Appleは、新型iPadを発表したが、その進化は限定的である。従来のA13 BionicからA16 Bionicへとアップグレードされたが、Appleが推進するAIプラットフォーム「Apple Intelligence」には非対応となった。これにより、最新のAI機能を期待していたユーザーには物足りない内容となる可能性がある。

スペック面では、処理速度が約30%向上し、ストレージは最低128GBに倍増。従来の64GBモデルの容量不足問題を解消した点は評価できる。しかし、デザインや機能面での大幅な刷新は見られず、価格は349ドル(約52,000円)からと据え置かれた。

本モデルは3月12日より出荷開始予定。AppleがAI機能を搭載しない選択をした背景には、エントリーモデルのコスト調整が関係している可能性もある。今後、Appleのタブレット戦略がどのように進化していくのか注目される。

A16 Bionic搭載で処理性能が向上 ストレージ倍増の意義とは

Appleの新型iPadは、A16 Bionicチップを搭載し、従来モデルに比べて処理能力が約30%向上した。さらに、最大パフォーマンスは50%向上しており、動画編集やゲームプレイなど負荷の高い作業においてスムーズな動作が期待される。これにより、学習用途やクリエイティブ用途での実用性が向上し、エントリーモデルでありながら高いパフォーマンスを実現している。

また、ストレージ容量は従来の64GBから最低128GBへと倍増された。これまでのエントリーモデルでは、OSのアップデートや複数のアプリをインストールすると、すぐに容量不足に陥ることが多かった。特に、動画編集アプリや高解像度の写真を扱うユーザーにとっては、64GBでは不十分だった。この点を改善したことで、より幅広いユーザー層がストレスなく使用できる仕様となった。

しかし、デザインやディスプレイの仕様には大きな変更がないため、すでに第10世代のiPadを所有しているユーザーにとっては、買い替えのメリットが少ないと感じる可能性もある。Appleは価格を据え置いたまま、ストレージ増強とチップのアップグレードを実施したが、それがどれほどの価値を持つのかは、利用用途によって評価が分かれるだろう。

AI機能非対応の背景 Appleのタブレット戦略との関連

今回のiPadでは、Appleが推進するAIプラットフォーム「Apple Intelligence」は搭載されなかった。M3チップを搭載した新型iPad Airとは異なり、A16 BionicチップではAI関連の最適化がなされていないことがその要因と考えられる。これにより、音声認識の高度化や生成AIを活用した機能を求めるユーザーにとっては、選択肢として魅力が薄れる可能性がある。

AppleがAI機能をエントリーモデルに導入しなかった理由の一つとして、コストの最適化が挙げられる。エントリーモデルは価格競争の影響を受けやすく、AI機能を搭載すれば製造コストが上昇し、価格据え置きが難しくなる。Appleは、エントリーモデルをより多くのユーザーに提供するために、AI機能を省略する判断を下した可能性がある。

ただし、今後のAppleの戦略次第では、エントリーモデルにもAI機能を搭載する可能性は否定できない。近年、スマートデバイスのAI活用は急速に進んでおり、競合メーカーもAI機能を強化した製品を投入している。AppleがAIをどのようにエントリーモデルへ展開していくのか、その動向が注目される。

価格と市場動向 iPadの立ち位置はどう変わるのか

新型iPadは、Wi-Fiモデルが349ドル(約52,000円)からと、第10世代モデルと同価格で提供される。カラーはブルー、ピンク、イエロー、シルバーの4色展開となっており、デザイン面では従来とほぼ変わらない。予約受付はすでに開始されており、3月12日から出荷が開始される予定である。

この価格設定は、Androidタブレットとの競争を見据えたものと考えられる。近年、Androidタブレット市場では、ミドルレンジクラスの製品が充実し、価格と性能のバランスが取れたモデルが増えている。AppleはエントリーモデルのiPadを同価格帯に据えることで、市場での競争力を維持しようとしている可能性がある。

しかし、AI機能の非対応やデザインの変化がほぼない点を考慮すると、既存ユーザーの買い替え需要をどこまで喚起できるかは未知数だ。AppleはiPadシリーズ全体の位置づけを見直しながら、今後どのような形でエントリーモデルを強化していくのかが注目される。

Source:BGR