ウォーレン・バフェットは、バークシャー・ハサウェイを率いて市場平均を大きく超える成果を生み出してきた。その手腕と哲学は投資界に多大な影響を与え続けており、彼が選ぶ企業や条件に注目が集まる。
今年の株主向け書簡では、アメリカン・エキスプレス、コカ・コーラ、アップル、ムーディーズといった保有銘柄を「非常に大規模で収益性が高く、誰もが知る企業」と位置づけ、これらに共通する特徴こそが「素晴らしい企業」の条件とした。
さらに、純有形資本に対する高いリターンを重要視する姿勢も強調しており、単なる割安株ではなく、適正な価格で傑出した企業を所有するという戦略を改めて提示した。
バフェットが示した「素晴らしい企業」の最新条件 アメリカン・エキスプレスやアップルも名を連ねる理由

ウォーレン・バフェットが2025年の株主向け書簡で明らかにした「素晴らしい企業」の条件には、これまでの価値投資に基づく割安株のイメージを覆す要素が含まれている。バフェットは割安であること自体には重きを置かず、あくまで「大規模で収益力が高く、社会的認知度が極めて高い企業」にこそ価値を見出す姿勢を強調した。この視点に基づき、アメリカン・エキスプレス、コカ・コーラ、アップル、ムーディーズといった企業を「素晴らしい企業」として例示している。
これら4社は、各業界で圧倒的なブランド力を持ち、長期にわたる安定した収益基盤を築いてきた企業である点が共通する。さらにバフェットは、「事業運営に必要な純有形資本に対して非常に高いリターンを確保している」という資本効率の高さを特筆事項として挙げた。こうした企業特性は、単なる利益率の高さや株価の割安感とは異なる視点から、持続的な競争優位性を見極めるバフェット独自の基準を反映していると言える。
これらの選定基準は、現代のグローバル経済において競争が激化する中でも揺るがない長期的な企業価値を重視する姿勢とも捉えられる。バフェットの投資哲学は、単年の株価変動ではなく、企業そのものが生み出すキャッシュフローや競争優位性を真に重視している点で、改めて投資家の注目を集めることになるだろう。
「割安株」ではなく「適正価格の優良企業」へ バフェットの投資哲学が映す時代背景
バフェットが長年信奉してきた「割安株投資」は、バークシャー・ハサウェイの成長過程において重要な役割を果たしてきたが、近年の発言からは必ずしも絶対条件ではなくなっていることが読み取れる。むしろ近年は、割安であるか否か以上に「事業そのものの質」を優先する方針を明確にしており、その視点に立った「適正価格での購入」を重視している。
バフェット自身が例として挙げたホープダイヤモンドの比喩は、安価な企業を大量に抱えるよりも、たとえ一定の価格を支払ってでも傑出した企業を一部でも所有する方がはるかに価値があるという考えを象徴している。実際、アップルやアメリカン・エキスプレス、コカ・コーラなど、彼が「素晴らしい企業」と評する企業群は、株価水準の安さよりも競争優位性の強固さや収益力の高さに裏付けられている。
こうした変化は、グローバル市場全体の成長鈍化や、事業モデルそのものに求められる安定性・継続性が重要度を増している時代背景と無関係ではない。バフェットが純有形資本に対するリターンを重視する理由も、資本効率の高い企業こそが将来の不確実性に対する耐性を持つという信念が反映されている可能性がある。
バフェットの企業選定基準から見えるグレッグ・エイベルへの継承戦略
バークシャー・ハサウェイの次期CEOとして指名されているグレッグ・エイベルへのバフェットの信頼は厚く、最近の発言でもその重要性に触れている。エイベルは既に重要な投資判断の一部を担っており、バフェットの投資哲学を受け継ぎつつも、エイベル自身の視点が加わることでバークシャーの投資戦略に徐々に変化が生じる可能性もある。
バフェットが「素晴らしい企業」の条件として挙げた「大規模で収益力が高く、純有形資本に対するリターンが高い」という基準は、単なる理論ではなく、エイベルと共に磨き上げてきた選定基準と考えられる。このため、エイベル体制へ移行後も、短期的なリターン追求より長期的な企業価値の見極めを重視する基本方針に変化はないとみられる。
その一方で、バフェット時代には見送られてきた新興企業への投資や、テクノロジー以外の新分野への関心など、エイベルの独自色が反映される余地はある。バフェットが何度も繰り返してきた「シンプルで理解しやすいビジネスモデルへの投資」が、次世代のバークシャーにどこまで踏襲されるか、今後の方針は引き続き注視すべきである。
Source:The Motley Fool