に組み入れられた場合、機関投資家の資金流入が増加し、株価の安定性と上昇の可能性が高まると考えられる。ただし、S&P 500入りには時価総額や収益基準などの厳格な要件があり、MicroStrategyがこれを満たせるかどうかは現時点では不透明である。

いずれにせよ、ビットコインを中心とした同社の経営戦略が今後どのように評価されるかが、投資家の判断を左右する大きな要因となる。短期的な市場変動に振り回されるのではなく、長期的な視点で企業の成長性を見極めることが求められる。

Source:Barchart.com