Appleは3月に新型iPad 11を発表したが、同モデルにはApple Intelligenceが搭載されないことが明らかとなった。エントリーモデルであるiPad 11にはA16チップが採用されているが、Apple Intelligenceの動作に必要な8GBのRAMを満たしておらず、Writing ToolsやGenmoji、強化されたSiriといった機能が利用できない。

Appleはこれまでもソフトウェア機能を特定モデルで制限することがあったが、AI機能の強化を進める中での今回の決定は注目を集める。iPad 11の価格は349ドルからで、ストレージは前世代の2倍となる128GBに増強された。予約受付は開始されており、正式な発売日は3月12日に設定されている。

Apple Intelligence非対応の背景 A16チップとメモリ制限の影響

Appleの新型iPad 11にはA16チップが採用されているが、Apple Intelligenceの機能を利用することはできない。Apple Intelligenceは、生成AIを活用したWriting ToolsやGenmoji、強化されたSiriといった機能を提供するが、これらの動作には最低8GBのRAMが必要とされている。

iPad 11はA16チップを搭載しているものの、メモリ容量は6GBにとどまり、この要件を満たしていないことが最大の要因である。A16チップはiPhone 14 Proシリーズで初めて導入され、iPhone 15およびiPhone 15 Plusにも採用された。しかし、Apple Intelligenceの対象デバイスはA17 ProまたはM1以降のチップを搭載した機種に限定されている。

AppleがエントリーモデルのiPadに対し、特定の機能を制限することは過去にもあったが、今回はAIを活用した新機能が対象となることで、ユーザー体験に大きな影響を与える可能性がある。Appleはエントリーモデルと上位モデルの差別化を図るため、チップ性能やメモリ容量によってソフトウェア機能の制限を設けることが一般的である。

例えば、以前のStage Managerの制限もこの戦略の一環と考えられる。Apple Intelligenceが今後のiPadシリーズでどのように展開されるかは不透明だが、A16チップ搭載のiPad 11が対象外となったことで、今後のAI機能の展開に対する方針が一部見えてきたといえる。

Appleの販売戦略とエントリーモデルの役割

Appleは今回、新型iPad 11を発表する際にイベントを実施せず、公式オンラインストア上で静かにリリースする形をとった。これは、エントリーモデルであるiPad 11が最先端の技術革新を前面に押し出した製品ではなく、価格と性能のバランスを重視した製品であることを示している。

価格は349ドルからと据え置かれたが、ストレージ容量が前世代の2倍となる128GBに増強され、コストパフォーマンスが向上している。AppleはエントリーモデルのiPadを、多くのユーザーが手軽に購入できる入門機として位置づけている。特に教育市場や企業向けの一括導入において、この価格帯のモデルは重要な役割を果たす。

Apple Intelligenceのような高度なAI機能は、パフォーマンスの高いチップと十分なメモリを持つデバイスでの利用が前提となるため、エントリーモデルであるiPad 11では対応が見送られた可能性が高い。Appleは過去にも、エントリーモデルと上位モデルで機能差を明確にする戦略を採用してきた。

例えば、M1チップを搭載したiPad Airが登場した際には、従来のiPadとの性能差が際立つ形となった。今回のiPad 11も、Apple Intelligence非対応であることが明確にされたことで、上位モデルとの差別化がより一層強調されたといえる。価格を抑えながらも一定の性能向上を果たしたiPad 11は、Appleの市場戦略の中で引き続き重要な役割を担うことになるだろう。

Source:9to5Mac