3D設計ソフト最大手のAutodeskは、2025年2月に全従業員の約9%にあたる1,300人以上の人員削減を発表した。建築・エンジニアリング分野を支える同社は、AIとクラウドへの重点投資を背景に事業構造を再編し、サブスクリプション型モデルの深化を進める方針を示している。

2025会計年度第4四半期では売上高・利益ともに市場予想を上回り、サブスクリプション売上の2桁成長や営業利益率の改善が好材料となった。一方で、2025年に入り株価は12%下落し、年初来でも8.6%のマイナスと低迷。PERやPSRは依然割高な水準だが、過去5年平均と比較すれば見直しの兆しも見られる。

アナリストは足元のリストラを効率化と長期成長戦略の一環と捉え、目標株価を引き上げる動きが相次いでいる。AI設計ツールの成長余地や「Autodesk Construction Cloud」の拡大が評価される一方で、マクロ経済や競合動向を踏まえた慎重な見極めも求められる状況である。



Autodeskが1,300人超の人員削減を断行 事業モデル転換とAI強化の狙い

2025年2月、Autodeskは全従業員の約9%にあたる1,300人以上の人員削減を発表した。建築、エンジニアリング、エンターテインメントなど幅広い分野で3D設計ソフトを提供する同社にとって、今回のリストラは単なるコスト削減ではなく、AIとクラウド領域へのシフトを加速するための戦略的な一手である。

特にサブスクリプション型モデルへの移行をさらに進めることで、収益の安定化と顧客との関係強化を図る狙いがうかがえる。第4四半期決算では売上高の93%近くがサブスクリプション売上で構成されるなど、既にビジネスモデルの転換は着実に進んでいる。加えて、同社はクラウド基盤上でAI設計ツールの高度化を進め、設計プロセスの効率化や高度な自動化に取り組んでいる。

リストラと成長戦略の両立という難題に挑む中で、MetaやGoogle、Workdayなど同業他社も同様の施策を打ち出している点は注目に値する。AIを軸にした競争が激化する中、AutodeskはクラウドとAIを一体化したサービスモデルをどこまで深化させられるかが今後の成否を分ける鍵となる。

強固な財務基盤と市場評価の乖離 株価下落が示す投資家心理

Autodeskの2025会計年度第4四半期決算は、売上高が前年同期比11.6%増の16億4,000万ドル、営業利益率は37%に達し、いずれも市場予想を上回る内容となった。サブスクリプション売上は13.7%増の15億ドルに拡大し、クラウドシフトによる安定した収益基盤の構築が進んでいることを示している。

さらに、調整後EPSは2.29ドルと前年同期比9.6%増を記録し、営業キャッシュフローは22.4%増の16億ドルと極めて良好な推移を見せた。フリーキャッシュフローも15億7,000万ドルに達し、堅実な資金創出力を維持している点も特筆に値する。財務面では盤石な基盤を築いているにもかかわらず、2025年に入ってからの株価は約12%下落し、年初来でも8.6%の下落を記録している。

この株価調整は、市場全体のセンチメント悪化や、AI特化型人員削減への短期的な不安感が背景にある可能性がある。PERは41.31倍、PSRは9.62倍と依然高水準にあるが、過去5年平均と比較すれば割安感も生じつつある。投資家心理と財務実態のギャップが広がる中で、AIとクラウド戦略の進捗と、それが収益成長にどう結びつくかが中長期の評価軸となるだろう。

アナリストの強気評価とAI設計ツールへの期待 成長加速の条件とは

Autodeskの第4四半期決算を受け、DA Davidsonは目標株価を285ドルに引き上げるなど、複数の証券会社が目標株価を見直す動きが見られる。特に「Autodesk Construction Cloud」をはじめとするクラウドサービス群の成長性に着目し、AI設計ツールとの連携強化による競争優位性の向上を評価する声が目立っている。

26人のカバレッジアナリストのうち、18人が「強気買い」、1人が「やや買い」と評価を引き上げており、平均目標株価は338.31ドル、最高目標株価は400ドルと、現在株価から最大50%近い上昇余地があるとの見方も示されている。一方で、2026会計年度の売上高見通しは68億9,500万ドル〜69億6,500万ドル、非GAAPベースEPSは9.34ドル〜9.67ドルと堅調な伸びを想定しているが、マクロ経済環境や競争激化への警戒感も根強い。

AI主導の設計支援ツールは、建設・エンジニアリング領域での設計効率化や品質向上に不可欠な存在へと進化する可能性があるが、その競争優位性を確立するためには、AI技術の実用性向上と、エンドユーザーへの付加価値提示が不可欠である。リストラによる効率化が投資余力の確保につながり、技術革新と顧客獲得の好循環を形成できるかが、成長軌道への分岐点となる。


Source: Barchart.com