Super Micro Computer(ティッカー:SMCI)が2024年の会計不祥事とナスダック上場廃止危機を乗り越え、業績回復により急騰を見せたものの、その後の株価は再び下落局面に入っている。2月に提出した未提出報告書によって一時的に投資家心理は改善したが、直近ではCEOチャールズ・リャンをはじめとする経営陣が相次いで株式を売却した事実が波紋を広げている。

リャン氏は46,293株を平均50.17ドルで売却し、約232万ドルを確保。保有比率の減少は0.07%にとどまるが、オペレーション担当上級副社長ジョージ・カオ氏が保有株の78%超を売却したほか、取締役ロバート・L・ブレア氏は全保有株を手放すなど、経営陣の売却行動に温度差が見られる。

AI関連株として割安感が指摘される一方、Hindenburg Researchの会計操作告発が残す不信感、業績予想の下方修正リスク、そして上場維持を巡る不透明感が払拭されない状況にあり、短期的な株価の先行きは依然不安定な状態が続いている。



Super Micro Computerの業績回復と上場廃止危機の回避に至る経緯

Super Micro Computer(SMCI)は、2024年初頭にHindenburg Researchによる「会計操作」疑惑の告発を受け、株価が急落。監査法人EYの辞任と10-Qおよび10-K報告書の提出遅延が追い打ちとなり、ナスダック上場廃止のリスクが高まった。しかし2024会計年度の年次報告と2025会計年度第1・第2四半期の四半期報告を2025年2月25日に提出したことで、上場廃止の危機は回避された。

2024年度通期の売上は149.9億ドルと前年比で倍増し、純利益も11.5億ドルに達するなど、業績面では大幅な成長を記録した。特に2025年度第1四半期は売上高59.4億ドル、前年同期比180%増と、AI関連需要の拡大が強く業績を押し上げた。しかし第2四半期では売上高が56.8億ドルとやや減少し、粗利益率も11.8%へ低下。業績推移は一貫して上昇基調とは言えない状況にある。

こうした事実は、AIサーバー関連市場の高成長を追い風としつつも、同社が依然として外部要因に左右されやすい脆弱な立ち位置にあることを示唆する。特に会計不祥事の余波が完全に払拭されておらず、ガバナンスへの信頼回復が道半ばである点は、投資判断において引き続き重要な視点となるだろう。

CEOチャールズ・リャンをはじめとする経営陣による株式売却とその背景

2025年2月以降、Super Micro Computerの株価は未提出報告書の提出による一時的な回復を経て再び不安定な推移を見せている。その最中に浮上したのが、CEOチャールズ・リャンを含む経営陣による株式売却という事実である。リャン氏は46,293株を平均50.17ドルで売却し、売却総額は232万ドルに及んだが、個人の保有比率は0.07%の減少にとどまり、経営への直接的な影響は限定的と見られている。

一方で、オペレーション担当上級副社長ジョージ・カオは71,720株を50.48ドルで売却し、売却比率は78.67%に達するなど、より踏み込んだ売却行動を取った。さらに取締役ロバート・L・ブレアは保有する全株19,460株を売却し、合計82万8,557ドルを手にした。売却規模や保有比率の変化は各役員ごとに大きな差が見られ、背景には個人資産の管理方針や税務対策など個別事情が絡んでいる可能性もある。

ただ、こうした役員売却は、短期的な株価下落要因となることが多く、投資家の不安心理を誘発する材料にもなり得る。特に不祥事後の信頼回復が途上にある企業においては、役員売却が経営の先行きに対する不信感へと直結するリスクも否定できず、単なる利益確定の動きとは一概に割り切れない側面も残る。

AI関連銘柄としての割安感と業績下振れリスクの両面から見る投資判断

Super Micro Computerの現在の株価水準は、AIおよびデータセンター関連銘柄の中でも依然として割安との評価が多い。特に2026年度の売上目標として400億ドルを掲げる成長戦略は、AIサーバー市場の長期的拡大を見据えた強気な姿勢を示している。一方、2025年度の売上予想235億ドル〜250億ドルは、アナリスト予想を下回る水準であり、成長期待と実績の間に乖離が見られる点は注意が必要である。

また、Hindenburg Researchによる会計操作告発の余波は完全には払拭されておらず、監査法人EYの辞任や報告書提出遅延といった一連の問題が、ガバナンス面への不安を残している。企業体質への信頼が揺らいでいる中で、業績目標達成の確度を過信することは危うく、市場全体の調整局面においては他の成長銘柄と比べても下落リスクが高まる可能性がある。

アナリストによる目標株価の平均は57.46ドルと、現状株価から47%程度の上昇余地が見込まれる一方で、投資判断としては「ホールド(中立)」評価が目立つ。成長期待と不透明なリスクが交錯する中、短期的な株価変動に一喜一憂せず、中長期の企業価値とガバナンス改善の進展を冷静に見極める姿勢が求められる。

Source:Barchart.com