ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが28.2%を保有するオクシデンタル・ペトロリアムの株価が、52週安値となる45.17ドルに沈んでいる。2024年のクラウンロック買収に伴う100億ドルの債務増加や、石油供給過剰と世界経済の減速懸念が、株価の下押し要因となっている。
バフェットは2019年の初取得以降、段階的に買い増しを続け、2024年末にはわずか1週間で5度にわたり追加取得を行うなど、同銘柄への強い信念を見せる。一方で、オクシデンタルは債務削減と配当増配を両立させる経営戦略を進めるが、原油価格の下落や再生可能エネルギーへのシフトといった外部環境リスクが将来の収益見通しを曇らせる。
低コスト生産を強みに、2025年以降のカーボンキャプチャープロジェクト「STRATOS」など脱炭素分野にも進出するが、エネルギー転換の流れに逆行する石油依存のビジネスモデルが持続可能なのか、投資家の見極めが問われる局面にある。
バフェットが積み増すオクシデンタル 130億ドルの巨額投資とその背景

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、オクシデンタル・ペトロリアムの発行済み株式の28.2%を保有し、現在その投資額は約130億ドルに達している。最初の取得は2019年にさかのぼり、2022年から2023年にかけて集中的な買い増しを実施し、さらに2024年末にはわずか1週間で5回もの追加取得を行うなど、徹底した買い姿勢を示している。
バフェットがオクシデンタルに強い関心を示す理由は、低コスト生産が可能なパーミアン盆地での優位性に加え、2024年に実施したクラウンロック買収により日量134万バレルにまで生産能力を拡大した点にある。また、2025年後半にはカーボンキャプチャープロジェクト「STRATOS」が稼働予定で、原油依存からの脱却を目指す動きも評価していると考えられる。
バフェットの投資スタイルは、「優れた企業を適正価格で買い、長期保有する」という一貫した哲学に基づくものだが、オクシデンタルへの執着とも言える継続投資は、米国のエネルギー安全保障や世界的な石油需要を見据えた戦略的判断である可能性も否定できない。特に原油価格が不安定な局面であっても、低コスト体質と債務削減を進めるオクシデンタルに対する信頼感が、バフェットの行動を支えていると見られる。
供給過剰と経済減速が重石 オクシデンタル株の下落要因と財務リスク
オクシデンタル・ペトロリアムの株価は2025年3月時点で45.17ドルと52週安値を記録し、2024年の高値71.18ドルから大幅に下落している。この背景には、世界的な石油供給過剰と経済減速への懸念があり、特にWTI原油価格が1バレル69ドル以下に低迷している現状が収益見通しに影を落としている。
オクシデンタルの2024年第4四半期決算では、売上高は68億ドルと前年同期比5%減少したものの、1株当たり利益は0.80ドルと8%増加した。しかし、原油価格の下落に伴う利益率の低下は避けられず、今後の原油相場次第ではさらなる圧迫を受ける可能性も指摘される。さらに、クラウンロック買収により100億ドルの債務を新たに抱え、オクシデンタル全体の総債務は250億ドルにまで膨れ上がった。
オクシデンタルは財務体質強化を目的に債務削減を進める方針を示しているものの、原油価格の下落局面ではキャッシュフローが悪化し、債務返済や配当維持が難しくなる可能性がある。また、米国のエネルギー政策や地政学リスクに左右される事業環境は、長期的な収益見通しに不透明感を与えており、バフェットの保有姿勢とは裏腹に市場は慎重な見方を崩していない。
再生可能エネルギーへの転換と原油依存 オクシデンタルの持続可能性を問う声
オクシデンタル・ペトロリアムが長期的に直面する最大の課題は、再生可能エネルギーへの世界的な転換と原油需要の先行き不透明感である。一部アナリストは2035年を石油需要のピークと見込み、再生可能エネルギーへの移行が加速する可能性を示唆しているが、これに対しオクシデンタルは既存事業の強化と同時に、カーボンキャプチャープロジェクト「STRATOS」への投資を進めることで、新たな成長機会を模索している。
「STRATOS」は、二酸化炭素の大規模回収・貯留を目指すプロジェクトで、2030年までに1,000億ドル規模の市場形成が見込まれる。オクシデンタルはこの分野での先行者利益を狙い、石油生産企業から「グリーンエネルギー企業」への転換を志向する構えを見せる。しかし、化石燃料生産を主力とする現行ビジネスモデルとカーボンニュートラル戦略の両立は容易ではなく、市場がどこまで評価するかは不透明である。
バフェット自身は「世界は今後数十年にわたり石油を必要とする」との見解を示しており、オクシデンタルへの長期投資はその信念に基づくものと考えられる。ただし、投資家全体が同様の見方を共有しているわけではなく、短期的には原油価格や財務リスクに対する警戒感が先行している。オクシデンタルが今後どのようにエネルギー転換に適応し、成長戦略を描くかが、企業価値を左右する重要な分岐点となる。
Source:24/7 Wall St.