イーサリアム開発者は、次期大型アップグレード「Pectra」に関連してセポリアテストネット上で発生したトランザクション停止問題を解消し、正常稼働へと復旧させた。原因はセポリア特有のカスタムデポジットコントラクトに起因しており、実行レイヤークライアントの対応不備が一因とされる。この事案は、2月に発生したホレスキーテストネットでの設定ミスに続く技術的トラブルであり、メインネット展開時のリスク低減に向けた対応強化が求められている。
こうした技術面の安定化に加え、暗号資産アナリストらはイーサリアム価格の回復に強い関心を示す。特に2,350ドルの重要ライン回復が鍵となり、パラレルチャネル内での上昇余地が広がるとの見方がある。またCMEギャップ埋めの動きや短期的なショートスクイーズが相場を押し上げる可能性も指摘される。
市場データでは、2,500ドル到達後の利確売りと2,200ドル付近での買い直しが交錯しつつ、3,500ドルのコストベースを持つ投資家が市場再参入している事実も判明。機関投資家の動きも活発化しており、イーサリアムを財務資産に組み入れる企業の事例が増加している。
セポリアで発生したPectra関連の不具合と開発者の対応プロセス

イーサリアムの次期大型アップグレード「Pectra」に関連する技術的問題が、2024年3月にセポリアテストネット上で発生した。問題の発端は、セポリアに特有のカスタムデポジットコントラクトにあり、これがトランザクション処理に不可欠なデータ出力形式に予期せぬ影響を及ぼした。実行レイヤーの複数のクライアントがこのデータ形式に適切に対応できず、一部クライアントがブロック内へのトランザクション取り込みを停止する事態へと発展した。
イーサリアム財団のプロトコルサポートリードを務めるティム・ベイコ氏は、セポリア特有の仕様が引き起こした不具合であり、メインネットとは異なる環境下で生じた事象であることを強調した。問題発覚後、開発者らは迅速に障害原因を特定し、バリデーターが使用するノードソフトウェアの修正版を緊急リリース。これによりトランザクション処理は短期間で正常化し、ネットワーク全体の安定運用が回復された。
この一連の対応プロセスは、テストネットという検証環境ならではの柔軟性と迅速対応力を示した一方、2月にホレスキーテストネットでも設定ミスによるチェーン分岐が発生していた事実と合わせ、Pectraアップグレードの本番適用時に類似の問題が発生しないためのプロセス強化が求められている。セポリアは検証環境であるものの、メインネットと一部仕様が異なる点が技術的リスクとして浮き彫りになった点は、今後のネットワーク運用において重要な教訓となる。
価格上昇への期待とCMEギャップ埋めに着目する市場の見方
イーサリアム価格の動向について、市場アナリストは今後の回復シナリオに注目している。Ali Charts氏は、イーサリアムが現在パラレルチャネルの下限に位置していることを強調し、重要水準である2,350ドルを突破すれば、3,000ドルから4,000ドルへと反発する可能性があると見ている。特に2,350ドル付近はテクニカル面でも重要な節目とされ、ここを基点とする動きに市場は高い関心を示している。
加えて、Ted氏が指摘するCMEギャップの存在も市場心理に影響を与えている。現時点で2,600ドル付近と3,000ドル以上にCMEギャップが確認されており、過去の傾向からこのギャップ埋めを目指す動きが短期的な価格押し上げ要因になる可能性がある。2024年初頭以降、イーサリアムはこのCMEギャップ埋めを繰り返してきた事実があり、今回も同様の動きとなるかが注視される。
こうした期待感が強まる一方で、現実の市場は依然として不安定要素を抱える。価格の上下動が激しい状況であり、投資家心理も短期的な動向に大きく左右されている。特にショートスクイーズの可能性が示唆される中、過度な楽観論に依存せず、テクニカル要因のみならず、Pectraアップグレード進捗やネットワーク安定性といったファンダメンタル要因にも注目する必要がある。
機関投資家の関心拡大とイーサリアム保有量の変動から見える資金動向
イーサリアムの価格動向が不安定化する中で、機関投資家を含む市場参加者の資金移動にも注目が集まる。Glassnodeのデータによれば、2024年2月から3月にかけてイーサリアム価格が2,500ドルまで急騰した際に、多くの投資家が利確の動きを見せた。その後、2,050ドルまで下落した場面で再び買いが入り、3月1日時点では2,200ドル付近で50万ETH以上が取得されたことが確認されている。
さらに、2,800ドル付近では約80万ETHが蓄積されるなど、価格帯ごとに異なる投資行動が読み取れる。特に3,500ドルをコストベースとする投資家層は2月時点で売却傾向を強めていたが、足元では市場に再参入し始めており、次なる価格上昇を見据えたポジション調整が行われている可能性がある。
こうした個人投資家に加え、ナスダック上場企業であるバイオネクサス・ジーン・ラボがイーサリアムを主要財務資産に位置づけるなど、機関投資家の関与も強まっている。イーサリアムのステーキング報酬やスケーラビリティ向上策が評価される一方で、価格変動リスクや技術的課題が依然として残るため、安定した資金流入を確保するには中長期的な信頼回復と透明性の高い情報開示が不可欠となる。
Source:CoinGape