MSIがNvidiaの最新GPUであるBlackwellシリーズの販売価格を、事前告知なく引き上げていた事実が明らかとなった。対象はRTX 5090、RTX 5080、RTX 5070 Tiの3モデルで、特にRTX 5070 Tiは当初Nvidiaが示した希望小売価格(MSRP)749ドルを大きく超える899ドルに設定されている。

加えて、最安モデルでさえ820ドルと、MSRP準拠の製品は市場に存在しない状況が確認された。Nvidiaが自社のFounders Editionを投入しておらず、AIB各社が独自判断で価格を設定している点も価格高騰に拍車をかけている。

RTX 5070 Ti以外にも、Blackwell世代ではパフォーマンス低下や32bit版PhysX非対応といった仕様変更が判明しており、次世代GPUの期待感とは裏腹に、実際のユーザー体験には不透明感が漂う。Nvidiaが供給改善に向けた動きを見せる中、価格動向と在庫状況が引き続き注視される。


MSIがMSRPを逸脱しRTX 5070 Tiを含むBlackwellシリーズ全体で価格改定 希望小売価格との乖離が常態化

MSIがNvidiaのBlackwell世代にあたるRTX 5090、RTX 5080、RTX 5070 Tiの3モデルで、事前告知を行うことなく販売価格を引き上げたことが判明した。特にRTX 5070 Tiについては、Nvidiaが設定したMSRPである749ドルに対し、発売当初の価格を維持せず、現行の最安値でも820ドルに達している。MSIの公式モデルであるRTX 5070 Ti Ventus 3Xは、現在899ドルでの販売が確認されており、MSRPから20%以上の上昇幅を記録している。

加えて、Nvidiaが自社のFounders Editionを投入していないことも、MSRPを下回る選択肢を消失させる要因となっている。AIB各社は独自の冷却機構や外装デザイン、工場出荷時のオーバークロック設定などを盛り込んだ非MSRPモデルに比重を置き、価格上昇に繋がっている。結果として、ユーザーがレビューなどで目にするMSRP基準の価格と実際の販売価格に乖離が生じ、価格指標としてのMSRPの意義が大きく揺らいでいる。

一方、希望小売価格を超える価格設定は近年のグラフィックボード市場全体に見られる傾向でもあり、MSI単独の動きとは断定できない。供給不足や製造コスト上昇、AI分野を含むデータセンター向け需要の増加が背景にあると考えられ、市場全体が高価格帯にシフトしつつある状況は今後も続く可能性が高い。

Blackwell世代の仕様変更が示すNvidiaの新戦略 ユーザー体験への影響と先行き

MSIの価格改定と並行して、NvidiaのBlackwell世代には従来モデルには見られなかった複数の仕様変更が判明している。具体的にはROPユニット数の削減により、特定のシナリオでは最大11%もの性能低下が確認されるという指摘がある。特に旧世代からの買い替え層にとっては、単純な性能向上が見込めない可能性があることは留意すべき点である。

加えて、Blackwell世代では32bit版PhysXのサポートが打ち切られており、古いタイトルをプレイする際には正常に起動しない事例が増加する可能性がある。さらに、電源コネクタ周りのフェイルセーフ機能が削減されたことで、接続不良による動作不安定リスクも高まるとの見方がある。こうした仕様変更はコスト最適化や次世代プラットフォームへの移行促進というNvidiaの戦略的判断とも受け取れる。

一方で、これらの仕様変更がエンドユーザーにとって必ずしもネガティブに働くとは限らない。AI向け最適化やレイトレーシング性能の向上といった、新世代ならではの強みも存在する。重要なのは、新機能や性能向上に対する期待と、実際のユーザー体験とのギャップを冷静に見極める視点である。Nvidiaがどこまでゲーマー市場とデータセンター需要のバランスを取るのか、Blackwell世代の評価は今後の動向に左右されるだろう。

AMDの対抗モデルとRTX 5070の動向がBlackwell市場に与える影響と価格動向への示唆

Nvidiaが価格改定や仕様変更を行う中、AMDが対抗製品として投入するRX 9070 XTが、性能面でRTX 5070 Tiに肉薄している点も見逃せない。特に599ドルという設定価格は、820ドルから899ドルというRTX 5070 Tiの実勢価格と比較すると価格優位性が際立つ。性能差が2%以内というベンチマーク結果も報じられており、コストパフォーマンスを重視する層に対し、AMDが存在感を強める可能性がある。

また、BlackwellシリーズにおいてNvidiaが追加投入を予定するRTX 5070の動向にも注目が集まる。予定価格は549ドルとされ、RTX 5070 Tiとの価格差が大きいため、コスト重視層の選択肢としては有力な候補となる。ただし、発売時期は当初2月予定から3月へと延期されており、供給量や実際の市場価格については不透明な部分が残る。

Nvidiaはデータセンター向けウェハーの一部をコンシューマー向けへ振り向けるとの報道もあるが、その効果がどの程度早期に反映されるかは未知数である。Blackwell世代の価格上昇が一時的なものか、中長期的な価格水準の変化を示すのか、MSIの価格改定を一つの兆候として慎重に見極める必要がある。

Source:Tom’s Hardware