バークシャー・ハサウェイを率いるウォーレン・バフェットは、2024年の前半にアップル株を大幅に売却したものの、同年第4四半期以降は750億ドル規模の保有を維持している。アップル株は依然として同社最大の投資先であり、バフェットが戦略的に持ち続ける姿勢を見せたことで、市場にはその判断の意図を巡る憶測が広がっている。
アップルはサービス部門の成長に支えられ、営業利益率が過去最高の32%に到達した一方、ハードウェア事業は停滞。中国市場では地元企業の台頭によるシェア低下が続き、売上減少が深刻化している。さらに、Google検索契約やApp Store手数料を巡る独禁法訴訟の行方は不透明で、年間利益の20%以上が失われる可能性も指摘される。
バフェットがこの逆風下でもアップル株を維持する背景には、強固なブランド力とエコシステムへの信頼がうかがえる。ただし、株価収益率はS&P500平均を大きく上回っており、既存株主にとっては保有継続が選択肢となる一方、新規投資には慎重な見極めが求められる状況である。
バフェットが750億ドルのアップル株を維持 2024年第4四半期の動向が示す戦略的意図

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年の最初の3四半期にアップル株を大幅に売却し、保有規模を縮小した。しかし、同年第4四半期においては追加売却を行わず、最大保有銘柄としての地位を維持した事実が確認されている。執筆時点で、バークシャーのアップル株の価値は約750億ドルに達しており、同社のポートフォリオに占める比率は依然として極めて高い。
アップル株の保有継続が、バフェットの強気姿勢を示唆するものか、あるいは他銘柄への資金シフトの一環として一時的な静観を選択した結果かは断定できない。ただし、過去にもバフェットは優良企業への集中投資を貫いており、短期的な株価変動に動じず、長期的な収益性や競争優位性を重視する姿勢を明確にしてきた。
アップルの業績は直近の四半期で売上が前年比4%増と回復傾向にあり、特に利益率の高いサービス部門が成長を牽引している。一方、中国市場の逆風や独占禁止訴訟といった先行き不透明な要素も抱える中、バフェットが保有継続を選択した背景には、単なる短期的な収益期待だけではない要素が影響している可能性がある。
営業利益率32%の達成とサービス部門の躍進 収益構造の転換がもたらす中長期的影響
アップルの2024年第4四半期決算では、売上が前年同期比4%増の1243億ドルに達し、営業利益率は過去最高の32%に到達した。特筆すべきは、利益率の高いソフトウェアサービス部門が業績の柱となり、同部門売上が前年同期比で約13%増加し、260億ドルにまで拡大した点である。
近年のiPhoneやiPadなどハードウェア製品の販売は、成長が鈍化傾向にある中、サービス部門が安定した収益基盤を築きつつある。この構造転換により、アップルは従来のデバイス販売依存型のビジネスモデルから、エコシステムを活かしたサブスクリプション型収益モデルへの移行を進めている。
ただし、同社の成長の軸足がサービス部門に移ることで、App Store手数料や検索エンジン契約といった収益源に対する規制当局の監視は一段と強まる可能性がある。営業利益率の上昇は好材料であるものの、競争環境や法的リスクの高まりが同社の収益構造全体に与える影響は、今後も慎重な見極めが必要である。
iPhone 16Eの投入と中国市場でのシェア低下 グローバル戦略と規制リスクが絡む不透明な事業環境
2025年に向けて、アップルは新たに600ドルの低価格モデル「iPhone 16E」の投入を予定している。従来の800ドル超の最新モデルと比較し、より幅広い消費者層へのアプローチを狙うものとみられる。この戦略は新興市場や価格競争が激化する地域での販売促進策の一環と位置付けられる。
一方で、主力市場の一つである中国では、地元スマートフォンメーカーが台頭し、アップルの市場シェアは過去数四半期にわたり縮小傾向にある。特に2024年は、iPhone販売の減少が中国市場全体の成長鈍化に直結し、グローバル売上への影響が無視できない状況となっている。
加えて、米国を含む各国政府による独占禁止法の適用強化により、App Store手数料や検索エンジン契約を巡る訴訟が長期化する可能性がある。年間利益の20%から30%が失われるリスクが指摘される中、同社の事業環境には依然として大きな不透明感が漂う。バフェットによる保有継続の判断も、こうしたリスク要因を踏まえた慎重なバランスの上に成り立っていると考えられる。
Source:The Motley Fool