Intelは、「Assured Supply Chain for Enterprises」という新プログラムを発表し、企業向けプロセッサの供給経路を証明する仕組みを導入する。対象となるのは、「Intel Core Ultra 200V」「200U」「200H」「200S」「200HX」などの商用向け新チップ群で、2025年後半から2026年初頭にかけて、DellやHP、Lenovoなどのパートナー企業を通じて展開される予定である。

本プログラムでは、チップが製造拠点から顧客に届くまでの経路や通過した国を記録・証明する仕組みを構築し、特定の商用チップには「A」の型番が付与される。すべての製品が対象ではなく、選定された一部のチップのみに限定される見通しだ。

背景には、企業がサプライチェーンの透明性確保や、特定国の政府機関による安全性確認ニーズへの対応がある可能性が考えられる。Intelは「特定の製造拠点を通過する専用ルート」を活用し、デジタル証明による信頼性向上を図るとしているが、具体的な運用体制や選定基準には触れていない。


Intelの新プログラムが実現する企業向けプロセッサの透明な供給経路証明

Intelが発表した「Assured Supply Chain for Enterprises(企業向け保証サプライチェーン)」は、企業向けプロセッサの供給経路を証明する新プログラムである。対象となるのは、「Intel Core Ultra 200V」「200U」「200H」「200S」「200HX」など最新の商用向けチップ群であり、2025年後半から2026年初頭にかけてDell、HP、Lenovoといった主要パートナー企業を通じて市場投入される計画が明らかになっている。

このプログラムの核心は、各プロセッサが製造から最終顧客へ届くまでの供給経路を追跡・証明する仕組みにある。特定の製造拠点を通過する専用ルートを活用し、どの国を経由したのかをデジタル上で証明可能にすることで、サプライチェーン上の透明性確保を目的としている。対象チップには型番末尾に「A」が付与される仕組みも採用し、対象製品と非対象製品が識別可能な設計となっている。

Intelはこの取り組みの背景や目的を深く掘り下げて説明していないが、特定国の政府や企業が求めるセキュリティ要件に対応するための施策として捉えられる可能性もある。特に、チップの製造国や経由地の透明性確保は、サプライチェーンリスクへの対策として世界的な関心を集める分野でもあり、Intelは先行的に取り組む姿勢を示したといえる。

Assured Supply Chainに見る地政学リスク対応の一環としての戦略的意図

Intelが新たに導入する「Assured Supply Chain(ASC)」プログラムは、単なる供給履歴証明にとどまらず、地政学リスクへの対応策としての側面も有している可能性がある。特定国の政府機関が半導体製品の供給経路や製造履歴を厳格に確認する動きが強まる中、製造拠点の明確化と移送経路の可視化は、国際取引における信頼性確保の要素となり得るからである。

加えて、半導体産業全体がサプライチェーンの多層化と再構築を迫られる中、製造拠点や物流ルートをデジタル証明する仕組みは、今後のサプライチェーンマネジメントにも影響を与える可能性がある。特に、Intelがグローバル展開する製造ネットワーク内でどの工場を経由したのか、あるいは特定の地域を通過したかという情報は、地政学的リスクを考慮する企業や政府にとって重要な指標となる。

一方で、こうした仕組みが全商用チップに適用されるわけではなく、「選ばれた一部のチップ」に限定される点は、Intelの事業戦略とも連動する可能性がある。特定の高付加価値製品や特定市場向け製品に限定することで、サプライチェーンの透明性向上とコストバランスの両立を狙う構えがうかがえる。今後、各国の半導体政策や安全保障政策に応じて、このプログラムの適用範囲が柔軟に変更される余地も残されている。

新型プロセッサ群とvProプラットフォームに見る企業向けPC市場への布石

今回のプログラム発表に合わせてIntelが披露した「Intel Core Ultra 200V」「200U」「200H」「200S」「200HX」は、いずれも企業向けPC市場を強く意識した最新プロセッサ群である。これらのチップは、すでに一般消費者向けに提供されている製品と基本設計を共有しつつ、vProプラットフォームへの対応を前提とした点が特徴となっている。

vProプラットフォーム自体の新機能に関する発表は今回なかったものの、企業向けPC市場ではデバイス管理やセキュリティ強化が重要視される傾向が続いており、Intelはこうした市場ニーズを背景に、プロセッサ単体の性能だけでなく、サプライチェーン証明機能も含めた包括的な信頼性強化を図る狙いとみられる。

また、「Lunar Lake」や「Arrow Lake」といった最新アーキテクチャの採用による性能向上と、省電力性能強化も視野に入れており、次世代企業向けノートPC市場への先手を打つ意図も感じられる。企業向け市場特有のニーズに応えつつ、半導体の信頼性証明という新しい付加価値を訴求することで、競争環境における差別化を狙うIntelの戦略が垣間見える。


Source:PCWorld