ドナルド・トランプ大統領は、自身の大統領令に基づき創設される「暗号資産戦略準備金」に関する具体的な方針をSNS上で公表した。ビットコインとイーサを準備金の中核に据える方針を示し、XRP、ソラナ(SOL)、カルダノ(ADA)も保有対象に含める方針である。

この準備金構想は昨年の暗号資産関連会議でトランプ自身が示唆していたが、具体的な通貨名が明かされたのは今回が初めてとなる。SECの規制撤回や複数の訴訟取り下げとも連動した動きとみられ、政府として暗号資産を戦略資産に位置付ける姿勢が鮮明となった。

一方、名指しされたXRPは過去に未登録証券問題でSECから提訴されるなど、依然として法的リスクを抱えている。暗号資産を国家戦略に組み込む意図の背景には、ドル基軸体制や金融覇権を補完・強化する狙いも考えられるが、その実効性やリスク管理体制には不透明な部分も残る。



暗号資産戦略準備金に名指しされた5銘柄 トランプ政権の資産選定と規制転換の背景

ドナルド・トランプ大統領が自身の大統領令を通じて設立する「暗号資産戦略準備金」には、ビットコインやイーサ(Ether)を中核としつつ、XRP、ソラナ(SOL)、カルダノ(ADA)という計5銘柄が正式に名指しされた。これらはいずれも時価総額上位の銘柄であり、グローバルな流通量や取引高において一定の地位を占める資産である。

トランプ政権はこれら銘柄を単なる資産保有の対象にとどめず、国家戦略としての役割を与える意向を明確にした。1月の大統領令に基づき、大統領作業部会は暗号資産を準備金として整備する具体策を検討しており、今回の銘柄指定はその一環にあたる。

こうした戦略転換の背景には、米国証券取引委員会(SEC)がトランプ政権下で暗号資産に対する厳格な規制方針を大幅に転換し、複数の調査や訴訟を取り下げる動きも影響を与えていると考えられる。特にXRPに関する未登録証券問題は現在も法廷で争われており、こうした状況下での名指し選定には、トランプ政権の明確な意図が読み取れる。

国家準備資産への暗号資産組み入れが示す金融政策の新たな可能性

暗号資産を国家戦略準備金に組み入れるというトランプ政権の方針は、伝統的な外貨準備や金準備に代わる新たな資産保有モデルを模索する姿勢の表れといえる。特にビットコインやイーサのように、国際的な流動性が高く、分散管理が可能な資産は、従来の中央集権型金融システムへの依存を相対的に低下させる選択肢となり得る。

一方、ビットコインやイーサの価格変動率は依然として高く、為替安定策や国際決済手段としての実用性については確立途上の部分が多い。米国がこれら資産を準備金に組み込むことで、米ドル基軸通貨体制の強化につながるか、あるいは暗号資産独自の市場特性が財政運営上のリスクを増幅させるかは、現時点では見通しに幅がある。

加えて、リップル(XRP)に関するSECとの法的係争は継続中であり、米国政府自身が法的リスクを抱えた資産を国家戦略の中核に据えることに対する市場の見方も分かれる可能性がある。暗号資産を国家資産に組み入れる動きは、米国の金融政策全体に新たな選択肢を加えるものの、その実効性や安定性には引き続き慎重な検討が求められる。

SECによる暗号資産規制撤回とトランプ政権の政策連動に見る政権意図

トランプ政権は、政権発足後から米国証券取引委員会(SEC)による暗号資産への規制強化方針を転換させ、複数の調査や訴訟を相次いで取り下げている。これまで慎重な姿勢を続けてきたSECの方針転換は、トランプ大統領が推し進める暗号資産戦略準備金構想と軌を一にするものである。

SECは2020年にリップル(XRP)に対して未登録証券問題で提訴し、リップル側が機関投資家向け販売時に証券法違反にあたるとする判決を下している。しかし、その後の控訴審においても係争は続き、暗号資産全体に対する法的枠組みはなお不透明な状況にある。

こうした中、SECの規制撤回と訴訟取り下げは、単なる政策転換にとどまらず、トランプ政権が暗号資産を戦略的に保有し、米国の金融覇権維持に活用する意向を強く反映したものと見る余地がある。政府が主導する形で暗号資産市場への積極関与を進めることで、米国主導の国際金融秩序にどのような変化をもたらすかが今後の焦点となる。


Source:The Verge