OpenAIが発表した「Deep Research」は、インターネット検索を自動で行い、専門レベルのレポートを作成する新機能である。AIが独自に情報収集・分析し、引用を含む詳細な報告書を生成する仕組みを持つ。
この機能は、有料ユーザー向けに提供され、月額200ドルのプランでは最大120回の利用が可能。科学、金融、医療、エンジニアリングなど多岐にわたる分野で活用が見込まれるが、事実誤認のリスクが指摘されており、慎重な検証が求められる。
特に、AIベンチマークテスト「Humanity’s Last Exam」での高スコアは注目に値する。今後の技術的進化とビジネスへの応用に期待が高まっている。
OpenAIのDeep Researchがもたらす調査の効率化と限界 AIが担うリサーチの新たな役割とDeep Researchの特長

OpenAIが発表した「Deep Research」は、ユーザーに代わって自動でインターネット検索を行い、引用付きの専門レポートを生成する機能である。これは従来のAIによる検索補助とは異なり、独自に情報を選別・分析し、論理的に整理したレポートを提供する点で画期的な技術といえる。
この機能は、OpenAIのo3推論モデルを活用し、ユーザーの質問に対して最適な情報を抽出する。単なるキーワード検索ではなく、質問の背景を理解し、関連する追加情報を取り込みながら、5分から30分かけてレポートを作成する仕様となっている。従来、数時間を要していた専門分野のリサーチが短時間で完了するため、研究者や専門職にとって大幅な時間短縮が期待される。
一方で、この機能は有料のChatGPTユーザーに限定されており、利用回数にも制限がある。特に月額200ドルの「ChatGPT Pro」では120回の利用が可能だが、それ以外のプランでは月10回に制限されている。計算リソースを大量に消費するため、今後より効率的なモデルの開発が求められる。
Deep Researchの活用事例と専門分野での可能性
Deep Researchは、科学、金融、医療、エンジニアリング、政策などの分野で特に有用とされている。OpenAIの事例によれば、化学研究において「ガラス状ポリマーの純ガスと混合ガスの吸着特性」について調査した結果、従来4時間かかっていた作業が大幅に短縮された。また、医療分野では約5時間、言語学では約2時間の調査時間を削減できたと報告されている。
AIベンチマークテスト「Humanity’s Last Exam」では、100以上の専門分野の知識を問う試験で26.6%の正答率を記録し、DeepSeek-R-1の9.4%、GPT-4oの3.3%を大きく上回った。この結果は、Deep Researchが既存の大規模言語モデルと比較しても、高度な推論能力を備えていることを示唆している。
しかし、全ての専門分野において万能というわけではない。特定の領域では、情報の正確性や信頼性が問題視される可能性があり、AIによる自動化が必ずしも適切でないケースも存在する。特に、企業戦略や法律分野など、情報の慎重な解釈が求められる領域では、AIの判断だけに依存することはリスクを伴う。
Deep Researchの課題とAIリサーチの未来
Deep Researchは、インターネット上の情報をもとにレポートを作成するが、OpenAIも指摘しているように「幻覚(hallucination)」のリスクを完全に排除できるわけではない。AIが誤った情報を生成する可能性があるため、ユーザーは結果を無条件に信じるのではなく、適切な検証が求められる。
また、AIによる調査は情報の出典や文脈を正しく理解する能力が問われる。特に、専門家が解釈を要する分野では、AIが単独で完璧なレポートを作成できるとは限らない。さらに、AIが検索した情報の範囲は公開されているデータに限られ、機密情報や独自の研究データを取り扱うことはできない。
今後、AIリサーチの進化によって、より精度の高い調査機能が実装される可能性は高い。しかし、AIが提供する情報を人間が適切に活用し、精査するプロセスは依然として不可欠である。Deep Researchの導入は、リサーチの効率化という観点では大きな進歩だが、その正確性と信頼性を担保するための人間の関与が引き続き重要となるだろう。
Source:Lifehacker