NVIDIAが次世代ノートPC向けGPU「GeForce RTX 50シリーズ」の生産工程で、仕様上のROPs(Raster Operations Pipelines)不足が確認されたことが明らかになった。RTX 5090やRTX 5070 Tiに加え、RTX 5080でも同様の問題が判明しており、これに伴いノートPCメーカー各社は全数検査を強いられている。

ドイツのメディア「Heise」によると、アジア地域の生産拠点では従業員が連日深夜作業に追われており、検査作業の遅れが量産スケジュールに波及。3月下旬から4月にかけての予約受付開始にも影響を及ぼしているという。

NVIDIAは「標準的な手続き」との見解を示すが、2025年CESで初披露された新型ゲーミングノートPCの発売は不透明な状況が続いている。ROPs不足による3D性能低下リスクを抱える中、メーカー各社の対応がユーザー体験を左右する局面に入った。



NVIDIAが認めたROPs不足の実態とGeForce RTX 50シリーズノートPCへの波及

NVIDIAが次世代グラフィックスカード「GeForce RTX 50シリーズ」において、製造上の不具合としてROPs(Raster Operations Pipelines)不足の存在を認めた事実は、PC市場に少なからぬ影響を与えつつある。当初、デスクトップ向けのRTX 5090およびRTX 5070 Tiで0.5%という低確率ながら不良が確認され、その後Reddit上でRTX 5080のユーザーによる指摘が相次ぎ、NVIDIAはこのモデルにも同様の問題が生じていることを正式に認めるに至った。

これらの事態を受け、ノートPC向けのGeForce RTX 50シリーズにも同様のリスクが及ぶ可能性を危惧し、NVIDIAはノートPCメーカーに対し、既に生産済みの製品を含む全数検査を指示。特に、仕様上のROPs数と実際に有効なROPs数に齟齬がないか、詳細な検証作業が行われている。

ドイツのメディア「Heise」が伝えたところによれば、アジア地域の製造拠点では検査対応に追われる形で24時間体制の作業が続き、生産スケジュール全体に大きな影響を及ぼしている。検査作業の長期化に伴い、当初3月下旬に予定されていた予約受付の開始も4月以降へと延期され、各メーカーの計画修正は避けられない状況にある。

ROPs不足が性能へ及ぼす影響とNVIDIAの見解

ROPsはグラフィックスカードの最終的な描画処理を担う重要な要素であり、ROPs数の減少は特に3D描画やゲーミング性能に直接影響を及ぼす可能性が高い。仕様上のROPs数と実際に有効なROPs数が一致しない場合、本来設計された性能を発揮できない事態となることから、ノートPCメーカーにとっても出荷製品の品質確保が急務となっている。

NVIDIAはこの事態に対し「標準的な検査手続きの一環」と説明し、ROPs不足がノートPC向けGeForce RTX 50シリーズに広範に及んでいる事実は確認していないとコメントしている。しかし、メーカー各社が全数検査に踏み切り、深夜作業を含む対応を余儀なくされている現状を見る限り、NVIDIAの見解と現場対応には乖離が生じているとみることもできる。

また、CES 2025で正式発表された新型ゲーミングノートPCの量産スケジュールに狂いが生じている背景には、ROPs不足だけでなく、NVIDIAからメーカーへの最終版VBIOS提供の遅れも関係している。2月下旬に予約開始を強行した背景には、Blackwell世代のGPUに対する市場からの関心を逸らす狙いがあったとも考えられ、製品完成度と販売戦略のバランスに苦慮するNVIDIAの内情が垣間見える。

次世代ノートPC市場への波紋と他社への影響

GeForce RTX 50シリーズを搭載する次世代ゲーミングノートPCは、IntelやAMDの最新CPUと組み合わせることで、2025年以降のPC市場を牽引する存在として期待されていた。しかし、今回のROPs不足を巡る検査遅延と生産スケジュールの混乱は、NVIDIA単体の問題に留まらず、CPUメーカーを含むノートPC業界全体の計画見直しへと発展しつつある。

特に、NVIDIAのGPUを前提とした設計・開発を進めていたメーカーは、最終版VBIOSの受領が遅れた影響もあり、量産工程に着手できたのが直近であるとされる。GPUの検査対応にリソースを割かれた結果、他の部材調達や品質検証にも遅れが波及し、ハイエンドノートPC市場全体に出荷遅延の連鎖が広がる可能性も否定できない。

NVIDIAがROPs不足を限定的な問題と位置付ける一方で、ノートPCメーカー側の慎重姿勢は強まるばかりであり、エンドユーザーにとっては発売延期に加え、購入時の仕様確認や製品選定に一層の注意が求められる。ROPs不足という製造上の不備が、GPU単体の信頼性だけでなく、ノートPC市場全体の動向に影を落とす局面に入っている。


Source:VideoCardz.com