ドナルド・トランプ大統領が週末、自身のSNS「Truth Social」を通じて発表した米国の戦略的ビットコイン(BTC)準備金構想が、米暗号資産市場を中心に波紋を広げている。トランプ政権の初期政策の一環として打ち出されたが、Polymarketに参加する投資家たちは、大統領就任後100日以内に準備金が実際に創設される可能性を23%と低く見積もるなど、実現性には強い懐疑的な見方が示されている。

特に注目されるのは、XRPとSOLに加えBTCやETHも準備金対象に含まれると判明した点であり、政策発表後にこれら主要銘柄の価格が急騰した事実である。一方、100日以内の創設に賭ける「Yes」ポジションを取ったトレーダーの中には、既に7万3000ドル超の損失を被る者も現れた。政策の具体化には、単なる発表ではなく、米国政府による自発的なビットコイン保有が求められるため、今後の動向次第では市場心理に大きな影響を与える可能性がある。

市場が懐疑的な姿勢を崩さない背景には、トランプ政権がビットコインを戦略資産として本格的に位置付けるまでのプロセスに不透明感が残ること、さらにこれまでの米政府のデジタル資産政策との整合性をどのように図るかといった政策調整の難しさが影響していると考えられる。


トランプ政権のビットコイン準備金構想 Polymarketで示された市場の温度感と具体的数値

トランプ大統領が2025年3月、SNS「Truth Social」を通じて明らかにした戦略的ビットコイン準備金構想は、暗号資産市場に一時的な動揺をもたらした。政策発表直後にPolymarketでは「100日以内に準備金創設」という賭けが活発化し、確率は11%から23%へと大きく上昇したが、その後の推移を見る限り、市場全体の警戒感が依然として強いことがうかがえる。

Polymarketの仕組みでは、米政府が2025年4月29日午後11時59分(東部時間)までに、押収ではなく自発的にビットコインを保有していることが条件となる。単なる発表や検討段階では成立せず、実際の資産保有という事実が必要となる点が、トレーダーたちの慎重な姿勢につながっている。

特に注目されるのが、「Theo5」と呼ばれるフランスのトレーダーが、100日以内の創設を否定する「No」ポジションに4万ドル(約600万円)を投じ、大きな利益を上げたという動きである。過去の米大統領選でもトランプ勝利を見越して賭けを行った実績があることから、その戦略眼には市場も一定の注目を寄せている。ただし、政策の実現性を巡る市場の不信感が投資行動を形成している点は見逃せない。

XRPとSOLの価格急騰の背景 トランプ政権の政策発表に伴う資産選定と市場の反応

今回のトランプ大統領によるビットコイン準備金構想は、対象資産の選定過程にも大きな関心が寄せられている。当初、XRPとSOLが準備金の対象としてSNS上で言及されたことで、両銘柄の価格は政策発表直後に急騰した。その後、BTCとETHが正式に対象に含まれると発表されたことで、主要4銘柄を巡る投資資金の流入が一気に加速した。

米国の戦略的準備金に特定銘柄が選定されることは、政府のお墨付きを得たものと受け止められやすく、投機的な資金が短期的に集中する傾向がある。しかし、XRPやSOLといった銘柄がBTCやETHと並ぶ形で取り上げられた点については、トランプ政権の暗号資産政策の方向性を読み解く上でも注目すべき要素である。

一方で、市場が政策の長期的な実効性に疑問を抱いていることは、Polymarketの賭け率の推移からも明らかである。XRPとSOLの価格動向に短期的な投機色が強く、準備金構想自体が米政府の正式な資産政策として定着するかは見通せない状況にある。選定銘柄の背景にある政治的意図やロビー活動の影響など、今後の政権運営において何らかの軌道修正がなされる可能性も否定できない。

トランプ政権の暗号資産政策と歴代政権との比較 100日構想が抱える制度設計上の課題

トランプ政権が打ち出した戦略的ビットコイン準備金構想は、歴代政権の暗号資産政策とは一線を画すものである。これまでの米国政府は、暗号資産を主に規制対象として捉えてきたが、国家資産として保有を検討する動きは過去に例を見ない。

一方で、米国の金融システムにおける法的枠組みは、依然としてデジタル資産の位置付けについて明確な統一基準を確立できていない。仮に政府がビットコインを準備金として保有する場合、会計処理や財務報告、議会承認を含む一連のプロセスにおいて多くの制度上の課題が顕在化すると考えられる。

さらに、トランプ政権の政策決定プロセスには即断即決の傾向が強く、議会や専門機関との十分な協議を経ずに発表に至る事例も少なくない。今回の準備金構想も、大統領個人のSNS発信という形で公表されたことから、実現に向けた法的・制度的裏付けがどこまで整っているのかは依然として不透明である。政策実現のハードルの高さと、トランプ政権特有の強引な政策運営スタイルが市場の懐疑的な見方を強める一因となっている。

Source: CoinDesk