AMDが正式発表したRadeon RX 9070シリーズが注目を集める中、未発表のRadeon RX 9060 XTに対する関心が高まっている。過去のリークやNavi 44アーキテクチャを踏まえると、RX 9060 XTは349ドル以下の価格帯に収まる可能性が指摘されており、ミッドレンジからエントリー市場での存在感を強める起点になると見られている。
AMDはRX 9070 XTにおいて、Nvidia RTX 5070 Tiをネイティブ4Kゲーミング性能で上回ると主張しているが、その信憑性や検証方法には疑問も残る。とはいえ、RTX 5060の登場が遅れる中、低価格帯に新製品を投入するAMDの戦略は、価格重視層や自作PCユーザーにとって非常に大きな意味を持つ。
Intel Arc B580が低価格市場で健闘する一方、AMDは新世代Radeonの価格設定と性能バランスによって、ミッドレンジ以下の層を確実に押さえにかかっている。NvidiaがAI分野へ傾斜する現状を踏まえると、AMDが築く価格戦略がGPU市場全体に及ぼす影響は決して小さくない。
AMD Radeon RX 9060 XTが狙う価格帯と性能 Navi 44採用で描く市場構造の変化

AMDが2025年第2四半期に投入を予定しているRadeon RX 9060 XTは、同社の次世代GPUシリーズ「RX 9000」ラインアップの中でも特に戦略的な位置付けにあると見られている。既に正式発表されたRadeon RX 9070およびRX 9070 XTは、Navi 48アーキテクチャを採用し、ネイティブ4Kゲーミングにも対応するミッドレンジモデルとして市場投入が進められているが、その下位モデルにあたるRX 9060 XTにはNavi 44が採用される可能性が高いとされる。
Navi 44は昨年12月にリークされた情報によれば、エントリーからミッドレンジの境界線に位置するGPUアーキテクチャとして設計されており、価格帯は179ドルから349ドルに収まることが想定されている。RX 9060 XTが349ドル以下という価格設定を実現すれば、既存のRadeon RX 7600 XTやNvidiaのRTX 4060を強く意識したポジションに置かれることになる。
AMDは昨年以降、ミッドレンジ以下の価格帯に注力する方針を示しており、プレミアム市場を重視するNvidiaとは明確に戦略の差が生じている。ミッドレンジに近い価格で高い性能を提示することで、価格重視層やコストパフォーマンスを求める層に対して強い訴求力を持つ製品構成が形成される可能性がある。
Radeon RX 9070シリーズが示した競争力とRX 9060 XTが果たす役割
Radeon RX 9070 XTは、Nvidia RTX 5070 Tiに対してネイティブ4Kゲーミング性能で優位に立つとAMD自身が強調している。しかし、その性能比較においては、AMDがオーバークロック済みモデルを用いた点や、RTX 5070 Ti側の検証環境に関する不透明さなど、検証手法への疑問は少なくない。
加えて、Nvidiaが推進するDLSS 4やMulti Frame GenerationといったAI技術の効果は含まれておらず、純粋なフレームレート比較だけでは実際のゲーム体験を測りきれない可能性も残されている。RX 9070シリーズの強みとしては、549ドルという価格設定が挙げられ、RTX 5070 Tiより150ドル安い価格で、ミッドレンジ層を確実に狙い撃ちにする形となっている。
その上で、RX 9060 XTがさらに下の価格帯を担う存在として登場すれば、AMDがミッドレンジからエントリー市場までを幅広くカバーし、低価格志向の層に対して競争力を強化する形が見えてくる。特に、IntelのArc B580が249.99ドルという価格で5つ星評価を得ている状況を踏まえると、AMDにとってもRX 9060 XTの価格設定は極めて重要な意味を持つ。
ミッドレンジ市場の主導権争いとNvidia、Intelとの今後の駆け引き
現在のGPU市場は、NvidiaがAI技術やハイエンド分野への傾斜を強める一方で、Intelが低価格GPU市場に積極参入しているという三極構造が形成されつつある。AMDはこうした環境下で、RX 9000シリーズを通じて、ミッドレンジからエントリー市場を自らの主戦場とする構えを見せている。
特に、デスクトップ版のRTX 5060や5050の動向が依然不透明であることから、Radeon RX 9060 XTの登場は、低価格帯GPUの選択肢をAMD側に一極集中させる可能性もある。AMDは過去にもRadeon RX 570など、179ドル前後で強力な製品を投入し、一定の評価を得てきた実績がある。
今回のRX 9000シリーズにおいても、RX 9060 XTが349ドル以下で登場すれば、エントリー層からミッドレンジ層に至る幅広い価格帯をAMDが掌握する展開も視野に入る。NvidiaがAI技術に重点を置き、高価格帯製品中心の展開に移行する中で、AMDが価格戦略を軸に存在感を高める構図が今後の市場を大きく左右することになるだろう。
Source:TechRadar