AMDは次世代GPU「RX 9070シリーズ」において、独自のAI向けソフトウェア基盤であるROCmへの対応を正式に表明した。RDNA 4アーキテクチャを採用するこのシリーズは、ゲーミング市場を主軸に展開されるものの、AI処理用途でも活用可能な仕様を備える。ROCmサポートについては発売当初は提供されない可能性が高いが、AMDのAIソフトウェア担当副社長Anush Elangovan氏が稼働サンプルを示すなど、対応は確実視されている。

特にNVIDIAのCUDAが独占するAI開発領域に対抗する戦略の一環として、ROCm対応はAMDにとって重要な布石と位置づけられる。加えて、エッジAI需要が拡大する中、ハイエンドGPUをAI処理に活用するユーザー層への訴求力も高める狙いが透ける。Phoronixが報じたQ&Aセッションでは一時ROCm対応への明言を避ける姿勢も見られたが、公式発表によって一定の方向性が示されたと言える。

発売直後の完全対応時期や具体的な実装内容には依然不透明な部分が残るものの、ゲーミング性能とコストパフォーマンスに加え、将来的なAI対応力もRX 9070シリーズの競争力を左右する重要な要素となる。


AMD RX 9070シリーズが目指すROCm対応とその背景にある戦略的意図

AMDはRDNA 4アーキテクチャを採用したRX 9070シリーズについて、同社のAI向けオープンソースプラットフォーム「ROCm」への対応を進めている。ROCmはAIやHPC(高性能計算)向けに開発されてきたが、コンシューマー向けGPUでの本格的な対応はこれまで限定的であった。しかし、2024年に発表されたRDNA 4世代のRX 9070シリーズにおいて、AMDのAIソフトウェア担当副社長Anush Elangovan氏がROCm対応を公式に示唆し、既に稼働するサンプルも公開された。

この対応は、NVIDIAのCUDAが市場を独占する中で、ROCm普及の突破口を探るAMDの重要な布石である。特に、エッジAIやローカルAI処理への需要が高まる中、コンシューマー向けGPUにROCmを搭載することで、ゲーミング以外の用途にも活用できる環境整備を進める狙いがある。こうした動きは、AI関連分野での競争力強化と収益機会の拡大に直結するものと見られる。

もっとも、ROCm対応は発売当初から完全に実装されるわけではなく、時期や機能範囲については依然として明確にされていない。Phoronixが報じたQ&Aセッションでは、AMD側がRDNA 4のROCm対応に対し明言を避ける場面もあった。こうした慎重な姿勢からも、ROCm対応が単なる技術的判断ではなく、AI市場を巡るNVIDIAとの戦略的駆け引きの一環であることが読み取れる。

RDNA 4とROCm対応がもたらすAIワークロードへの新たな可能性

RX 9070シリーズにおけるROCm対応は、ゲーミング性能のみならず、AIワークロードへの適用範囲を広げる可能性を秘めている。特に、エッジAIやローカルAI処理では、コスト面や電力効率を重視するユーザー層が増加しており、NVIDIAのCUDA環境に依存しないオープンプラットフォームへの期待は根強い。ROCm対応が実現すれば、RX 9070シリーズはゲーミング用途に加えて、こうしたAI需要を取り込む足がかりとなる。

ROCm自体はAMDが長年にわたりHPC分野で培ってきたソフトウェアスタックであり、その成熟度は着実に向上している。ただし、コンシューマー向けGPUでの最適化や、開発者コミュニティの広がりという点では、CUDAとの差は依然として大きい。RX 9070シリーズにROCmを載せる意義は、単に対応製品を増やすだけでなく、AI開発者層を広く取り込む環境づくりにつなげることにある。

一方で、AI用途に適したVRAM容量やメモリ帯域といったハードウェア側の制約が、実際のAIワークロードでどこまで影響を与えるかは不透明である。特に、NVIDIAのハイエンドモデルと比較すると、AI向け最適化では依然差があるとの見方も根強い。ROCm対応が、AMDのAI戦略全体でどの程度の比重を占めるのかは、今後の動向次第と言える。

AMDのROCm対応表明が示すAI市場への攻勢と今後の展望

AMDがRX 9070シリーズにおいてROCm対応を正式に示したことは、同社がAI市場への攻勢を強める姿勢を象徴している。NVIDIAがCUDAを武器にAI市場で圧倒的シェアを握る中、AMDはオープンプラットフォームであるROCmの強化を軸に対抗策を打ち出している。特に、クラウドからエッジまで広がるAI需要に対し、コンシューマー向けGPUでも対応可能な環境を整備することは、長期的な競争力強化に直結する。

AMDがROCmへの対応を発表した背景には、単なる技術的進化だけでなく、AI市場を巡る収益構造の変化も関係している。NVIDIAのAI向け事業が同社全体の利益を大きく押し上げる中、AMDとしても同分野でのプレゼンス向上が急務となっている。ROCm対応が拡大すれば、AI開発者や研究機関がAMDプラットフォームを選択する機会が増え、ソフトウェアエコシステムの強化につながる可能性がある。

一方、ROCm対応の具体的な範囲やタイミングについては、依然不透明な部分が多い。初期対応範囲や、既存ソフトウェア資産との互換性、開発者サポート体制など、実際の普及を左右する要素は多岐にわたる。RX 9070シリーズのゲーミング性能とAI対応力をどう両立させるか、そのバランスがAMDの今後の戦略における重要なポイントとなる。


Source:Wccftech