世界的コーヒーチェーンであるスターバックスが、2月24日に1,100人の人員削減を発表した。対象は本社や管理部門を中心とするサポートパートナー職であり、数百件の未充足ポジションも採用停止となる。併せて北米リーダーシップチームの体制見直しを進め、VP職以上に週3日の出社義務を課すなど組織運営の効率化を目指す方針である。
2025年度第1四半期決算では売上・利益ともに市場予想を上回り、株価は年初来26%上昇するなど好調を維持する。一方、営業利益率の低下や既存店売上高の4%減少が示すように、個店レベルの課題も浮き彫りとなった。
今回の人員削減と組織改革が、長期的な成長戦略やブランド価値にどう影響を与えるかは不透明である。アナリストは目標株価を現在価格以下に設定しており、株価の先行きには慎重な見方が広がりつつある。
スターバックスが発表した1,100人の人員削減と組織改革の全容

スターバックスは2月24日、サポートパートナー職を中心に1,100人の人員削減を実施する方針を明らかにした。さらに、現在未充足となっている「数百件」に及ぶ空きポジションについても新規採用を停止し、人員構成の抜本的な見直しに着手する。今回の施策は、現行のチーム構造を簡素化し、業務効率の向上と意思決定の迅速化を図る狙いがあるとされる。
加えて、北米のリーダーシップ層を対象とした勤務体制の見直しも同時に発表された。副社長(VP)職以上の管理職には、シアトルおよびトロントのオフィスへの週3日以上の出社義務を課し、対面での連携強化と迅速な経営判断を促す意図が読み取れる。
対象となる1,100人の社員には、2月25日正午までに解雇通知が行われる予定であり、今週末までには具体的な業務引継ぎや報告体制の詳細も公表される見通しである。こうした本社・管理部門のスリム化により、スターバックスが目指す柔軟かつ強固な事業基盤構築への布石が打たれた形となる。
業績好調と人員削減の対比から見えるスターバックスの戦略意図
スターバックスは2025年度第1四半期決算で、純利益7億8080万ドル、1株当たり利益0.69ドルを計上し、いずれも市場予想を上回る好成績を残した。売上高94億ドルも前年同期比では横ばいであったものの、アナリスト予想を若干上回り、株価は1月29日の決算発表後に8%上昇。年初来では26%の上昇率を記録し、2月27日には52週高値115.70ドルを付けるなど、投資家の信頼を維持している。
しかし、営業利益率は前年同期の15.8%から11.9%へと大幅に低下し、既存店売上高も4%減少するなど、個店レベルの収益力には陰りが見える。こうした状況下での大規模な人員削減と組織改革は、短期的なコスト削減に留まらず、収益構造そのものを転換するための布石と考えられる。
現在、スターバックスは経営トップの交代期にあり、長期的な成長戦略やガイダンスを明示していない。株価は高値圏にあるものの、アナリストの目標株価は106.71ドルと現状を下回る水準に設定されており、先行きに対する慎重な見方が一定層に根強い可能性がある。
本社主導型から現場重視へと舵を切るスターバックスの今後の展望
スターバックスが今回打ち出したサポートパートナー職1,100人削減は、店舗運営を支える本社・管理部門の縮小を意味する。この施策は、全体最適を図る本社主導型から、個店や地域の実情に即した現場重視型への転換を意図しているとも読み取れる。
同時に、VP職以上への出社義務化や組織簡素化を通じ、経営陣の一体感を高めることで、企業文化の強化や意思決定スピードの向上を目指す構えである。こうした改革は、スターバックスがグローバル市場での成長と変化する消費動向への柔軟な対応を両立させるための下地作りとも言える。
ただし、既存店売上の4%減少や営業利益率低下が示すように、足元の収益力には課題が残る。新規出店による店舗数拡大は年平均6.1%と順調に進んでいるものの、収益性改善にはオペレーション効率化や商品・サービス戦略の再構築が不可欠である。
スターバックスが目指す次世代型の事業モデルが、ブランド価値や顧客体験を維持しながら収益力向上に結びつくかどうかは、今後の実行力と外部環境の変化に左右されることになる。
Source: Barchart.com