米電気自動車大手テスラがドイツ市場で大幅な販売減少に直面している。ドイツ道路交通局KBAの最新データによれば、先月のテスラ販売台数は前年同月比で75%以上減少し、同月のドイツEV市場全体の販売増加傾向とは対照的な結果となった。

テスラ株は年初来高値から35%以上下落しているが、モルガン・スタンレーのアダム・ジョナスは依然として2025年に向けて同銘柄を最重要推奨株と位置づける。自動運転技術やヒューマノイドロボット事業、さらにはエネルギー貯蔵ビジネスの成長が、今後の株価上昇の主要要因と見なされている。

同社の強気シナリオでは、ヒューマノイドロボット「オプティマス」が米国労働力の1%を担うごとに株価は100ドル上昇し、800ドル到達も視野に入る。販売不振が目立つ欧州市場とは対照的に、英国ではモデル3が依然として高い人気を維持しており、地域差が鮮明になっている。



ドイツ市場で75%超の販売減が示すテスラの欧州戦略への課題

ドイツ道路交通局(KBA)の最新統計によれば、テスラは2025年2月の販売台数が前年同月比で75%以上減少し、同国の電気自動車市場において極めて厳しい状況にあることが明らかとなった。同期間中、ドイツ全体のEV販売は増加傾向を示しており、テスラの販売急減は同社特有の要因によるものとみられている。

特にテスラはベルリン近郊のギガファクトリーを生産拠点として活用しながら、欧州市場での安定した供給体制を整えてきたが、価格競争の激化や補助金政策の変化に十分に対応できていない可能性が指摘される。加えて、ドイツ国内ではフォルクスワーゲンやBMWといった地場メーカーが新型EVを相次いで投入し、価格や充電インフラの利便性で競争優位を築いている点も無視できない。

一方、ドイツ市場の販売不振は必ずしも欧州全域を代表する傾向ではなく、英国ではモデル3がミニクーパーに次ぐ販売台数を記録するなど、国ごとの事情による差異も浮き彫りとなっている。テスラにとって欧州市場は依然として重要な成長ドライバーであるが、各国の政策動向や消費者嗜好に対するきめ細やかな対応が求められている。

モルガン・スタンレーが示す自動運転とヒューマノイドロボットが持つ中長期の事業機会

モルガン・スタンレーのシニアアナリスト、アダム・ジョナスは、テスラが直面する足元の販売不振を短期的な現象に過ぎないと捉え、2025年以降の同社成長ストーリーに大きな期待を寄せている。特に自動運転技術とヒューマノイドロボット「オプティマス」の商業展開が、今後の株価に大きな上昇余地をもたらす重要な要素と分析している。

ジョナスは、「オプティマス」が米国労働力の1%を担うごとにテスラ株が100ドル上昇する可能性を指摘し、同ロボットの普及が進めば強気シナリオとして800ドルの株価も視野に入ると見立てている。AI技術を核としたヒューマノイドロボットの活用は、製造業からサービス産業に至るまで幅広い領域で需要を生み出す潜在力を持つとされる。

自動運転車両の進化もまた、テスラの中長期的な競争力を左右する要素である。車両単体の販売ではなく、自動運転技術を核とした移動サービス全体のプラットフォーム戦略へと移行することで、新たな収益モデルを構築する余地もある。ただし、こうした先進技術の社会実装には規制面や安全基準のクリアが不可欠であり、実現時期には不透明な部分が残ることにも留意が必要である。

販売減少と株価下落が映すテスラの事業転換期に対する市場の温度差

テスラの年初来株価は高値から35%以上下落しており、販売台数の低迷と株価の調整が同時進行している現状が浮き彫りとなっている。1月には年間納車台数が初の前年比減少を記録するなど、成長路線に陰りが見える中、モルガン・スタンレーをはじめ一部の市場関係者はテスラを依然として最有望銘柄と位置づけている。

これは単なる自動車メーカーとしての評価ではなく、AIやロボティクスを中核に据えた多角化企業への移行を前提とした評価に他ならない。特に「オプティマス」をはじめとするヒューマノイドロボット事業や、エネルギー貯蔵ビジネスの成長余地が、将来的な企業価値の鍵を握るという見方が強い。

一方で、短期的な販売不振や競争環境の変化は見逃せない課題であり、EV市場自体の成熟と価格競争の激化がテスラのシェア拡大を阻む要因にもなり得る。事業モデルの変革を市場がどの程度織り込むか、テスラの未来像を巡る投資家心理は今後も大きく揺れ動くことが予想される。


Source:Barchart