パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の株価が急落し、市場に動揺が広がっている。同社は2024年に売上成長を背景に過去最高値の125ドルを記録したが、現在は90ドル付近で推移。過去5日間で20%以上下落し、投資家の不安が高まっている。
株価下落の要因として、高バリュエーションへの懸念が挙げられる。現在の株価は予想売上高の50倍、予想利益の290倍という水準に達しており、投資家の慎重姿勢が強まっている。また、CEOアレックス・カープが株式売却を進めていることが、経営陣の将来性に対する信頼低下を招いている。
さらに、政府契約依存リスクが改めて浮上した。米国防長官が国防予算の削減に言及し、今後5年間で年率8%の減少が見込まれるとの報道があった。2024年の同社の売上の55%を政府契約が占める中、財政の不確実性が業績に影を落とす可能性がある。一方で、商業部門の成長により、同社は事業の多角化を進めており、市場の注目を集めている。
パランティア株の急落 背景にある政府契約依存と市場の評価懸念

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の株価は、2024年に過去最高値125ドルを記録した後、大きく下落した。この要因の一つが、同社の政府契約依存度の高さである。2024年の総売上29億ドルのうち、55%にあたる16億ドルが政府向け事業からの収益であった。特に、米国政府向け売上は前年比30%増の12億ドルに達し、全体の42%を占める。この高い依存度が、国防予算削減の可能性というリスクを市場に意識させた。
米国防長官ピート・ヘグセスが発言した通り、今後5年間で防衛予算が年率8%削減される可能性がある。パランティアの年次報告書(10-K)でも、政府支出が安定しないことへの懸念が示されており、投資家の不安は高まった。過去5日間で株価が20%以上下落したのも、このリスクが市場でより強く意識された結果だろう。
一方で、パランティアの政府向け契約は単なるソフトウェア提供にとどまらず、防衛やインテリジェンス分野での中核的役割を担っている。同社のAIプラットフォームは機密情報の分析や戦略立案の支援に利用されており、今後の政府予算削減が必ずしもパランティアへの影響を直ちに及ぼすとは限らない。だが、政府向けの売上減少が続けば、商業部門の成長によるリスク分散がより一層求められるだろう。
パランティアの商業部門成長はリスクヘッジとなるか
政府契約への依存度が高いパランティアだが、商業部門の成長は急速に進んでいる。2024年の商業向け売上は前年比29%増の13億ドルに達し、全体の45%を占めるまでに拡大した。特に米国商業市場での成長が顕著で、売上は54%増の7億230万ドルを記録した。これは、企業がパランティアのAIプラットフォーム(AIP)を活用し、自社のデータ解析を強化しているためである。
パランティアのAI技術は、企業が膨大なデータをリアルタイムで分析し、意思決定を最適化することを可能にする。政府機関向けに提供されてきた技術が、金融、医療、製造業などの分野に応用されることで、新たな市場を開拓している。これにより、同社は政府依存から脱却し、安定した成長を遂げる可能性を持つ。
ただし、商業部門の売上が全体の45%を占めるようになったとはいえ、政府契約の影響力は依然として大きい。政府向け事業が不調に陥れば、商業部門だけでは成長を維持するのは難しいと考えられる。また、パランティアのAIプラットフォームが競争激化する市場でどこまで優位性を保てるかも不透明だ。短期的には商業部門の拡大が株価の下支えとなる可能性があるが、長期的には政府と商業のバランスをどう取るかが課題となるだろう。
株式評価の高さと経営陣の動向が投資家心理を揺さぶる
パランティアの株価が急落したもう一つの要因は、極めて高いバリュエーションである。同社の株は、予想売上高に対する株価倍率(PSR)が50倍以上、予想利益に対する株価倍率(PER)が290倍という水準で取引されており、市場全体の平均を大きく上回る。成長株としての期待感が織り込まれた結果だが、この評価水準は業績の拡大が継続しない限り維持が難しい。
こうした中で、CEOのアレックス・カープが株式売却プログラムを発表したことが、投資家の警戒感を強めた。企業トップが大量に持ち株を売却することは、しばしば「経営陣が株価のピークを見極めている」と解釈され、市場に不安を与える。実際、パランティアの現在の株価は90ドル前後で、アナリストの平均目標株価85.11ドルを上回っている。市場がこの価格を過大評価とみなした場合、さらなる調整が進む可能性がある。
パランティアの強みは、政府・商業の両分野で確固たる技術基盤を築いている点にある。しかし、現在の株価が成長期待を先行して反映している以上、業績が市場の予測を超え続けなければ、投資家の失望を招くことになりかねない。株価の安定には、引き続き売上成長を継続し、高バリュエーションを正当化できるかが鍵を握るだろう。
Source:Barchart.com