QualcommがPC向けに開発を進める次世代Snapdragon Xチップが、従来のSnapdragon X Eliteを大幅に超える18基のOryon V3 CPUコアを搭載する可能性が浮上した。これは前世代の12コアと比較して50%の増加となり、シングルスレッドおよびマルチスレッドの処理性能が強化されると見られている。

また、同チップは新たなシステム・イン・パッケージ(SiP)設計を採用し、メモリやストレージを統合することでパフォーマンス向上と省スペース化を実現する狙いがある。さらに、デスクトップ市場への展開も視野に入れ、オールインワン水冷クーラーを用いたテストが進行中とされる。

この動向は、Qualcommが従来のモバイル分野にとどまらず、ハイエンドPC市場でAMDやIntelに真っ向から挑む意欲の表れといえる。ブランド名も「Ultra Premium」への変更が示唆されるなど、PC業界におけるQualcommの戦略転換が注目される。

Qualcommの次世代Snapdragon Xチップ 18コアの詳細と技術的進化

Qualcommが開発中のSnapdragon X2は、前世代の12コアから18コアへと大幅に進化する。このOryon V3アーキテクチャは、シングルスレッドおよびマルチスレッドの処理能力を強化し、特にマルチタスク処理や高負荷のアプリケーション実行において、性能の向上が期待される。

さらに、このチップは新たなシステム・イン・パッケージ(SiP)設計を採用し、メモリやストレージを一体化することで、通信レイテンシの低減と消費電力の最適化を図る。これにより、モバイルプロセッサとしての特性を維持しながらも、PC向けとしての競争力を高める狙いがある。

Qualcommはこのチップに48GBのSK hynix製RAMと1TBのSSDを搭載する可能性が指摘されており、PC市場において従来のモバイルアーキテクチャの枠を超えたパフォーマンスを実現する意向とみられる。このような進化は、Snapdragon Xシリーズが高性能PC向け市場で本格的な競争に参入するための布石となるだろう。

デスクトップ市場への進出とAMD・Intelへの影響

Qualcommは従来、モバイル市場を中心に展開してきたが、今回の次世代Snapdragon Xチップでは、デスクトップPC市場への進出も視野に入れている。リーク情報によれば、同社はSC8480XPチップを液体クーラーと共にテストしており、これはデスクトップ向けの仕様に適した冷却機構と考えられる。

現在のPC市場では、AMDのRyzenシリーズやIntelのCoreシリーズが主流を占めているが、QualcommがARMベースの高性能チップを投入することで、新たな選択肢が生まれる可能性がある。

特に、電力効率とパフォーマンスのバランスを強みとするQualcommの設計は、バッテリー駆動が求められるモバイルワークステーションや、省電力ながら高性能を求めるユーザーにとって魅力的な選択肢となるだろう。

一方で、デスクトップ市場においては、x86アーキテクチャが依然として主流であり、ソフトウェアの最適化や互換性が課題となる可能性がある。そのため、Qualcommがこの市場で成功を収めるには、性能面だけでなく、ソフトウェアエコシステムの整備やパートナー企業との連携が鍵となると考えられる。

Snapdragon Xのブランド戦略と今後の展望

Qualcommは、次世代Snapdragon Xチップのブランド名として「Ultra Premium」という新名称を採用する可能性がある。現在の「Elite」ブランドを維持するのか、新たなブランドへ移行するのかは明らかではないが、この動きはPC市場における同社の戦略的な変化を示唆している。

また、Snapdragon Xシリーズがターゲットとする市場は、従来のモバイルPCにとどまらず、ハイエンドPCやデスクトップ領域へと広がる可能性がある。特に、ARMベースのチップが次世代PC市場でどの程度のシェアを獲得できるかは、今後の業界動向を左右する重要な要素となる。

Qualcommは、Snapdragon X2の登場により、AMDやIntelが長年築いてきたPC市場の勢力図に変化をもたらすことを狙っている。ただし、市場の受け入れ方やソフトウェア互換性の課題を克服することが、今後の成功の鍵となるだろう。

Source:TechSpot