Appleの主要チップ供給元である台湾積体電路製造(TSMC)が、米国での半導体製造拡大に向けて今後4年間で1000億ドルの投資を計画していることが明らかになった。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、正式な発表は本日午後に行われる予定であり、トランプ前大統領が発表の場に立つとの見方もある。

この投資はアリゾナ州を含む米国内の半導体製造施設の拡張に充てられ、政府の「国内半導体産業復活」戦略と一致するものだ。TSMCは現在、AppleのA16 BionicやS9チップを米国で生産しているが、最新鋭のチップは依然として台湾で製造されている。

今回の大規模な投資が、米国内での最先端半導体製造の拠点確立につながるのか、あるいは既存計画の延長に過ぎないのか、正式な発表の内容に注目が集まる。TSMCの決断は、米国の半導体製造における地殻変動を引き起こす可能性がある。

TSMCの1000億ドル投資が意味するもの 半導体製造の転換点

台湾積体電路製造(TSMC)が発表した1000億ドルの投資計画は、米国の半導体産業に大きな変化をもたらす可能性がある。近年、米政府は国内での半導体生産強化を進めてきたが、その中核を担う企業がTSMCである。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、この投資は最先端の製造施設建設に充てられる予定で、米国の半導体生産能力向上に寄与するとみられている。TSMCはすでにアリゾナ州に半導体製造施設を持つが、生産されるのはAppleのA16 BionicやS9チップなど、最先端技術とは言い難い製品にとどまる。

米国内での技術革新の速度が台湾に比べて遅い点を同社CEOが指摘しており、これまで米国が最先端チップ製造の中心地にはなり得なかった背景がある。しかし、今回の投資がその流れを変える可能性は十分にあり、米国半導体産業の競争力強化につながるかが焦点となる。

米国での半導体製造拡大がAppleに与える影響

TSMCの動きは、Appleにとっても重要な意味を持つ。Appleはすでに米国内でのサプライチェーン強化を進めており、先週発表した5000億ドルの経済投資計画の一環として、国内製造の拡大を掲げている。

Appleは最先端チップをTSMCに依存しており、今回の1000億ドルの投資が、将来的にAppleのMシリーズチップやAシリーズチップの米国生産に影響を及ぼすかが注目される。現在、Appleの主力チップは台湾のTSMC工場で製造されている。

アリゾナ工場では比較的旧世代のチップが生産されているが、今回の投資により、Appleの最先端技術が米国内で製造される可能性が出てきた。これはAppleにとってサプライチェーンの安定性を確保する一方で、コスト増加の要因ともなり得る。米国内の製造コストは台湾に比べ高く、Appleの価格戦略にも影響を与える可能性がある。

米国半導体産業の未来 TSMC投資が示す新たな局面

TSMCの1000億ドル投資は、米国の半導体製造強化という国家戦略と合致する。近年、米政府は半導体の国内回帰を目指し、CHIPS法を成立させるなど、海外依存の低減を進めてきた。特に米中関係の緊張が続く中、TSMCの投資が米国の技術的自立を後押しする可能性がある。

半導体産業の地理的分布が変化することで、世界の半導体市場に新たな波が生じるだろう。米国が製造拠点としての地位を強化することで、台湾や韓国の競争力にも影響を与えかねない。TSMCの決断は、単なる企業戦略ではなく、半導体業界全体に及ぶ変革の起点となるかもしれない。正式発表の詳細が明らかになれば、米国の半導体政策の行方がより明確になるだろう。

Source:9to5Mac