ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ(NYSE: BRK.A)は、2025年の年次総会で同社の現金保有額が過去最高に達したことを明らかにした。その額は3300億ドルを超え、S&P 500上場企業の94%の時価総額を上回る規模である。

この現金蓄積の背景には、大手企業株の大規模な売却がある。特に、バンク・オブ・アメリカ(NYSE: BAC)やアップル(NASDAQ: AAPL)の株式をそれぞれ25%、65%削減したことが注目される。これは市場の過熱感を警戒し、大幅な調整が近づいている可能性を示唆している。

一方で、バフェットは新規投資を大幅に控えており、2024年の年間購入額は60億ドル未満にとどまった。例外はオキシデンタル・ペトロリアム(NYSE: OXY)であり、同銘柄への投資は増加傾向にある。この動きは、株式市場の短期的なリスクが高まりつつあることを反映していると考えられる。


バフェットが積み上げた3300億ドルの現金 その背景とは

バークシャー・ハサウェイの現金保有額は、2025年の年次総会時点で3300億ドルを突破した。これは前年と比較して約70%の増加であり、S&P 500に上場する大多数の企業の時価総額を上回る規模である。同社がこのような巨額の現金を保持するのは異例であり、市場に対する慎重な姿勢を強調する動きといえる。

この現金蓄積の背景には、大手銘柄の売却がある。特にバンク・オブ・アメリカとアップルの株式をそれぞれ25%、65%削減したことが注目される。これに加え、アメリカン・エキスプレスやコカ・コーラといった企業の株も売却し、ポートフォリオの大幅な見直しを図った。この動きは、バフェットがこれらの銘柄を割高と判断し、株式市場の大幅な調整リスクを警戒していることを示唆している。

一方で、バークシャー・ハサウェイの買い行動は限定的だった。2024年の年間購入額は60億ドル未満にとどまり、唯一の例外としてオキシデンタル・ペトロリアムの株式を積極的に買い増した。バフェットがエネルギーセクターに注目しているのは、原油市場の変動や長期的なエネルギー需要の見通しに基づくものと考えられる。

市場のリスク要因 FOMCの政策とトランプの経済戦略

現在の株式市場には、複数のリスク要因が存在する。特に重要なのは、米連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策と、ドナルド・トランプ前大統領の経済政策の影響である。インフレが依然として高止まりしている中、FOMCは利下げを慎重に進める可能性がある。もしインフレが再加速すれば、金利の引き上げが検討されることになり、これが市場の下振れ要因となる。

トランプの経済政策は、関税の引き上げや政府支出の削減を伴う可能性がある。特に政府職員の削減は、労働市場に大きな影響を及ぼし、失業率の上昇につながる恐れがある。これは消費の減退を招き、企業収益にも悪影響を与える要因となる。一方で、政府支出の削減が財政赤字の抑制につながれば、インフレを抑制する効果も考えられる。

FOMCの政策とトランプの経済戦略がどのように交錯するかは、2025年の市場動向を左右する大きなポイントとなる。バフェットが現金を積み増しているのは、こうした不確実性に備えるための戦略と考えられる。市場が大幅な調整を迎えた際に、適切な投資機会を狙うための準備を整えているのかもしれない。

バフェットの行動に学ぶ 資産防衛と新たな投資機会への備え

バフェットが市場から距離を置いているからといって、すべての投資家が同じ行動を取るべきとは限らない。しかし、彼の投資戦略には、市場のリスクを慎重に評価し、新たな機会に備える姿勢が表れている。短期的な市場の動きに振り回されるのではなく、長期的な視点で資産を守り、適切なタイミングで再投資を行うことが重要である。

S&P 500の見通しを考えると、短期的には調整局面に入る可能性がある。過去最高値から最大5.5%の下落が予想され、重要なサポート水準として5,725~5,780ポイントが意識されている。このラインを下回れば、5,400ポイントまでの下落も視野に入る。一方で、経済成長が持続し、インフレが落ち着けば、FOMCの金融政策は緩和方向へ転じ、市場全体の上昇につながる可能性もある。

バフェットが大量の現金を保有しているのは、単なるリスク回避ではなく、適切な投資機会に備えるための戦略といえる。個人投資家にとっても、無理にリスクを取るのではなく、慎重な資産配分と市場の動向を見極める姿勢が求められる。

Source:MarketBeat