Nvidia、Apple、Eli Lillyの3社が、AI技術や医薬品の開発において新たな局面を迎えている。NvidiaはAI向け半導体の需要拡大に応え、データセンター事業を過去最高の売上へと押し上げた。しかし、市場の期待値が過度に高まり、株価は不安定な推移を見せている。
Appleは米国内で5000億ドルの投資を発表し、半導体やAI技術の研究開発を強化。中国依存を低減し、安定した供給網の確立を目指す。一方、Eli Lillyは250億ドルを投じ、糖尿病・肥満治療薬の供給を拡大。米国市場を中心に生産体制の強化を図るが、規制リスクにも直面している。
このような巨額投資は、各業界の競争構造を変える可能性を秘めている。市場はこれらの動きをどのように評価するのか、今後の展開が注目される。
Nvidiaの成長と市場の評価ギャップ

NvidiaはAI向け半導体市場を牽引し、2025年初頭の決算では売上393億ドル、前年同期比78%増と驚異的な成長を示した。特にデータセンター事業は前年比93%増の356億ドルに達し、過去最高を記録している。AIの演算需要が高まる中、同社のBlackwellチップの売上も110億ドルに達し、成長の主要要因となっている。しかし、ゲーム事業は前年比11%減と苦戦し、事業全体の構造が変化している。
市場ではNvidiaの業績を評価する声がある一方、株価のボラティリティが顕著になっている。年初来で22%の下落を記録し、特に「マグニフィセント7」と呼ばれる主要ハイテク株が軒並み調整局面に入っていることが影響を与えている。市場の期待が高まりすぎた結果、短期的な決算の良し悪しが株価の急変動を引き起こしている。
ジェンセン・ファンCEOはAIの計算需要の継続的な増加を強調するが、市場は成長の持続性を慎重に見極めようとしている。このように、Nvidiaは技術的優位性を維持しつつも、市場の期待とのギャップを埋めることが求められている。成長の勢いが続くかどうかは、データセンター事業の拡大と、新たな半導体技術の進化にかかっている。
Appleの5000億ドル投資とAI戦略
Appleは今後4年間で5000億ドルを投資し、米国内の半導体やAI技術の研究開発を強化する方針を打ち出した。これは単なる設備投資ではなく、長年指摘されてきた中国依存の軽減、供給網の安定化を目的とした戦略的な動きである。半導体技術の進展はAIの発展と直結しており、Appleがこの分野に本格参入することで、競争環境が変化する可能性がある。
AppleはこれまでAI分野での影響力を前面に押し出してこなかった。しかし、最近の市場動向を見ると、AIはスマートフォンやPCにおいて不可欠な要素となっており、Appleも独自の技術開発を進める必要に迫られている。特に、半導体製造の国内回帰を進めることで、外部依存を減らしつつ競争優位性を確保する狙いがあると考えられる。
一方で、5000億ドルという巨額の投資が短期的に利益を生むわけではない。むしろ、これまで築き上げたビジネスモデルの転換が求められ、コスト構造にも影響を与える可能性がある。AppleがAIの進化とともにどのような製品戦略を打ち出すかが、今後の成長の鍵となる。
Eli Lillyの250億ドル投資と医薬品業界の変革
Eli Lillyは糖尿病や肥満治療薬の供給拡大を目的とし、250億ドルの投資を発表した。これにより米国内の生産能力を強化し、医薬品の安定供給を目指す。現在、同社はGLP-1受容体作動薬の市場で強い影響力を持ち、肥満治療薬市場の成長に伴い、さらなる需要拡大が期待されている。
一方で、Eli Lillyの事業には規制リスクも伴う。バイオテクノロジー分野における米中関係の緊張が続く中、「バイオセキュア法案」が可決されれば、中国のバイオテク企業との取引が制限される可能性がある。これにより、原材料の供給が滞るリスクや、価格の上昇が懸念される。
Eli Lillyの投資は、医薬品市場の成長を牽引する重要な要素であるが、規制環境の変化に対応しながら供給体制を整備する必要がある。競争が激化する医薬品市場において、同社が今後どのように市場シェアを拡大していくかが注目される。
Source:The Motley Fool