2025年3月4日、テスラ株が前日比4%超の下落を記録し、年初からの下落率は約3分の1に達した。背景には、カナダ・メキシコ向け関税の発効に伴う北米自動車メーカーへのリスク拡大と、中国市場での販売急減がある。2月の中国製テスラ車販売台数は前年比49.2%減と大幅に落ち込み、競争激化や需要鈍化が鮮明となった。

加えて、イーロン・マスク氏がトランプ政権下の新設機関「政府効率化省」での役割を巡り、ブランドイメージの悪化懸念も浮上。こうした状況を踏まえ、バンク・オブ・アメリカはテスラ株の目標株価を従来の490ドルから380ドルに引き下げた。一方、格付けは「中立」を維持している。

この動きは、モルガン・スタンレーがテスラを米国自動車セクターの「トップピック」に選出した翌日に発生しており、短期的な市場の反応が企業評価に与える影響が注視される。



テスラ株を取り巻く市場環境と最新動向 バンク・オブ・アメリカの目標株価引き下げの背景

2025年3月4日、テスラ株は前日比4%超の下落を記録し、年初からの下落率は約3分の1に達した。特に、同日発効したカナダおよびメキシコへの関税は、バンク・オブ・アメリカのアナリストが指摘する「北米の自動車メーカー全体にとっての重大なリスク」となっており、同社がテスラ株の目標株価を490ドルから380ドルへ引き下げる決定に至った要因の一つとされる。

この関税措置はトランプ政権下で導入されたもので、米国から両国へ輸出される自動車や関連部品に対する追加関税が含まれている。これにより、サプライチェーンの見直しやコスト増加が避けられず、価格競争力の低下につながる可能性がある。さらに、欧州市場ではテスラの販売台数減少が続き、2月の中国製車両の販売台数は前年比49.2%減という厳しい数字が報じられた。

こうした外部環境の悪化が直ちに業績を揺るがすとは限らないものの、販売台数減少は市場シェア低下に直結するため、中長期的なブランド価値や収益構造への影響は避けられないとの見方も生まれている。また、バンク・オブ・アメリカが格付けを「中立」に据え置きつつも、目標株価を引き下げる判断に至った背景には、外部環境だけでなく、テスラ自身の販売戦略や価格政策にも不透明感が漂う現状がある。

イーロン・マスクの政治的関与とブランドイメージへの影響 テスラに広がる風評リスク

テスラを率いるイーロン・マスクCEOは、トランプ政権下で新設された「政府効率化省(Department of Government Efficiency)」への関与が注目されている。マスク氏は過去にも政府政策への積極的な発言や関与を見せてきたが、政権との関係が色濃くなるにつれ、企業イメージへの影響が国内外で議論の的となっている。特に環境対策やグローバルなサステナビリティを掲げる欧州市場では、政府との関係性が消費者のブランド評価に直結する可能性が高い。

こうした背景から、テスラブランドはイノベーション企業としての独自性や先進性よりも、政治的立ち位置や企業倫理といった側面で評価される場面が増えている。これに加え、中国市場での販売不振が続く中、政府との関係を重視する中国の消費者や政府関係者に対して、マスク氏の言動が直接的な影響を与える構図も浮かび上がる。

事実として、バンク・オブ・アメリカは「ブランドイメージ悪化への懸念」を目標株価引き下げの要因として挙げており、企業トップの政治的発言が株価や企業評価に波及するリスクは無視できない。特に、グローバル企業として多様な価値観に支えられてきたテスラにとって、政治的な中立性や企業理念の一貫性が改めて問われる局面に直面していると言える。

モルガン・スタンレーの「トップピック」選定と株価下落 テスラの評価を巡る市場の温度差

テスラ株の下落は、モルガン・スタンレーが同社を米国自動車セクターの「トップピック」に選定した翌日に発生した。モルガン・スタンレーはテスラの長期的な成長力や技術優位性を評価し、「納車台数の予想下振れはテスラ全体のストーリーを覆すものではない」と強気の見解を示していた。しかし市場はこれに即応する形とはならず、関税発効や中国販売の急減、ブランドイメージ悪化といった短期的なリスク要因に強く反応した格好となっている。

この動きは、テスラの事業構造が単なる自動車メーカーに留まらず、エネルギー事業やAI技術開発といった多角化を進める中で、各事業への期待値と実際の販売動向とのギャップが市場評価に複雑に影響していることを示している。特に、EV市場全体が成熟期に差し掛かる中で、テスラへの評価が単なる成長株から、安定的な収益を生む企業へと変化する過渡期に入っている可能性もある。

モルガン・スタンレーの選定理由と、バンク・オブ・アメリカによる目標株価引き下げの間には、短期的視点と長期的視点のコントラストが浮かび上がる。市場は、テスラの成長シナリオを引き続き期待しつつも、直近の販売データや地政学的リスクに神経をとがらせており、評価の二極化が今後さらに鮮明になる可能性も否定できない。


Source: Investopedia