AI市場の拡大を背景に、Dell TechnologiesとSuper Micro Computerが次世代コンピューティング基盤を巡る競争を本格化させている。DellはNvidiaとの連携を軸にAIファクトリー構築を進め、xAI向け大型サーバー供給などで存在感を高める。一方、Super MicroはGPU最適化サーバーや液冷技術を武器にAI特化サーバー市場で独自の地位を築いてきた。

Mizuho証券はSuper Microの目標株価を50ドルに設定し、今後の成長余地を16.4%と見積もるが、Hindenburg Researchによる会計不正の告発や監査法人辞任といったリスクが引き続き懸念材料となっている。AI需要拡大に伴う売上急増が期待される一方、規制や企業体制の強化が今後の評価を左右する可能性もある。

Dellは第4四半期決算で前年比7%増の239億ドルを計上し、AI関連受注額は17億ドルに達するなど堅調な成長を維持。2026年度の売上は最大1,050億ドルに達する見通しで、AIサーバー需要を追い風に2桁台後半の成長が期待される。Super MicroとDell、両社の戦略と財務健全性の対比が、今後の投資判断に大きく影響を及ぼす局面に入っている。



DellとSuper Microが描くAIインフラ戦略の核心と事業構造の違い

Dell TechnologiesとSuper Micro Computerは、AI需要拡大を受けてサーバー事業を強化しているが、両社の戦略には明確な違いがある。DellはNvidiaと提携し、大規模AIモデルのトレーニング基盤を提供するAIファクトリーを構築。Elon Musk率いるxAI向けにも大量のサーバーラックを組み上げるなど、スケールメリットを活かした大型案件を軸に事業を拡張している。

一方、Super MicroはGPU最適化サーバーや液冷ソリューションといった高度技術を強みに、AIやハイパフォーマンスコンピューティング向けに特化した製品ラインを展開。Nvidiaとの連携やxAIへの関与は共通するが、技術優位性を前面に押し出し、ハードウェア設計そのものに競争力を求める姿勢が際立つ。

事業規模ではDellが圧倒的優位に立つが、Super MicroはAIサーバー市場での専門性を強調することで独自の存在感を確立。規模の経済を追求するDellと、先端技術でニッチトップを狙うSuper Microという構図は、今後の市場競争の行方を占う上で極めて重要な要素となる。

規制リスクと財務透明性がSuper Microに与える影響と成長余地の現実

Super Micro ComputerはAI特化型サーバー市場で高成長を見込まれているが、過去の会計不正疑惑や監査法人交代といった企業統治上の懸念が依然として尾を引く。2023年にはHindenburg Researchが会計処理の透明性を問題視し、上場企業としての信頼性に大きな打撃を与えた。この問題を受け、監査法人EYも辞任し、財務諸表の適時開示が遅延するなど、透明性に対する不信感が市場でくすぶり続けている。

一方で、Mizuho証券のVijay Rakesh氏は、Super Micro株に「ホールド」推奨と目標株価50ドルを提示。これは現在価格から16.4%の上昇余地を示しており、事業成長期待は依然として高い。2026年度には売上が最大400億ドル、1株当たり利益が4.50ドルに達するとの予想もあり、市場成長と技術優位を背景に株価が反転する可能性も否定できない。

ただ、成長余地が高く評価される一方で、企業統治や財務健全性への市場の視線は厳しく、規制リスクや透明性向上への取り組みが不十分であれば、評価見直しの動きも起こり得る。Super Microに求められるのは、成長戦略と並行した内部統制の強化と透明性確保に向けた姿勢の明確化にほかならない。

Dellの堅調な財務基盤とAI関連受注の積み上げが示す安定成長の実力

Dell Technologiesは2025年1月期第4四半期決算において、売上239億ドル(前年比7%増)、1株当たり利益2.68ドル(18%増)を記録。特にインフラストラクチャーソリューション部門(ISG)が22%成長し、サーバー・ネットワーキング分野は過去最高の66億ドルに到達。ストレージ部門も5%増と、事業全体で安定した成長を維持した。

AI関連の受注額は四半期で17億ドルに達し、累計受注残は約90億ドルに積み上がる。NvidiaとのAIファクトリー構築やxAI向けサーバー供給といった大型案件が下支えし、AI市場拡大を追い風に安定した成長を見込む。2026年度の売上予想は1,010億~1,050億ドルで、AIサーバーの需要増によりインフラ部門が2桁台後半の成長を維持すると見られている。

株主還元策でも積極姿勢を示し、年間配当を18%増額し1株2.10ドルとした上で、自社株買い枠も100億ドル増額。先行PER11倍という割安感も相まって、財務の安定性と事業成長性を兼ね備えた企業として、中長期での安定投資先としての魅力を強く示している。


Source:Barchart.com