中国のGMKtecは、AMDの最新プロセッサーファミリー「Strix Halo」を搭載したミニPC「EVO-X2」を発表した。Ryzen AI Max+ 395および395 Proの2モデル構成で、最大128GBのLPDDR5X RAMとPCIe 4.0ストレージに対応する高性能仕様となっている。

EVO-X2に搭載されるRadeon 8060Sは、40基のコンピュートユニットを備えたRDNA 3.5アーキテクチャ採用GPUで、同社既存モデルEVO-X1を大幅に上回る性能を備える見込みである。価格や発売時期は未定だが、GMKtecの次世代フラッグシップ機として、ASUSやHPに続くStrix Halo搭載ミニPC市場への参入を強く印象付ける存在となりそうだ。


AMD Strix Haloを採用するGMKtec EVO-X2の仕様と性能面での進化

GMKtecが発表したEVO-X2は、AMDの次世代APU「Ryzen AI Max+ 395」および「Ryzen AI Max+ 395 Pro」を搭載し、ミニPC市場に新たな性能基準を提示するモデルとして注目される。両モデルともに最大128GBのLPDDR5Xメモリに対応し、データ転送速度は8,000MT/sに達する。加えて、ストレージにはPCIe 4.0規格を採用することで、高速データ処理への対応力を強化している。

特筆すべきは、統合GPUとして「Radeon 8060S」を搭載する点である。Radeon 8060Sは、RDNA 3.5アーキテクチャをベースに40基のコンピュートユニットを備え、これまでのミニPC向け統合GPUと比較して飛躍的な処理性能を実現する可能性がある。特に3DグラフィックスやAI処理能力において、EVO-X1に搭載されるRyzen AI 9 HX 370との性能差は大きく、用途拡大への期待が高まる。

GMKtecはこれまで「K10」「K11」「EVO-X1」と矢継ぎ早に新モデルを投入しており、EVO-X2はその集大成とも言える製品となる。価格や発売時期は未発表ながら、Strix Haloの高性能をフルに引き出す設計思想が随所に反映されると考えられる。特にLPDDR5XやPCIe 4.0といった先進規格の採用は、ノートPCやゲーミング市場でも求められる要素であり、ミニPCという枠を超えた競争力の確保につながる可能性を秘める。

中国市場からの発表に込められたGMKtecの戦略とStrix Halo採用の背景

GMKtecがEVO-X2を中国市場限定で発表した背景には、同社の市場戦略とAMD Strix Haloへの先行対応という2つの狙いが読み取れる。中国国内での先行発表は、近年成長著しい国内ミニPC市場に対する強いアピールであり、自社の技術力と最先端プラットフォームへの適応力を示す狙いが含まれる可能性がある。また、Strix Haloを採用する他メーカーとしてはASUSやFramework、HPが名を連ねており、GMKtecがこの競争にいち早く参入した点は特筆に値する。

AMDがStrix HaloファミリーにAIアクセラレーションや統合型GPUの大幅な強化を盛り込んだ背景には、AIアプリケーションの急速な普及と、それに伴うエッジコンピューティング性能の重要性が高まっている事情がある。GMKtecがEVO-X2でRyzen AI Max+ 395シリーズを選択したことは、単なる性能追求に留まらず、今後のミニPC市場が求めるAI対応や高負荷演算ニーズに応える布石とも捉えられる。

一方で、中国国内発表に留めた事実は、供給体制や価格戦略の調整段階である可能性を示唆する。グローバル展開を視野に入れつつも、まずは自国市場での反応やフィードバックを踏まえた製品調整を行う狙いが透けて見える。AMDの新世代APUとGMKtec独自のミニPC設計力が交差するEVO-X2が、今後どの市場でどのような評価を得るかは、引き続き注目に値する。

EVO-X2が示唆するミニPC市場の転換点とAMD新アーキテクチャが果たす役割

GMKtecが発表したEVO-X2は、単なる新型ミニPCに留まらず、ミニPC市場全体の進化方向を象徴する存在となる可能性がある。従来、ミニPCは省スペース設計による拡張性の制限から、グラフィック性能やメモリ容量に課題を抱えてきたが、EVO-X2はこの常識を覆す仕様を備えている。最大128GBのLPDDR5XメモリとPCIe 4.0ストレージ、RDNA 3.5アーキテクチャ採用のRadeon 8060S統合GPUという組み合わせは、これまでハイエンドノートPCやゲーミングPCで求められてきた水準に近づいている。

Strix Haloアーキテクチャがもたらす恩恵は、単なるCPU性能向上にとどまらない。AIアクセラレーション機能の強化や、統合型GPUにおけるグラフィックス処理能力の飛躍的向上など、次世代コンピューティングに必要な要素が一体化している点に注目する必要がある。特にAIワークロードへの対応力強化は、生成AI活用やリアルタイム推論処理が求められる用途でミニPCの役割を大きく変える可能性がある。

ミニPC市場はこれまで「コンパクトかつリーズナブルなサブPC」といった位置付けが強かったが、EVO-X2が示す技術的到達点は、コンテンツ制作やAIモデル構築といった高負荷用途にも踏み込む可能性を示唆している。AMDの新世代プラットフォーム採用が、ミニPCの用途拡大と市場価値向上にどのような影響を与えるかは、今後の製品展開次第で大きく左右されることになる。

Source:Notebookcheck