米半導体大手Nvidiaは2025会計年度第4四半期において、売上高393億ドルを記録し、前年同期比78%増という驚異的な成長を示した。特にデータセンター事業は356億ドルに達し、前年同期比93%増と急伸。AI需要の拡大を背景に、同社の「Hopper」プラットフォームと次世代「Blackwell」アーキテクチャが市場で圧倒的な支持を得ている。

1月には中国DeepSeekによる低コストLLMモデル「R1」が発表され、高性能GPU需要減への懸念も浮上したが、Nvidiaは次世代チップへの旺盛な需要とAIインフラ整備の加速により、そうした不安を打ち消した形だ。

粗利益率はBlackwell量産の影響で低下傾向にあるものの、AI革命を支える中核企業としての地位は揺るがず、ウォール街アナリストも依然「強い買い」を維持。AIエージェントやロボティクス分野など新市場への広がりも、長期的な成長要因として期待されている。


Nvidiaの第4四半期決算に見るAI市場の現在地とデータセンター事業の圧倒的成長

Nvidiaが2025会計年度第4四半期で示した売上高393億ドル、前年同期比78%増という業績は、AI関連需要の爆発的な拡大を如実に示す結果となった。中でもデータセンター事業は356億ドルに達し、前四半期比でも16%増と高水準を維持。AI主導のクラウド投資や企業の生成AI活用が急速に進む中、Nvidiaはその中核的存在として他の追随を許さない存在感を示している。

データセンター売上の伸びを支えるのが「Hopper」プラットフォームと、次世代「Blackwell」アーキテクチャである。Blackwellは第4四半期だけで110億ドルの売上を記録し、同社史上最速の立ち上がりを見せた。AIモデルの高度化と、企業や研究機関が競うようにインフラ投資を加速させる状況が、需要を下支えしている。

特にAI専用ハードウェアの需要は、単なる性能向上にとどまらず、消費電力や演算効率など複合的な要素が評価軸となる。Nvidiaはその全てを網羅する製品群を構築しており、AI時代に最も適合したサプライヤーであると言える。AI需要拡大が業績をけん引する構図は変わらず、データセンター領域における同社の優位性は今後も揺るがないものと見られる。

中国DeepSeekの低コストLLMとAI市場構造変化がNvidiaに与える中長期的影響

2024年1月、中国のスタートアップDeepSeekが発表した「R1モデル」は、低コストかつ大規模な言語モデルを構築可能とする点で業界内に衝撃を与えた。従来の高性能GPUへの依存度を下げる技術的可能性が示されたことで、Nvidiaの長期的な需要に不安を抱く声も広がっていた。AIインフラ投資の最前線に立つNvidiaにとって、こうした新興勢力の台頭は決して無視できない要素である。

一方で、Nvidiaの最新決算ではDeepSeek発表以降もデータセンター事業が過去最高売上を記録し、高性能GPUへの需要減退は見られていない。生成AIの高度化には引き続き最先端の計算リソースが不可欠であり、大規模言語モデル以外にもAIエージェントや分野特化型AIなど、新たなユースケースが次々と生まれている。こうした多様化するニーズへの対応力が、Nvidiaの成長を下支えしている。

また、AI競争の加速は国や地域ごとに異なるニーズを生み、特定用途に最適化されたチップへの需要も高まる可能性がある。Nvidiaが持つプラットフォーム戦略と、ソフトウェアからハードウェアまでを一貫して提供する体制は、競争環境が変化しても依然として競争優位性を保つ要因となり得る。技術革新と競合の台頭は常にリスクを伴うが、現状ではNvidiaの地位を揺るがす決定的な要素にはなっていない。

Blackwell量産による利益率低下とAI革命を見据えたNvidiaの投資判断

2025会計年度第4四半期におけるNvidiaの調整後粗利益率は73.5%と、前年同期および前四半期から低下した。要因は次世代アーキテクチャ「Blackwell」の本格的な量産に伴うコスト増にある。同社史上最速で展開されたBlackwellは、急速な需要拡大に対応するため、初期の製造効率より供給確保を優先した結果、短期的には利益率を押し下げる構図となっている。

しかし、AI革命の進行により、生成AIのみならず、ロボティクスや次世代AIアプリケーションへの対応が求められる中、Blackwellは単なるGPUではなく、新時代のインフラ基盤として位置付けられる。企業や国家がAI戦略を加速させる中、需要確保を最優先とする判断は、Nvidiaの長期戦略と整合している。

粗利益率への一時的な圧力は不可避とみられるが、供給体制の安定化と生産効率向上が進めば、会計年度後半には利益率の回復が見込まれる。高性能AIチップ市場におけるNvidiaの独占的地位が揺るがない限り、短期的なコスト増は未来の圧倒的な収益基盤に直結する投資と捉えられる。AI革命の中心に位置する企業としての責務と成長戦略が、現在の投資判断にも反映されていると言える。

Source: Barchart