バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の株価が2024年通年の力強い業績発表後、3日間で3%超上昇した。エヌビディアの急騰と比較すれば控えめな動きであるが、ウォーレン・バフェット率いる巨大持株会社としては異例とも言える。特に注目されるのが、2024年末時点で3,342億ドルに達した現金保有額と、バリュエーションを理由にM&Aを見送る慎重姿勢である。
加えて、27%増の営業利益を牽引したのはGEICOを中心とする保険事業であり、トッド・コームズによる改革成果が顕著に表れた。保険引受事業の営業利益は90億2,000万ドルに達し、全体の19%を占めるまでに成長した。バフェットが年次書簡で強調した通り、GEICOはプログレッシブとの差を縮めつつあり、収益源としての存在感を高めている。
こうした業績好調と対照的に、昨日のオプション市場では7日以上の満期を持つバークシャー株のプットオプションに異例の活発な取引が発生。特に2026年1月満期の500ドルプット売りと、2025年12月満期の440ドルプット買いを組み合わせたブル・プット・スプレッドが注目されている。最大利益16.35ドルに対し、最大損失は43.65ドルというリスク構造は、バークシャーの株価安定への市場の一定の信頼感も読み取れる。
バークシャー・ハサウェイが保険事業で示した収益構造の変化とGEICO再生の軌跡

バークシャー・ハサウェイが2024年に記録した営業利益は474億4,000万ドルに達し、前年から27%増加した。中でも保険引受事業が大幅に利益を押し上げ、90億2,000万ドルを計上。営業利益全体に占める割合は19%に拡大し、2023年の14.5%を大きく上回った。この成長を牽引したのが、トッド・コームズ主導によるGEICOの構造改革である。
コームズはこの5年間、引受プロセスの効率化やデジタル基盤の強化を推進。バフェットも年次書簡でGEICOを「長年の宝石」と称しながらも、徹底した刷新が不可欠だったと振り返っている。2024年の目覚ましい業績は、競合のプログレッシブ(PGR)に対抗し得る体制構築が着実に進んでいることを示すものと言える。
バフェットが事業戦略の柱として保険事業を重視する姿勢は変わらず、2025年以降もGEICOの更なる収益力向上を目指すとみられる。一方で、保険事業以外の189事業のうち53%が前年割れした事実にも目を向ける必要がある。全体の利益構造が保険依存を強める中、GEICOを含む保険セグメントがバークシャー全体の成長エンジンとしての役割を担うことは、今後の戦略に一定の制約を与える要因ともなり得る。
バフェットの現金保有戦略と2025年の投資行動を見通す鍵
2024年末時点でバークシャー・ハサウェイの現金保有額は3,342億ドルに達し、3カ月前の3,252億ドルから着実に積み増された。バフェットはこの現金ポジションについて、割高感のある市場環境と適切な投資機会の不足を理由に挙げたが、その背景には米国および世界経済の不透明感に対する警戒感も見え隠れする。
株主向け書簡ではM&Aに関する具体的な言及を避けており、巨額の手元資金を維持したまま慎重姿勢を貫く構えがうかがえる。こうした現金戦略は、過去の危機局面での機動的な資本投入を可能とする一方、短期的な利益機会を見逃すとの批判も根強い。辛抱強い長期保有者にとっては安心材料となるが、成長加速を期待する向きには歯がゆい展開となっている。
2025年以降、現金残高が高水準を維持する可能性が高く、短期米国債を中心とする投資収益は引き続き重要な収益源となる見通しである。しかし、バークシャーの本質は優良事業の買収と長期的な価値創造にあり、現金戦略の背景には今後の大型案件への備えが含まれる可能性もある。バフェットの投資行動は、依然として世界経済の動向を占う上で重要な指標として注目される。
異例のオプション活況が示唆する投資家心理とリスク許容度
2025年2月27日に確認されたバークシャー・ハサウェイ株の異例なオプション取引は、投資家心理を映し出すシグナルとして注目に値する。特に7日以上の満期を持つ2つのプットオプションにおいて、出来高/未決済比率(Vol/OI比率)が1.24以上を記録。短期的な価格調整を織り込む動きが顕在化した。
具体的には、2026年1月16日満期の500ドルプットを売却し、2025年12月19日満期の440ドルプットを購入するブル・プット・スプレッドが構築され、最大利益16.35ドルに対し最大損失43.65ドルというリスク・リワード比率が形成された。バークシャー株の底堅さに一定の信頼を置きながらも、短期調整リスクへの備えとして組成された可能性がある。
こうしたオプション戦略の活発化は、バークシャー株を長期保有する投資家層にとって必ずしもリスクシグナルと捉える必要はない。一方で、現金保有増やM&A停滞といった経営判断への警戒感が一部で燻っていることも否定できない。オプション市場の動向は、バークシャーの事業環境や投資家心理を読み解く補助線となり得る。
Source: Barchart