米サイバーセキュリティ大手のCrowdStrikeが2025年度第4四半期決算を発表し、売上高は前年比25%増の10億6000万ドル、1株当たり利益も市場予想を上回った。サブスクリプション収入や大型契約の獲得も堅調で、契約総額は前年比40%増の約60億ドルに達したが、翌3月5日の取引では株価が9%下落した。

下落要因となったのは、2026年度の業績ガイダンスが市場予想を大幅に下回った点に加え、新規ARR成長率が42%から23%へと鈍化したことにある。さらに、第1四半期には障害対応費用として7300万ドルを計上する見通しで、短期的なコスト増と成長鈍化への警戒感が広がった。

一方、Falcon Flexプログラムを軸としたプラットフォーム戦略やAI活用による営業効率向上など、長期成長を支える施策は着実に進んでいる。特に、1000万ドル超の大型契約が20件を超え、金融サービス分野への浸透も強化されるなど、同社の市場優位性を裏付ける材料は多い。



第4四半期の好調決算と株価下落をもたらした市場の反応

CrowdStrikeが発表した2025年度第4四半期決算は、売上高10億6000万ドル、前年比25%増と力強い成長を示した。サブスクリプション収入は前年同期比27%増の10億1000万ドルに達し、年間経常収益(ARR)も前年比23%増の42億4000万ドルを記録した。1株当たり利益(EPS)は1.03ドルで市場予想の0.86ドルを上回り、収益性も堅調であった。

しかし、2026年度の見通しが市場予想に届かず、決算発表翌日の3月5日には株価が9%急落した。特に、第1四半期の調整後EPS予想0.64〜0.66ドルは、市場予想の0.96ドルを大きく下回り、成長鈍化への懸念を一層強めた。加えて、新規ARR成長率が2024年度第1四半期の42%から2025年度第4四半期には23%へと低下した点も、市場の警戒感を招く要因となった。

サイバーセキュリティ市場では競争環境が厳しさを増しており、成長鈍化が同社固有の課題なのか、業界全体の成熟に伴う動きなのかを見極める必要がある。決算内容そのものは安定した事業基盤を示しているが、株価が示す市場の反応には、成長期待の修正や今後の事業リスクへの警戒感が色濃く反映されていると言える。


新規ARR成長鈍化と障害対応費用が示唆する事業環境の変化

CrowdStrikeの事業成長を象徴する指標である新規年間経常収益(ARR)は、2025年度第4四半期に2億2430万ドルを積み増し、通期ARRは42億4000万ドルに達した。ただ、ARR成長率自体は前年同期比23%増にとどまり、2024年度第1四半期の42%増から減速傾向が明確になっている。

加えて、第1四半期には障害対応に伴う特別費用として7300万ドルの現金支出を計上する計画が示された。システム障害がもたらした事業影響の詳細は明らかではないものの、セキュリティプラットフォームへの信頼維持や顧客離れ回避に向けた対応強化が求められる状況である。

サイバーセキュリティ市場は需要拡大が続くものの、新規案件獲得競争の激化や価格競争の影響は避けられない。ARR成長率の鈍化とコスト増は、これまでの急成長モデルの転換期を示唆する可能性があり、CrowdStrikeが継続的に高い収益性を維持するためには、顧客価値向上と効率的な事業運営を両立させる戦略の精緻化が不可欠となる。


成長継続への鍵となるFalcon Flexと金融サービス事業の拡大

成長鈍化への懸念が広がる中、CrowdStrikeの事業基盤を強化する施策として注目されるのが「Falcon Flexプログラム」である。同プログラムはプラットフォーム全体の採用拡大を狙いとしており、2024年第4四半期には6モジュール以上を導入する顧客が48%に達し、5モジュール以上の導入率は67%に達した。

また、2025年度に立ち上げた「CrowdStrike Financial Services(CFS)」は、立ち上げから短期間で1億4000万ドル超の契約を獲得し、金融業界向けの特化型ソリューションとして存在感を強めている。特に1000万ドル超の大型契約が20件を超えるなど、顧客基盤の拡大と単価引き上げにも寄与している。

サイバー攻撃の高度化と規制強化に対応するため、企業のセキュリティ投資は今後も高水準が維持される可能性がある。こうした需要を確実に捉えるためにも、プラットフォーム型の収益モデルと、業種特化型ソリューションの両輪による顧客接点強化が、成長維持のために重要な要素となる。


Source:Barchart.com