AMDは、RDNA 4アーキテクチャを採用した次世代グラフィックスカード「Radeon RX 9000シリーズ」について、UEFI専用サポートを正式に公表した。公式発表によれば、BIOSオンリーやレガシーCSMモードを有効にした環境では、動作保証が行われない見込みである。ただし、ボードベンダー独自の対応によるレガシーBIOS互換の可能性は完全には排除されておらず、具体的な仕様は製品ごとに異なる余地が残されている。
RadeonシリーズのBIOS・UEFI問題はPolaris世代のRadeon RX 480時代から断続的に指摘されてきたが、AMDが次世代製品群でUEFI限定仕様を明確に打ち出すのは初めてである。この背景には、セキュリティ強化や大容量ストレージ対応、NVMe SSDからのブートといったUEFIの利点を全面的に活かす狙いがあるとみられる。
実際のところ、過去10年以上にわたりPC市場ではUEFIが事実上の標準環境となっており、多くの現行システムは今回の仕様変更に伴う影響を受けない。ただし、Intel第2世代Core以前の古いシステムや、レガシーCSMモードを維持している一部の環境では、設定変更やOSインストール形式の移行を含む事前準備が求められる可能性がある。
RDNA 4世代のRadeon RX 9000シリーズが採用するUEFI限定方針とその背景

AMDが公式に発表したRadeon RX 9000シリーズにおけるUEFI限定方針は、RDNA 4アーキテクチャの設計段階から想定されていた仕様である。これまでのRadeonシリーズは、BIOSとUEFIの両環境で動作する製品も存在したが、Polaris世代以降、UEFIとの親和性を高める傾向が強まっていた。今回のRX 9000シリーズにおいて、AMDはUEFIモードのみを正式にサポート対象とすることで、将来的なシステム要件を見据えた明確な転換を打ち出したことになる。
UEFIモードが推奨される背景には、システム全体のセキュリティ強化やストレージ拡張への対応がある。具体的には、Secure Bootによる改ざん検知や、2TBを超えるストレージの利用、NVMe SSDのブート対応など、最新のPC環境に必要な要素がUEFIには備わっている。AMDはこうした利点を強調し、RDNA 4世代の最適な運用環境としてUEFIを位置づけている。
一方で、AMDがボードベンダーによる独自のレガシーBIOSサポートを完全に否定したわけではない。特定のベンダー製品において、レガシーCSMモードやBIOSオンリー環境での互換対応が行われる余地は残されている。これまでの製品においても、PowerColor製カードはBIOS対応が比較的安定していた一方、Sapphire製カードはUEFI前提の設計が多かったという傾向があり、今後もベンダーごとの対応方針が分かれる可能性がある。
過去の互換性問題とAMDが抱えるUEFI移行への課題
AMDのグラフィックスカードにおけるBIOSとUEFIの互換性問題は、今回のRDNA 4世代に限った話ではなく、Polaris世代であるRadeon RX 480まで遡る歴史的な課題である。BIOSオンリー環境では起動すらままならないケースや、UEFIモードでも特定のマザーボードで不具合が生じる事例が過去に報告されており、AMD製カードの安定運用にはUEFI環境の整備が事実上の前提となっていた。
特にSapphire製カードは、長年にわたりUEFI前提の設計が色濃く、レガシー環境での動作保証は限定的であったとされる。この点に関しては、UEFIの持つセキュリティ機能や大容量ストレージへの対応を早期から優先する設計思想が背景にあったと考えられる。一方で、PowerColor製カードは比較的柔軟な互換対応を取る傾向が見られたため、ユーザーの間では購入時にブランドを重視する傾向があった。
今回のUEFI限定方針によって、AMDは今後の互換性問題の火種を事前に封じる狙いがあるとみられる。ただし、実際にはボードベンダーごとの設計判断によって、個別製品単位でレガシー対応が行われる可能性も否定できない。特に既存ユーザーや自作市場においては、UEFIモードへの移行準備や、OSインストール形式(MBRからGPTへの移行)が必要になるケースも想定され、単なる仕様変更以上の影響が及ぶ可能性がある。
UEFI限定方針が示すAMDの戦略と最新環境への適応
AMDがRadeon RX 9000シリーズでUEFI限定を明示した背景には、単なる技術要件の提示を超えた戦略的な意図も含まれている。近年のPC市場では、Windows 11のシステム要件にもUEFIとSecure Bootが必須化されるなど、プラットフォーム全体のセキュリティ強化が進んでいる。AMDもこれに歩調を合わせ、次世代GPUに求められる信頼性や将来性を担保するため、UEFIへの一本化を選択したと考えられる。
また、Resizable BAR(SmartAccess Memory)など、システム全体のパフォーマンスを引き上げる技術も、UEFI環境を前提としている。この点について、AMDは今回のサポート記事では言及を避けているが、最新技術をフル活用するためにもUEFI移行は不可避と位置付けられていると推察される。特に、RDNA 4世代ではPCIe 5.0や次世代NVMeストレージとの連携も視野に入る可能性があり、システム全体での最適化がより重要となる。
一方で、長年PCを運用してきたユーザーにとっては、MBRからGPTへの移行やUEFI設定の確認といった手間が発生するため、単純な仕様変更以上の心理的ハードルが存在する。AMDとしては、今回の移行を技術的必然として提示することで、最新環境への適応をユーザーに促す狙いがあるとみられる。結果として、このUEFI限定方針が単なる技術仕様に留まらず、プラットフォーム全体の世代交代を促す契機となる可能性もある。
Source:HotHardware