NvidiaはGeForce RTX 5090や5080など50シリーズにおいて、発売直後から多数報告されていたブラックスクリーン問題への対応策として、新たにGame Readyドライバー「572.60」を提供開始した。この最新ドライバーには、ブラックウェル世代のGPUで発生していた画面消失トラブルの修正に加え、DLSS 4対応タイトルの最適化や、29種類のG-Syncディスプレイ追加対応など、多岐にわたる改善が含まれている。

特に、DisplayPort 1.4接続時にDSCを有効化した高リフレッシュレート環境下で発生していた音声不具合や、SteamVR使用時の画面スタッター、CUDAパフォーマンスの予期せぬ低下など、クリエイターやゲーマー双方に影響を及ぼしていた複数の不具合も対象となっている点は注目に値する。

なお、Nvidiaは本ドライバー単体でブラックスクリーン問題を修正可能としつつ、一部ブラックウェルGPU向けにはvBIOSアップデートも提供していることが判明している。ドライバーとvBIOS双方の適用が必要かどうかは個別の事例によるものの、現時点でブラックスクリーン以外のBSODやゲームクラッシュなど、50シリーズに残る安定性問題が完全に解消されるかは未確定であり、今後も注視が必要である。


GeForce RTX 50シリーズのブラックスクリーン問題と最新ドライバー572.60に至る経緯

Nvidiaの最新世代GPU「GeForce RTX 50シリーズ」は、2024年1月に最上位モデルのRTX 5090が登場して以降、安定性の問題が頻発してきた。中でも最も深刻な症状として、画面が突然暗転する「ブラックスクリーン」現象が多くのユーザーから報告され、早急な対策が求められていた。

この事象は、特定のゲームプレイ中や高リフレッシュレート設定時に発生するだけでなく、デスクトップ使用時にも確認されるケースが相次ぎ、エラーコード「5088957」「5100062」「5089089」として記録されることもあった。Nvidiaはこれら問題の根本原因を特定し、2月末に公開した「Game Ready Driver 572.60」において、ブラックウェルGPUの安定性を大幅に向上させる修正を実施した。

さらに本ドライバーには、「Naraka: Bladepoint」のDLSS 4サポートや「Monster Hunter Wilds」対応、29種類の新たなG-Sync認定ディスプレイの追加も盛り込まれており、RTX 50シリーズのゲーマーやクリエイターに対する最適化が加速している。なお、NvidiaはvBIOSアップデートによる追加修正も提供しているが、最新ドライバー単体でもブラックスクリーン問題に対応可能としており、vBIOS適用は必須ではないという立場を示している。

RTX 50シリーズの構造的特性とブラックスクリーン発生の背景に関する考察

GeForce RTX 50シリーズに発生していたブラックスクリーン問題は、単なるドライバーの不具合というよりも、新アーキテクチャ「ブラックウェル」の特性や高性能化に伴う設計上の負荷と密接に関連している可能性がある。特にPCIe 5.0インターフェースによる高速データ転送や、Display Stream Compression(DSC)を活用した240Hz以上の高リフレッシュレート環境など、先進機能が安定性に影響を及ぼしていた点は見逃せない。

また、RTX 5090を含む50シリーズでは、電力供給のピーク時負荷や発熱制御に関する課題も指摘されており、これら複数の要因が複合的に絡み合うことでブラックスクリーン問題が顕在化した可能性もある。Nvidiaは最新ドライバー572.60で根本原因への対策を施したとするが、特定条件下での動作安定性に関しては、依然として検証の余地が残ると言わざるを得ない。

加えて、RTX 40シリーズや30シリーズにも何らかの不具合が生じる可能性が報告されている点も重要である。最新ドライバーによる広範な影響範囲を考慮すると、RTX 50シリーズの問題解消にとどまらず、Nvidiaの次世代ドライバー戦略全体における品質管理体制が改めて問われる局面に入っていると言える。

ブラックスクリーン以外の不具合と今後の安定性に向けた課題

ブラックスクリーン問題は、RTX 50シリーズにおける象徴的な課題として注目を集めたが、同シリーズが抱える安定性の問題はこれにとどまらない。SteamVR使用時に確認されていたカクつき(スタッター)や、VRay 6におけるCUDAパフォーマンス低下、Adobe Substance関連ソフトでの動作不具合など、クリエイティブ用途にも影響を及ぼすトラブルが複数存在していた。

これらの不具合も、最新ドライバー572.60で順次対策が進められているが、Nvidia自身が認める通り、ブラックスクリーン修正が全ての関連トラブル解消に直結するわけではない。特にBSOD(ブルースクリーン)や一部ゲームタイトルの強制終了問題など、ソフトウェアとハードウェアの相互作用に起因する事象は、今後も完全な検証と長期的な安定性確認が求められる。

加えて、vBIOSアップデートの任意適用という方針自体も、ユーザー間の対応格差を生む要因となりかねない。NvidiaがドライバーとvBIOSの役割を明確に整理し、どの組み合わせが最適なのかを分かりやすく提示することが、RTX 50シリーズの信頼回復に向けた重要な鍵を握るものと考えられる。

Source:Tom’s Hardware