PassMarkが2025年2月25日に公開したレポートによれば、NvidiaのRTX 50シリーズGPUが同社のDirect Computeベンチマークで低パフォーマンスを示した背景には、32ビットOpenCLサポートの打ち切りが関係している可能性が浮上した。
NvidiaはCUDA 12.0以降で32ビットCUDA自体を段階的に廃止してきたが、この影響がレガシーOpenCLコードにも及び、RTX 50シリーズでは該当コードがCPUへフォールバックする事態となっている。
この問題はソフトウェアの互換性に起因するもので、RTX 40シリーズ以前では動作していた32ビットOpenCLプログラムが最新アーキテクチャでは不具合を引き起こす状況が確認された。PhysXなど過去の技術にも同様の影響が見られるが、Nvidiaが公式に32ビットサポートを復活させる可能性は低いと考えられている。PassMarkは、既存のベンチマークに含まれる一部の32ビットコードを64ビットモードに再コンパイルする対応を実施済みだが、ブラックウェル世代GPU自体の供給不足も重なり、直接的な検証は困難な状況にある。
Nvidiaが進めた32ビットCUDAサポート終了の背景とRTX 50シリーズへの影響

NvidiaはCUDA 12.0以降で32ビット環境に対するサポートを段階的に廃止してきた。これによりPhysXをはじめとする32ビットCUDAを前提とした技術が事実上の終焉を迎え、対応するソフトウェアは新世代GPUで正常に動作しないケースが相次いでいる。
PassMarkが2025年2月25日に公開したレポートによれば、RTX 5090およびRTX 5080を含むRTX 50シリーズのDirect Computeベンチマークにおいて、従来に比べ極端に低いスコアが記録された背景には、この32ビットCUDAサポート終了と、それに伴うOpenCL環境への影響が関係している可能性が示された。
特に古いOpenCLライブラリには32ビットコードが依然として含まれており、RTX 50シリーズではこれらのコードがGPUではなくCPUへフォールバックする現象が確認されている。これが、ベンチマークスコアを著しく押し下げる一因になっていると考えられる。Nvidiaは数年をかけて段階的にこの移行を進めてきたが、完全な互換性確保には至っておらず、32ビットアーキテクチャを前提とした一部のソフトウェアには依然として深刻な影響が残っている。
Nvidiaが今後32ビット対応を復活させる可能性は極めて低いが、32ビットから64ビットへの変換レイヤーや互換モードの導入によって、問題の一部は回避できる可能性も指摘される。しかし、最新のBlackwellアーキテクチャ向けには、そもそも32ビット資産の活用を前提としていない開発方針が既定路線となっており、これに対応しないソフトウェアは抜本的な刷新を迫られる状況にある。
32ビットOpenCL廃止がもたらすソフトウェア資産の分断とPassMarkの対応
Nvidiaによる32ビットOpenCLサポート打ち切りは、古いOpenCLコードを含む多数のアプリケーションに波及している。PassMarkがX(旧Twitter)で明かしたところによると、Direct Computeベンチマークに組み込まれている一部のコードは、32ビット環境向けに構成されたままのものが存在し、これがRTX 50シリーズでの低スコアに直結している可能性があるという。
特に過去に作成されたライブラリやモジュールには32ビット仕様が残存しているものも多く、こうした資産をそのまま維持することは次世代GPU環境では困難になりつつある。PassMarkはこの問題に対応するため、PerformanceTestの最新版で該当コードを64ビット化する対応をすでに完了している。具体的には一部のカーネルを64ビットモードで再コンパイルし、古いライブラリに依存しない新しい構成に置き換える形で互換性問題を解消した。
とはいえ、こうしたソフトウェア資産の移行は単純な作業ではなく、古いコードほど依存関係が複雑に絡み合うため、全てのアプリケーションで迅速な対応が可能とは限らない。特に物理演算エンジンのPhysXのように、深いレベルでCUDAやOpenCLに依存したソフトウェアの場合、大規模なコード改修が不可避となる。こうしたソフトウェア資産の分断が、Nvidiaの新世代GPU環境において今後どのように収束するかは、各ソフトウェア開発者の対応力に委ねられている。
Blackwell世代GPUの供給不足が検証作業に及ぼす影響と今後の展望
PassMarkによると、RTX 5090を含むBlackwell世代のGPUは依然として市場在庫が非常に限られており、同社も実機検証を十分に行えない状況が続いている。特にRTX 50シリーズの実機検証は、ベンチマークツールの互換性問題を把握する上で不可欠であり、物理的な入手難が評価作業を著しく妨げる要因となっている。
この供給不足の背景には、Nvidiaの製造プロセスの変更や新規プロセスノードへの移行、AI需要による供給逼迫など複合的な要因が絡んでいる可能性がある。実際、RTX 50シリーズの登場以降、ハイエンドGPUは一部地域で高騰が続き、早期の供給安定化は期待しにくい状況にある。こうした状況が続けば、32ビットコード問題の影響を正確に把握するための検証作業そのものが長期化する可能性も否定できない。
一方で、ソフトウェア側の対応が進めば、32ビット資産に依存しない形で新たなベンチマーク環境が整備される可能性も考えられる。Nvidiaの技術方針が明確に64ビット環境へシフトしている以上、32ビットコードに固執するソフトウェアは事実上の市場からの退場を余儀なくされる公算が大きい。今後のGPU環境は64ビット完全対応を前提とする形へと一層加速していくとみるのが妥当である。
Source:Tom’s Hardware