AMDの次世代GPU「RX 9060 XT」がユーラシア経済委員会(EEC)に登録された。8GB版と16GB版の2種類が確認され、Acerの「Predator Bifrost RX 9060 XT OC」として登場する可能性が高い。だが、前世代RX 7600 XTで露呈したVRAMとメモリバスの問題を引き継ぐ可能性があり、Nvidiaとの競争力低下が懸念される。

RX 9060 XTはミドルレンジ市場を狙うものの、128-bitメモリバスにGDDR6(20Gbps)を組み合わせる構成では、VRAM容量が増えても性能向上は限定的となる恐れがある。実際、同様の設計を採用したRX 7600 XTやRTX 4060 Tiでは、帯域幅の制約がボトルネックとなり、市場評価を落とした経緯がある。

さらに、Nvidiaの次世代「RTX 5060」がGDDR7(28Gbps)を採用するとの見通しもあり、AMDはメモリ技術の差でも劣勢に立たされる可能性がある。RX 9060 XTに12GB版や192-bitバス採用の可能性も噂されるが、正式仕様は依然不透明であり、実際の性能はベンチマーク結果を待つ必要がある。


EEC登録が示すAMD RX 9060 XTの仕様と現時点で判明している事実

AMDの次世代グラフィックカード「RX 9060 XT」が、ユーラシア経済委員会(EEC)のデータベースに登録された。登録内容にはAcerブランドの「Predator Bifrost RX 9060 XT OC」が含まれ、8GB版と16GB版の2種類が存在することが明らかになっている。EECへの登録は製品投入の可能性を示唆するものだが、必ずしも発売を約束するものではなく、過去には「RTX 5090 Titan」のように市場投入されなかった例も存在する。

RX 9060 XTは、AMDの最新ミドルレンジGPUとして、コストパフォーマンスを重視した設計が想定される。しかし、現時点で判明しているVRAM構成やメモリバス幅は、過去のRX 7600 XTと同様の128-bitメモリバスを採用する可能性が高く、帯域幅に起因する性能の頭打ちが危惧される。さらに、VRAMが16GBへ拡張されたとしても、帯域幅の制限によってパフォーマンス面での恩恵は限定的なものとなることが予測される。

また、AMDが採用するGDDR6メモリの速度は20Gbpsとされ、競合となるNvidiaの次世代RTX 5060が採用すると見られるGDDR7(28Gbps)と比較すると、メモリ転送速度の面でも見劣りする可能性がある。RX 9060 XTが正式発表されるまで、EEC登録内容以上の仕様は明らかになっていないが、少なくともAMDがVRAM容量のみで競争力を維持しようとするならば、過去世代の失敗を繰り返す懸念が拭えない状況にある。

VRAM容量拡張と128-bitメモリバスのジレンマ RX 9060 XTが抱える構造的課題

RX 9060 XTは、8GB版と16GB版の2種類が確認されており、前世代RX 7600 XTと同様の2モデル展開となる可能性が高い。これは幅広いユーザー層に対応する狙いとも考えられるが、前世代同様の128-bitメモリバスが踏襲された場合、VRAM容量の増加がそのまま性能向上にはつながらないという構造的な課題を抱えることになる。

事実、RX 7600 XTでは128-bitバスによる帯域幅の制約から、16GB版と8GB版の性能差が限定的であった。この構造的な制約は、NvidiaのRTX 4060 Tiでも見られ、VRAMを増やしても描画性能やゲーム体験の向上には直結しないという教訓を残した。RX 9060 XTもこの路線を踏襲すれば、価格上昇の要因となるVRAM増量の意義が問われる状況に陥る可能性がある。

一方で、AMDがRX 9060 XTに12GB版を投入し、192-bitメモリバスを採用するとの未確認情報も存在する。仮にこの構成が実現すれば、帯域幅のボトルネックを一定程度解消できる可能性がある。ただし、現時点では公式な仕様発表はなく、EEC登録内容からもメモリバス幅の確定には至っていない。AMDが単なる容量拡張にとどまらず、帯域幅全体のバランスをどう最適化するかが、RX 9060 XTの評価を左右する鍵となる。

Nvidia RTX 5060との比較で浮き彫りになるRX 9060 XTの立ち位置

AMD RX 9060 XTがターゲットとする市場には、Nvidiaの次世代GPU「RTX 5060」が投入される見通しである。RTX 5060は最新のGDDR7メモリ(28Gbps)を採用するとの観測があり、メモリ速度と帯域幅の両面で優位に立つ可能性が高い。加えて、RTX 4060 Ti以上の性能を維持しながら、消費電力や価格面でもバランスを取る設計が想定される。

一方、RX 9060 XTはGDDR6(20Gbps)を維持し、128-bitメモリバスに留まる場合、総帯域幅ではRTX 5060に大きく劣ることになる。RX 9060 XTが仮に16GBのVRAMを搭載しても、帯域幅に起因する性能制限から、RTX 5060との直接対決では苦戦する展開が予想される。

ただし、RX 9060 XTはAMDの価格戦略やAcerをはじめとするパートナーモデルの多様性により、コストパフォーマンスで一定の強みを発揮する可能性もある。特に1080pや1440pといった解像度に最適化された設計であれば、帯域幅の制約を補いつつ、一定の市場シェアを維持する余地は残されている。AMDが次世代RX 9070 XTとも連携しながら、ミドルレンジ市場での存在感をどう高めるかが今後の焦点となる。

Source:Digital Trends