また、1月にカリフォルニア州で発生した大規模山火事の影響も重く、今期の損失見込みは4500万ドルに達すると推定されている。この短期的な逆風を受け、株価は業績発表後も3%下落した。

一方で、Lemonadeは長期的な収益改善に向けた施策を強化している。AIを活用した価格設定モデルの導入や、地理的・商品ポートフォリオの多様化を推進し、2026年までの黒字化を目指す。株価下落を好機と捉える投資家にとっては、長期的な成長を見据えた買いのチャンスとなる可能性がある。

第4四半期決算は成長を継続 収益増と損失率改善が際立つ

Lemonadeの2023年第4四半期決算は、成長基調を維持する結果となった。収益は前年同期比29%増の1億4880万ドルを記録し、5四半期連続で加速的な成長を示した。特に「保有保険料(IFP)」は前年比26%増の9億4370万ドルに達し、顧客1人あたりの平均保険料も5%上昇するなど、基盤の強化が進んでいる。また、顧客数は前年比20%増の243万人に達し、同社のサービスが市場で浸透しつつあることを示している。

注目すべきは、Lemonadeの「総損失率(グロス・ロス・レシオ)」が過去最低の63%に改善された点である。前年同期比で12ポイントの改善を記録し、73%からの大幅な進展となった。これは、AIを活用したリスク選定の高度化や、価格設定の精度向上によるものであり、同社の引受業務(アンダーライティング)戦略の成功を示しているといえる。また、調整後EBITDAの損失は前年の2890万ドルから2380万ドルへと縮小し、収益構造の安定化が進んでいることが確認された。

このような数値の改善は、Lemonadeの中長期的な事業戦略が着実に実を結びつつあることを示唆している。しかし、依然として黒字化には至っておらず、成長投資とのバランスが課題となる。現状では利益よりも市場拡大を優先する姿勢が見受けられるが、2026年までの黒字化を掲げる中で、投資効率のさらなる向上が求められる局面にある。

業績予測の下振れとカリフォルニア州の山火事が投資家心理を冷やす

第4四半期決算の好調とは裏腹に、Lemonadeの2025年業績見通しは市場の期待を下回った。同社は2025年の収益を6億5500万ドル~6億5700万ドルと見込んでおり、前年比24%~25%の成長を示しているものの、アナリスト予想の6億6340万ドルには届かなかった。また、2025年第1四半期の収益予測も1億4300万ドル~1億4500万ドルとされ、前四半期からの減少を示唆する形となった。こうしたガイダンスの下振れは、Lemonadeの成長スピードが鈍化する可能性を示唆し、投資家の警戒感を高める要因となった。

加えて、2024年1月にカリフォルニア州で発生した大規模山火事の影響が重くのしかかっている。同社はこの災害による総損失を4500万ドルと見積もっており、調整後EBITDAの損失は2000万ドルに達すると予測されている。これにより、2025年第1四半期の調整後EBITDA損失は4600万ドル~4900万ドルに膨らむ見込みだ。自然災害は保険会社にとって常にリスク要因であり、今回の山火事による影響が短期的な業績を圧迫する可能性がある。

LemonadeはAIを活用したリスク管理を強化しているものの、自然災害リスクに対する耐性は従来の大手保険会社と比べて十分とは言えない。保険ポートフォリオの拡充やリスク分散の取り組みは進んでいるが、今回のような大規模災害による影響をどの程度抑えられるのかは、今後の成長戦略を占う上で重要なポイントとなる。

長期投資家にとっての好機か 収益性改善と成長戦略の行方

短期的な市場の反応として、Lemonadeの株価は第4四半期決算発表後に3%下落し、直近3か月では37.5%の下落を記録している。しかし、同社の長期的な成長戦略を踏まえれば、現状の株価水準は投資の好機となる可能性もある。Lemonadeは2025年に2年連続で調整後のフリーキャッシュフローをプラスにすることを目標とし、2026年末までに調整後EBITDAを黒字化する計画を掲げている。収益性の向上が進むことで、企業の安定成長が期待される。

同社はリスク管理強化のため、地理的・商品ポートフォリオの多様化を推進しており、特定の災害リスクに依存しないビジネスモデルを構築しつつある。また、「シンセティック・エージェント(Synthetic Agents)」プログラムの拡大を図り、成長投資を2023年の5500万ドルから2024年には1億2200万ドルへと倍増させた。これはAIを活用したマーケティングの最適化と新規顧客獲得の強化を目的としており、長期的な収益成長の土台を築くものといえる。

一方で、投資家が注視すべきは、収益拡大とコスト管理のバランスである。現時点では成長戦略に積極投資する姿勢を維持しているが、利益確保に向けたスピード感が問われる局面でもある。Lemonadeの株価は短期的な不安要因で下落しているものの、長期的な視点に立てば、同社の成長ポテンシャルを見極める機会ともなり得る。

Source:Barchart.com