米著名投資家ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが、先の四半期に2種類のS&P500ETFを完全売却した事実が明らかとなった。これまで個人投資家に長期的なS&P500投資を推奨してきたバフェット自身が、保有資産からこれらETFを外した理由に対し、市場関係者の注目が集まっている。
バークシャーが手放したETFの規模は同社全体から見れば小規模にとどまるものの、ウルタ・ビューティーや大手金融機関株の縮小と合わせて、ポートフォリオ全体の組み換え意図が透けて見える。市場の割高感や特定セクターへの慎重姿勢、現金比率引き上げといった複合的な要因が背景にある可能性が指摘されるが、バフェット自身が市場クラッシュを予測していると断定するのは早計である。
むしろ、個別銘柄選別への回帰や、S&P500構成企業の一部を割高と見なす戦略的判断が色濃く反映されている可能性が高い。市場動向を見極める上で、バフェットの個別株売買動向に一層の注目が必要となる。
バークシャー・ハサウェイがS&P500ETFを完全売却 企業選別への回帰と市場評価への警戒感

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが、2024年第4四半期までにS&P500ETFの保有ポジションを完全に売却した事実が明らかとなった。売却対象となったのは、世界最大級の運用資産を誇るSPDR S&P500 ETF(SPY)およびバンガード・S&P500 ETF(VOO)の2銘柄である。これらETFは、S&P500指数全体に分散投資する手法として、特に米国の個人投資家に幅広く支持されてきた投資商品である。
バフェットは長年にわたり、平均的な投資家に対してS&P500へのインデックス投資を推奨し続けてきたが、自らはETFという形ではなく、個別銘柄への集中投資に軸足を戻している可能性が浮上した。Fiduciary Organization & Woodmark Advisors創設者のダニエル・ミルクス氏は、S&P500全体のバリュエーション上昇やボラティリティの高まりが背景にある可能性を指摘する。
一方、バークシャーがETFを通じた間接保有から、構成銘柄の選別を通じた直接保有へと戦略転換を図ることで、指数全体への依存度を下げつつ、企業分析能力をより生かすポートフォリオに再構築する狙いも考えられる。市場全体の短期変動に左右されるリスクを抑え、個別企業の成長性や割安度を見極める方向へ傾斜する可能性が高まっている。
S&P500ETF売却と同時に個別株も縮小 市場の割高感と特定セクターへの慎重姿勢
S&P500ETF売却と軌を一にする形で、バークシャー・ハサウェイはウルタ・ビューティーやバンク・オブ・アメリカ、シティグループ、Nuホールディングス、チャーター・コミュニケーションズ、キャピタル・ワンといった幅広いセクターの個別株についても、保有比率を引き下げた。これにより、ETF売却が単独の判断ではなく、ポートフォリオ全体の見直しの一環である可能性が一層浮き彫りとなる。
特に金融セクターや通信セクターといった、直近の金利動向や消費者行動の変化に影響を受けやすい銘柄群が対象となっており、これらセクターへの慎重姿勢がうかがえる。My Retirement Network創設者メリッサ・カロ氏は、ETF売却以上に個別株の縮小こそが注目すべきポイントであると指摘する。
一方で、バフェットが過去にも割高感が高まったセクターを中心に、段階的な持ち分縮小を進めてきた経緯を踏まえれば、今回の動きも特定市場や特定業種に対する過熱感への警戒が色濃く反映されている可能性がある。短期的な市場予測ではなく、企業の本質的な価値に基づく資産再配分を重視する姿勢は、今後のバークシャーの投資戦略を読み解くうえで引き続き重要な視点となる。
個人投資家はバフェットの売却をどう捉えるべきか 長期投資原則と市場イベントへの冷静な対処
ウォーレン・バフェットによるS&P500ETFの完全売却は、一般投資家にとって市場の大きな不安材料と受け止められる可能性がある。しかし、バフェット自身は以前から「短期的な株価の動きは誰にも予測できない」と明言しており、今回の売却を市場暴落の前触れと結論付けるのは適切ではない。
バークシャーが保有していたS&P500ETFの規模は、同社の総資産から見ればごくわずかであり、バークシャー全体の投資方針を左右するようなものではなかった。むしろ、個別株への集中や現金比率引き上げといった資産配分の調整の一環として、必要最小限の売却であった可能性も考えられる。
長期的な資産形成を目指す投資家にとって重要なのは、バフェットの短期的な売買動向に振り回されることではなく、堅実な資産配分と時間分散を軸とした長期運用を続けることである。分散投資の一環としてS&P500ETFを活用する戦略そのものが否定されたわけではなく、目先の動きに一喜一憂せず、自身の投資方針を見つめ直す契機とする姿勢が求められる。
Source:Moneywise