2025年、電気自動車市場を取り巻く環境に大きな変化が生じている。3月4日、テスラ株はカナダ・メキシコに対する関税引き上げの影響を警戒し下落した。バンク・オブ・アメリカのジョン・マーフィー氏は、トランプ前大統領の関税政策が北米生産のサプライチェーンに混乱をもたらし、新型コロナ禍に匹敵する供給ショックを引き起こす可能性を示唆した。

加えて、欧州での生産鈍化や競合によるシェア侵食も重なり、テスラの業績見通しには不透明感が強まる。実際、1月には年間納車台数が初の前年割れを記録し、第4四半期売上も市場予想を10億ドル以上下回った。こうした背景からマーフィー氏はテスラの目標株価を380ドルへと引き下げたが、それでも現在水準からの上昇余地は40%以上とされ、依然として強気な評価も見られる。

テスラ株は年初来高値から約40%下落しており、市場心理の悪化は避けられない状況にある。一方で、平均目標株価は352ドルと現在の株価を大きく上回っており、関税政策や競争環境の行方が今後の株価を左右する構図となっている。



トランプ関税による北米生産への影響とサプライチェーンへの波及

2025年3月4日、テスラ株はカナダおよびメキシコに対する新たな関税措置を受け、大きく下落した。バンク・オブ・アメリカのジョン・マーフィー氏は、関税引き上げにより北米でのテスラの生産コストが上昇し、調達ルートにも支障をきたすと警鐘を鳴らす。特に、車両組み立てに必要な部品や原材料の多くが北米域内で調達されているため、関税によるコスト増加は避けられない構造となっている。

さらに、関税強化によって一部部材の輸入遅延や代替調達先の確保に時間を要する可能性がある点も懸念材料とされる。マーフィー氏は、こうした状況が2020年の新型コロナ禍におけるサプライチェーンの混乱と類似しており、「供給ショック」と呼べる事態につながる可能性を指摘した。供給不安は生産計画の見直しや納期遅延につながり、販売計画にも影響を与える構図が浮かび上がる。

北米市場においてはテスラの生産基盤が既に整っているものの、部品の相当部分はカナダやメキシコに依存しており、現地調達だけでは対応が難しいことも事実である。関税政策の行方次第では、テスラのみならず北米全体のEV生産体制に広範な影響が及ぶ可能性がある。長期的には、テスラがサプライチェーンの再構築や現地生産比率の見直しを迫られる局面も想定され、戦略転換の必要性が高まることは避けられない。

欧州生産の鈍化と競合による市場シェア低下が業績を圧迫

テスラは欧州市場においても厳しい局面に直面している。低価格帯モデルへの需要シフトが進む中、欧州工場の生産ペースは低下傾向にあり、最新の生産計画に対する不透明感が増している。さらに、中国メーカーBYDを筆頭とする競合各社が積極的に市場を攻めており、価格競争の激化がテスラの販売減速につながっていることが明らかになっている。

1月にはテスラの年間納車台数が初めて前年実績を下回り、市場関係者の間では成長鈍化への警戒感が広がった。加えて、2024年第4四半期の売上高が市場予想を10億ドル以上下回ったことも、テスラの業績不安に拍車をかける要因となった。欧州での生産計画の修正や価格戦略の見直しが不可避となる一方、低価格モデル投入を巡る情報発信の遅れが消費者心理に悪影響を及ぼしている点も無視できない。

こうした状況下において、テスラがどのように欧州戦略を立て直すかが問われる局面となる。単なる価格引き下げだけではなく、生産効率の向上や現地メーカーとの協業といった新たな対応策を模索する必要もある。欧州でのブランド力維持とシェア確保には、価格競争に埋没しない独自の付加価値戦略を構築できるかが鍵を握る。

市場心理の悪化と目標株価引き下げに見る今後の見通し

テスラ株は2025年3月時点で年初来高値から約40%の下落を記録している。関税問題や欧州での生産減速に加え、消費者の買い控え傾向も強まる中で、市場心理は徐々に悪化しつつある。バンク・オブ・アメリカのジョン・マーフィー氏は、こうした状況を踏まえ、テスラの目標株価を従来から110ドル引き下げ、380ドルとした。

一方、現行株価との比較では依然として40%以上の上昇余地があるとされ、テスラに対する評価は決して悲観一色ではない。ただし、この上昇余地はあくまでも事業環境が大きく悪化しないことを前提とするものであり、関税問題の長期化や競合のさらなる攻勢が続いた場合には、目標株価の再引き下げも現実味を帯びる。

特に、北米生産への影響度合いが読みにくい状況下では、関税政策が短期的な株価変動要因となる可能性が高い。テスラ自身も供給網の再編や価格戦略の見直しを迫られ、短期的な収益圧迫を覚悟する必要がある。中長期的には、EV市場全体の競争構造や政策動向を見据えた柔軟な経営判断が求められる局面にある。


Source: Barchart