音声AI企業のSoundHound AI(SOUN)の株価が年初来で53%以上下落し、現在10ドルを下回る水準で推移している。2024年にはNvidiaが同社の株式を保有していることが明らかとなり、株価は一時835.9%の急騰を記録したが、その後の売却によって大幅な調整を強いられた。この下落の背景にはマクロ経済の不確実性や過去の高評価額に対する見直しがあり、市場のセンチメントは慎重姿勢を強めている。

2月27日に予定されている第4四半期決算発表を前に、投資家はSoundHoundの成長性と収益性の行方に注目している。同社は自動車産業やレストラン業界向けのAI技術を強化し、売上の拡大を続けている。通年売上は8,200万ドルから8,500万ドルの見込みで、第4四半期は前年比最大104%の成長が予測されている。

Nvidiaの株式売却が与えた影響と市場の反応

SoundHound AIの株価下落の一因として、Nvidiaが同社の保有株を売却したことが挙げられる。Nvidiaは2024年初めにSoundHound株を保有していることを公表し、これが投資家の信頼を高め、株価を835.9%という驚異的な水準まで押し上げた。しかし、その後の売却により市場の期待感は後退し、株価は52週高値の24.98ドルから64%下落する結果となった。

この株式売却は、SoundHoundの企業価値に対する市場の見方を大きく揺るがせた。NvidiaはAI市場において最も影響力のある企業の一つであり、その投資判断は業界全体の動向にも影響を及ぼす。同社の売却決定は、SoundHoundの成長可能性に対する市場の期待が一時的に高まりすぎたことを示唆している可能性がある。

一方で、SoundHoundの事業基盤や技術的優位性が失われたわけではない。Nvidiaの売却は単なるポートフォリオの再編成であり、企業の長期的な成長に対する評価とは異なるとの見方もある。市場は短期的な動向に敏感に反応する傾向があるが、今後の業績が安定すれば投資家の信頼も回復する可能性がある。


急成長する音声AI市場とSoundHoundの事業展開

音声AI市場は、カスタマーサービスや自動車産業をはじめ、多様な分野で急成長を遂げている。SoundHoundは、この成長市場において強い存在感を示しており、自動車メーカーやレストラン業界との提携を強化することで事業の拡大を進めている。2024年の最初の9カ月間で5,015万ドルの売上を達成し、第4四半期には前年比86%から104%の成長が見込まれていることからも、その勢いは顕著である。

特に、自動車産業における音声AI技術の活用は進んでおり、運転中の安全性向上や利便性の向上が期待されている。SoundHoundは主要な自動車メーカーと提携し、インフォテインメントシステムへのAI統合を推進している。さらに、レストラン業界向けの音声AIソリューションも拡大し、注文の自動処理やカスタマーサポートの効率化を実現しつつある。

こうした取り組みは、SoundHoundの収益構造の多様化にもつながっている。これまでの収益は一部の大口顧客に依存する側面があったが、業界ごとの事業拡大により安定した収益基盤を築くことが可能になる。加えて、金融、医療、保険分野への進出も進めており、成長機会は今後さらに広がると考えられる。


収益性改善への取り組みと2025年の成長戦略

SoundHoundは売上成長を継続しつつ、2025年までに調整後EBITDAベースでの黒字化を目指している。そのための戦略として、コスト最適化と業務効率の向上に注力している。AI技術の開発における合理化を進めることで、研究開発費を抑えながら競争力を維持する方針を示している。

さらに、既存の事業領域における収益性向上も課題となっている。特にレストラン業界向けのサービスでは、導入企業の拡大とともに追加機能の提供による収益向上を狙っている。加えて、AI搭載エージェント事業の拡充によって、より高付加価値のソリューションを提供し、単価の向上を図ることができる。

2025年の売上予測は1億5,500万ドルから1億7,500万ドルとされており、成長の継続が期待される。もし第4四半期決算で業績が市場予測を上回るようであれば、今後の成長戦略に対する投資家の信頼は強まり、株価の回復にもつながる可能性がある。一方で、売上成長が鈍化した場合、さらなるコスト削減策の必要性が浮上し、収益性の確保が課題となるだろう。

Source:Barchart.com