2024年にS&P500で最も高い上昇率を記録したパランティア・テクノロジーズが、2025年に入り急速な調整局面を迎えている。株価は史上最高値から32%下落し、ナスダック100指数全体の下落率を大きく上回るものの、モルガン・スタンレーのサンジット・シン氏は目標株価を95ドルから115ドルに引き上げた。同氏はICRカンファレンスでの経営陣のプレゼンを踏まえ、売上成長率の加速に着目したとしている。
パランティアは2025年の売上成長率を30%と見込み、2023年の16.7%からの回復基調を鮮明にした。特に米国商業部門が高成長をけん引し、AI関連ソリューションへの需要が堅調に推移する見通しだ。
一方で、依然として高いバリュエーションや防衛予算削減による影響を懸念する声も根強く、目標株価を巡る見解には依然として幅がある。パランティアの独自技術と政府・商業分野双方にまたがる強固な顧客基盤が今後の成長継続を支えるか、注視する必要がある。
モルガン・スタンレーが示す115ドル目標株価 事実に基づく評価変更の背景

パランティア・テクノロジーズを巡る株価動向が注目を集める中、モルガン・スタンレーのアナリスト、サンジット・シン氏が目標株価を95ドルから115ドルに引き上げた。2025年に入り株価は最高値から32%下落しているが、それでもシン氏は「買い」評価を維持し、中期的な成長期待を強調した。特に評価変更の要因となったのが、1月に開催されたICRカンファレンスでの経営陣の発言である。
同カンファレンスでパランティアは2025年の売上成長率を30%と見通し、2024年の28.8%や2023年の16.7%からの加速を示した。売上加速の背景には、米国商業部門における事業拡大とAI関連製品への需要増加がある。特にFoundry、Gotham、Edge AI、AIPといった製品群は、政府向け・商業向け双方で成長を支える中核として位置付けられている。
なお、シン氏はわずか2か月前まで「売り」評価を示し、目標株価を60ドルとしていた事実も注目に値する。2024年第4四半期の好決算を受け、「ホールド」へと格上げし、今回さらに上方修正に踏み切った経緯を踏まえると、同氏の評価には業績を反映した柔軟な判断が見て取れる。
340%上昇からの32%下落 高バリュエーションと防衛予算懸念の交錯
2024年にS&P500採用銘柄の中で最も高い上昇率を記録したパランティアだが、2025年に入り投資家のセンチメントは一変した。前年340%の上昇に対し、現在は最高値から32%下落しており、市場全体を上回る調整幅となっている。その要因として、高水準のバリュエーションに対する警戒感が根強い。予想PERは依然286倍と、他の成長株と比較しても突出した水準にある。
さらに、防衛予算の縮小が収益構造に与える影響も警戒材料として浮上している。パランティアは米国政府向け事業が売上全体の大きな部分を占めるが、防衛関連支出が抑制されれば受注環境の悪化につながる可能性も否定できない。一方、商業部門ではAI搭載ソリューションへの関心が高まり、業種を問わず導入事例が拡大している。特に米国商業部門の売上は前年同期比64%増と急成長を遂げており、政府向けに依存しない収益基盤の構築が進んでいる。
過去の株価パフォーマンスや外部環境を踏まえると、パランティアに対する投資判断には依然として賛否が分かれている。AI革命をけん引する企業としての地位を確立する中で、急成長と高バリュエーションのバランスをどのように保つのかが、今後の焦点となる。
カープCEOが語る20年の歴史 忍耐と逆張り戦略がもたらす未来
パランティアのアレックス・カープCEOは、2024年の株主への手紙の中で、同社の創業以来の歩みを振り返った。防衛および諜報機関向けエンタープライズソフトウェアに特化し、消費者向けビジネスがもてはやされる時代にも独自路線を貫いたことが、現在の強固な競争優位につながったと強調している。
カープ氏は「大企業並みの製品力とリーチ、新興企業の成長スピードと機動力を兼ね備える」という独特の企業文化こそが、パランティアの競争力の源泉と位置付ける。特にFoundryやGothamといったプラットフォームは、政府機関から商業企業まで幅広いニーズに応える柔軟性を持ち、単なるデータ解析ソフトを超えた存在へと進化している。
また、カープ氏は現在のAI革命を「数年から数十年にわたる変革の序章」と位置付ける。政府向けに加え商業分野にも深く浸透するパランティアのAIソリューションは、今後の技術革新とビジネスモデル変革の両面で重要な役割を果たす可能性がある。独自技術と逆張り戦略に裏打ちされた事業展開が、持続的な成長を実現できるかが引き続き注目される。
Source: Barchart.com