米製薬大手イーライリリーが、米国内に4つの新たな製薬工場を建設するために270億ドル以上を投資する計画を発表した。2020年から2024年にかけて既に230億ドルを投じていたが、今回の追加投資により国内製造能力のさらなる強化を図る。
同社はこれによりエンジニアや科学者など3,000人以上の高度技術職を創出するとしており、建設段階では10,000人の雇用が見込まれる。新工場の具体的な立地は年内に公表され、稼働開始は今後5年以内とされている。
この動きは、トランプ前大統領が先週、製薬輸入品に25%以上の関税を課す可能性を示唆したことと関連があるとみられる。さらに、同氏はイーライリリーのCEOら製薬業界の経営者と非公開会談を行っており、国内生産拡大への圧力が強まっている可能性がある。
イーライリリーの国内投資拡大 製薬業界に与える影響とは

イーライリリーは、米国内に4つの新たな製薬工場を建設するために270億ドル以上を投資すると発表した。同社は2020年から2024年にかけて既に230億ドルの国内投資を実施しており、今回の計画はその上乗せとなる。この巨額投資は、医薬品の生産能力を強化するとともに、安定した供給網を確保することを目的としている。
この計画によって、3,000人以上の高度技術職が創出されるほか、建設段階では10,000人の雇用が見込まれる。新工場の具体的な立地については、今年後半に発表される予定で、稼働開始は今後5年以内とされている。米国政府は、製薬業界の国内生産拡大を推進しており、イーライリリーの投資もこの動きと一致している。
米国の製薬業界では、グローバルなサプライチェーンの見直しが進んでおり、中国やインドに依存する原材料や生産のリスクが懸念されている。今回の投資は、国内生産体制の強化を通じて医薬品の安定供給を目指す動きの一環とみられる。また、バイデン政権下でも推奨されてきた国内投資の方針が、企業の戦略に影響を与えている可能性がある。
トランプ前大統領の関税政策 製薬業界に与える新たな圧力
今回の発表は、トランプ前大統領が先週、製薬輸入品に対して25%以上の関税を課す可能性を示唆した直後に行われた。関税強化が現実となれば、海外からの医薬品調達コストが大幅に上昇し、国内生産の競争力が向上することになる。イーライリリーは、この動きを見越して国内生産を拡大し、コスト上昇の影響を抑える狙いがあるとみられる。
トランプ前大統領は、イーライリリーのCEOであるデビッド・リックス氏を含む製薬業界の経営者と非公開会談を実施しており、国内生産の拡大を求める圧力を強めている。米国における製薬業界の動向は、政策の影響を受けやすく、関税措置が実施されれば、他の製薬企業も国内回帰を迫られる可能性がある。
これまでも、米国政府は国内製造の拡大を推奨してきたが、今回の関税政策はその動きを加速させる要因となる可能性がある。ただし、関税引き上げが医薬品価格の上昇につながるリスクも指摘されており、消費者や医療機関への影響が懸念される。製薬業界にとっては、政策の変化に対応するための迅速な戦略転換が求められる状況となっている。
米企業の国内投資が相次ぐ 製造回帰の潮流
イーライリリーの投資計画は、米国企業の国内投資拡大の潮流の一環とみられる。今週、アップルも今後4年間で米国内に5,000億ドル以上を投資する計画を発表し、その中にはAIサーバーをテキサスの新工場で生産する計画が含まれている。2026年に開業予定のこの工場では、約20,000人の新規雇用が見込まれる。
また、インテルに関しては、台湾のTSMCが同社のファウンドリ事業の買収を検討しているとの憶測も浮上している。バイスプレジデントのJD・ヴァンス氏は、AIチップの設計と製造を米国内で完結させることが重要だと発言しており、製造業の国内回帰が一層加速する可能性がある。
これらの動きは、単なる企業戦略ではなく、米国の政策の方向性と密接に関係している。バイデン政権は「CHIPS法」などを通じて国内製造の強化を推進しており、トランプ前大統領も関税政策によって同様の方向性を打ち出している。こうした状況の中で、製造業の国内回帰は今後も重要なテーマとなり、米企業の投資動向は注目を集めることになるだろう。
Source:Investopedia