ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが2024年第4四半期の13Fレポートで意外な投資行動を明らかにした。これまで市場全体への投資を推奨してきたバフェットが、S&P 500に連動するETF2銘柄を売却したのである。
バフェットは一般投資家に市場全体への長期投資を勧める一方で、自身の投資方針は異なる可能性がある。バークシャーは過去2年間、手元資金を積み上げており、現在の市場を割高と見ていることがうかがえる。
市場全体の上昇局面でバフェットが慎重姿勢を強めたことは、投資家にとって重要なシグナルとなる。果たしてこれは市場調整の前兆なのか、それとも次の投資機会を見据えた戦略なのか、今後の動向が注目される。
バフェットの投資哲学と市場の変化 S&P 500 ETF売却の背景
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ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイは2024年第4四半期にバンガード S&P 500 ETF(VOO)とSPDR S&P 500トラスト(SPY)を売却した。これらのETFは市場全体を反映する銘柄であり、バフェット自身が長年推奨してきた投資対象である。
しかし、バークシャーのポートフォリオにおいてこれらのETFの比率は0.01%未満にすぎず、戦略の中核を担う存在ではなかった。バークシャーが2019年にETFを取得した際、市場は現在ほど割高ではなく、分散投資の利点を活かす意図があったと考えられる。しかし、現在の市場環境では別の投資先に資金を振り向ける方が合理的だと判断した可能性が高い。
バフェットは一般投資家に対し「市場全体への長期投資が最良」と助言してきたが、自身の運用においては異なるアプローチを取る。これは、バークシャーが機関投資家であり、より戦略的な資産配分が求められるためだ。ETFの売却は、市場の過熱感を反映した動きとも取れるが、その背景にはより慎重な資本運用の意図があるのではないか。
「強欲は禁物」 バフェットが警戒する市場のバリュエーション
現在の市場環境は、バフェットの有名な投資哲学「他人が貪欲なときには恐れよ、他人が恐れているときには貪欲であれ」に照らし合わせると、明らかに前者の局面にある。株価は高値圏にあり、多くの投資家が強気相場を前提としたリスクテイクを進めている。
バークシャー・ハサウェイが近年手元資金を過去最高レベルまで積み上げている点も、市場を慎重に見極めている姿勢を示している。バフェットの投資方針は、割安な優良企業の株を適正価格で取得することにあるため、現在のようにバリュエーションが過熱している状況では、新規の投資機会を見送る選択を取ることもあり得る。
また、バークシャーは2024年第4四半期にウルタ・ビューティー(Ulta Beauty)の全株を売却し、ポートフォリオの整理を進めている。この動きは、単なる銘柄選定の見直しではなく、市場全体の方向性に対する慎重な姿勢の現れとも言えるだろう。バフェットは短期的な市場の動向に振り回されることはないが、現在の状況を冷静に見極める姿勢を示している。
バークシャーの次なる一手 市場調整に備えた資金戦略
バークシャー・ハサウェイがETFを売却した一方で、同社は巨額の現金を保持し続けている。これは、新たな投資機会を慎重に探っていることを示唆している。バフェットは市場の過熱を警戒しつつも、魅力的な投資対象が現れれば大胆に資金を投じる戦略を取る。
2024年第4四半期の取引では、唯一新規に追加された銘柄がコンステレーション・ブランズ(Constellation Brands)だった。この選定は、バフェットまたはバークシャーの投資マネージャーが、今後の市場環境を踏まえた成長ポテンシャルを見出した可能性がある。一方で、新規銘柄の追加が限定的である点からも、依然として市場に対する慎重な見方が続いていることがうかがえる。
市場が調整局面に入れば、バークシャーは豊富な資金を武器に新たな優良株を取得する動きを見せるかもしれない。バフェットのこれまでの投資行動を振り返ると、大きな下落局面で積極的に資金を投入する傾向がある。現在の売却方針が単なるポートフォリオ調整なのか、それとも次なる投資機会を見据えた準備なのか、その答えは今後の市場動向によって明らかになるだろう。
Source: The Motley Fool