インテルのファウンドリー事業を巡り、エヌビディアとブロードコムが次世代製造技術「18Aプロセス」の試験に着手したことが明らかとなった。AI半導体分野の二大巨頭が試験段階に進んだ事実は、長年赤字が続くインテルの製造事業にとって潜在的な転機となる可能性がある。
両社が正式な製造契約に至れば、数億から数十億ドル規模の案件へと発展する可能性もあるが、知的財産権や技術面の課題を抱える18Aプロセスが商業化に至るには、2026年後半以降まで時間を要する見通しである。
市場では、AIを牽引する企業による関与自体がインテル技術への一定の信認を示すものとして評価され、株価は一時3%以上上昇した。ただし、ウォール街の見方は依然慎重であり、目標株価は24.24ドルと現状とほぼ同水準にとどまっている。
エヌビディアとブロードコムが試験採用に踏み切ったインテル18Aプロセスの現状と課題

2024年3月3日、AI半導体の世界的リーダーであるエヌビディアとブロードコムが、インテルの次世代製造プロセス「18A」のテストを進めていることが関係者の証言から明らかになった。エヌビディアとブロードコムというAI分野の中心企業が、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)以外の選択肢としてインテルの技術に関心を示したことは、インテルのファウンドリー事業にとって象徴的な出来事である。
18Aプロセスはインテルが技術覇権の奪還を狙い、2025年から2026年にかけて本格稼働を目指す最先端ノードである。しかし現時点では商業的な成功事例が存在せず、知的財産権の処理を含めた複雑な課題が積み残されている。特に、プロセスの安定性や量産体制の確立においては、台湾TSMCや韓国サムスン電子に対する技術的劣位が克服されておらず、顧客企業が本格的な契約に踏み切るには相応の時間を要する可能性が高い。
インテルは自社製品のみならず外部企業への製造受託を収益の柱とする戦略へと舵を切ったが、その象徴として位置づけられる18Aプロセスが、エヌビディアやブロードコムの信頼を得ることができるかが今後の事業全体を左右する重要な要素となる。両社との交渉の行方が、単なる個別案件を超え、インテルの外部受託ビジネス全体の将来像を占う試金石となる。
インテルの株価を押し上げる期待とウォール街の慎重な評価の温度差
エヌビディアやブロードコムによる18Aプロセスの試験導入報道を受け、3月3日時点でインテル株は一時3%以上の上昇を記録した。AI関連のトップ企業がインテルの最先端技術に関心を示したこと自体が、技術的信頼性への一定の裏付けと捉えられ、市場の期待感を直接刺激したものと考えられる。特にエヌビディアのような業界の象徴的存在が関与することで、他の半導体設計企業の関心にも波及する可能性は否定できない。
一方で、ウォール街の見解は熱狂とは一線を画す。目先の株価上昇を評価しつつも、18Aプロセスが本格的な商業化に至るまでの技術的ハードルや知的財産リスクに対する懸念は依然根強い。さらに、インテルがTSMCやサムスンに対抗しうる競争力を確保できるかについても、客観的な裏付けは十分ではないとの認識が広がっている。
Mizuhoのアナリスト、ジョーダン・クライン氏が指摘する通り、最先端ノードの設計受託とファウンドリー事業の確立には依然多くの不透明要素が残る。実際、ウォール街におけるインテル株の平均目標株価は24.24ドルと、足元の株価とほぼ同水準にとどまっている。エヌビディアやブロードコムの動向が注目を集める中でも、過剰な楽観論には慎重な目線が維持されているのが実情である。
ファウンドリー事業強化を狙うインテルの構造転換と市場への影響
インテルは自社製品の設計・製造から、外部企業の受託生産を担うファウンドリー事業への構造転換を加速させている。背景には、自社製品の競争力低下に伴う収益構造の見直しと、TSMCが独占的に担う先端半導体の供給網に対する依存度の低減がある。
この戦略転換の中核を担うのが、2026年以降の量産化を視野に入れた18Aプロセスである。TSMCやサムスンと競争し得る最先端ノードとして位置付けられているが、現時点では商業化実績がないため、技術的信頼性の確立が最大の課題となっている。エヌビディアやブロードコムといった業界最前線の企業がテスト段階に関与する事実は、技術面での一定の評価につながる可能性を示唆するが、本格的な受注獲得までにはなお時間を要すると見られる。
また、ファウンドリー事業が成功するか否かは、インテルの事業モデルそのものの成否を左右する。自社設計・製造からファウンドリー型へ移行するプロセスには、投資回収や顧客獲得の難度が伴う。18Aプロセスを核としたファウンドリー戦略が、最終的に安定収益へと結びつくかどうかは、単に技術力だけでなく、知的財産権や供給体制、価格競争力など多面的な要素が影響を与えることになる。
Source:Barchart.com