Dell Technologiesは2月27日、年間配当を1株あたり2.10ドルへ18%引き上げるとともに、100億ドル規模の追加自社株買いプログラムを公表した。インフラストラクチャ・ソリューションズ・グループ(ISG)がAIサーバー需要を取り込み、売上が堅調に推移する一方、フリーキャッシュフロー(FCF)は通期で45%減少しており、財務体質の変化が浮き彫りとなった。
配当利回りを基にした理論株価は現在価格を13%から55%上回る水準と試算されており、過去の平均利回りと照らしても株価は依然割安と考えられる状況にある。また、複数の調査機関によるアナリスト目標株価も現在価格を大幅に上回っており、投資家の期待感は根強い。
FCF減少が一時的要因か構造的課題か見極めが求められる中、積極的な株主還元策とAI関連需要への高い期待が相まって、同社の株価評価には依然として上昇余地が残る可能性がある。
Dell Technologiesが18%の配当増と100億ドル自社株買いを決定 株主還元強化の背景と業績動向

Dell Technologiesは2024年2月27日、年間配当を1株あたり2.10ドルへと18%引き上げると同時に、新たに100億ドル規模の自社株買いプログラムを発表した。株主への利益還元を強化するこの決定は、AI需要を追い風に成長が続くインフラストラクチャ・ソリューションズ・グループ(ISG)の好調な事業展開に加え、過去5年間の平均調整後フリーキャッシュフロー(FCF)が年間45億ドルに達する強固な財務基盤を背景としている。
2024年1月期の第4四半期において、Dell Technologies全体の売上高は前年比7.2%増、通期では8%増と堅調に推移した。特にAIサーバー需要を捉えたISG部門は四半期売上が22%増、通期でも29%増を記録し、成長の柱としての存在感を高めている。一方で、同期間の調整後FCFは前年同期比53%減少、通期でも45%の大幅減となり、成長とキャッシュ創出のバランスには注意を要する状況となった。
Dell Technologiesの取締役会は、こうした状況下でも配当増額と自社株買い強化を決定しており、将来的なキャッシュ創出力の回復に自信を持つ姿勢がうかがえる。AI関連需要やデータセンター向け製品が今後の成長を下支えすると見込まれるが、キャッシュフロー減少が一過性か構造的課題かを慎重に見極める必要があるだろう。
配当利回りと株価評価の関係 過去平均利回りとの乖離が示唆する割安感
Dell Technologiesが発表した新たな年間配当2.10ドルを基に、現在の株価102.76ドルに対する配当利回りは2.04%となる。この水準は、2022年の配当開始以来の平均利回り1.94%をわずかに上回るものの、過去4年間の平均利回り1.33%と比較すると依然として高水準にある。配当利回りと株価の逆相関関係を踏まえれば、現行株価が過去の評価水準と比べて割安に放置されている可能性が浮かび上がる。
仮に過去4年平均利回り1.33%を前提とすれば、理論的な株価水準は157.89ドルとなり、現在価格に対して55.6%の上昇余地がある計算になる。一方、2022年以降の平均利回り1.94%を基準にした場合でも株価は108.25ドルとなり、現行価格との乖離は限定的ながら、過去水準から見れば依然として割安感は残る。
Dell Technologiesは過去1年間で約25億8800万ドル規模の自社株買いを実施し、さらに今回の100億ドル追加枠を踏まえれば、今後の発行済株式数の大幅減少と1株当たり利益(EPS)の向上が見込まれる。結果として配当負担の軽減効果も期待されるため、利回り水準を手掛かりにした株価評価は、単年度の業績動向に左右されにくい傾向が強まる可能性もある。
アナリスト目標株価に見る市場評価とDell株への期待
Dell Technologiesに対する市場評価も、現行株価が割安である可能性を裏付ける要素のひとつである。Barchartの調査によると、アナリスト24名の平均目標株価は142.27ドルとなり、現在価格から38.4%の上昇余地が示されている。さらに、AnaChart.comが公表した直近レポートでは、22名のアナリストによる平均目標株価は125.75ドルとなっており、16.6%の上昇余地があるとの見方が示された。
こうした目標株価の幅は、個別アナリストの評価スタンスや前提条件の違いを反映したものと考えられるが、いずれの見解も現行株価を上回る水準を示しており、Dell株の成長期待が強いことを物語る。特に、AIサーバー需要を取り込んだISG部門の成長性や、潤沢なFCFを背景とした安定的な配当余力、自社株買いによる株主還元強化が評価材料として重視されている。
ただし、FCF減少の背景にあるコスト増や設備投資負担の増加、グローバルサプライチェーンの不透明感など、株価上昇の障害となるリスク要因も存在している。Dell Technologiesは今後、AI需要に対応した成長投資と、株主還元の持続的な両立という難しい舵取りを迫られる局面にある。
Source:Barchart.com