AMDは2025年3月、新型Radeon RX 9000シリーズのグラフィックスカードに対応する大規模なドライバーアップデートを公開した。今回の更新では、AMD FidelityFX Super Resolution 4(FSR 4)やFluid Motion Frames 2.1をはじめとする最新機能が追加され、画質向上やフレーム生成技術が強化されている。

特にAI関連機能の充実が目を引く。新たに搭載された「AMD Chat」は、GPU加速型のローカルチャットボットとして、画像生成やシステム設定の補助を担う。また、AI活用によるゲーム品質診断ツール「AMD Image Inspector」も導入され、グラフィックス性能とユーザー体験の最適化を支援する。

加えて、最新のゲームタイトル『Frag Punk』『Split Fiction』への対応や、WSL上でのROCmサポート拡張により、クリエイター向け機能も強化された。これらの動向は、AI技術の進化と統合が今後のグラフィックス技術競争に与える影響を示唆している。


AMD RX 9000シリーズ対応の新ドライバーがもたらす機能強化とAI技術の最前線

2025年3月にリリースされたAMDの最新GPUドライバーは、Radeon RX 9070 XTやRX 9070をはじめとするRX 9000シリーズに対応する大規模なものとなっている。特にAMD FidelityFX Super Resolution 4(FSR 4)は、新世代のアップスケーリング技術として、RX 9070シリーズ限定で導入され、FSR 3.1対応タイトルを自動的にFSR 4へアップグレードする新機能が目を引く。

FSR 4に加え、Fluid Motion Frames 2.1では、ゴースト低減や時間的トラッキング強化によってフレーム生成時の画質を高め、Radeon RX 6000・7000・9070シリーズだけでなく、Ryzen AI 300シリーズプロセッサにも対応範囲を広げた。AIを活用した新機能として、AMD Chatはオフラインで稼働するチャットボットとして、GPU加速によるテキスト・画像生成に加え、AMD Software: Adrenalin Editionの主要機能制御を可能にする。

加えて、AMD Image Inspectorはゲームプレイ中の画像品質を診断し、AIを用いてキャプチャデータを解析する仕組みを採用している。これらの機能強化によって、ハードウェア性能向上だけでなく、ソフトウェアレベルでのAI活用が新たな競争力の要素となってきたことが読み取れる。

WSL対応拡大とクリエイター向け最適化が示すAMDの戦略的方向性

今回のドライバーアップデートでは、Windows Subsystem for Linux(WSL 2)上でAMD ROCmが公式対応となり、Radeon RX 7000シリーズにおけるAIワークロード処理が効率化された。特にLlama3 8BやStable Diffusion 3といった生成AIモデルの実行に対応したことは、AI研究者やコンテンツクリエイターにとって選択肢を広げる要素となる。

さらに、Adobe LightroomにおけるAIディテール強化では最大70%、ノイズ除去で最大13%のパフォーマンス向上を実現。Topaz Photo AIやDaVinci Resolveといったツールでも大幅な処理時間短縮を可能にし、画像処理や映像編集分野においてAMDの存在感が高まる可能性がある。

加えて、最新タイトル『Frag Punk』『Split Fiction』への最適化や、HYPR-Tuneによる自動パフォーマンス調整機能の拡充など、ゲーム分野においてもプレイヤー体験向上を重視した姿勢が見て取れる。AI活用とクリエイター支援を軸に据える今回の施策は、単なるハードウェア性能競争から、AI・ソフトウェア連携による価値提供へと戦略転換を進めるAMDの意図を反映していると言える。

ソフトウェア進化が映し出すAMDの技術思想と競争環境への影響

AMD Software: Adrenalin Editionの強化により、ユーザーがドライバーアップデートやゲーム設定を簡単に最適化できる仕組みが整いつつある。特にInstall Managerでは、ドライバーや関連ソフトの自動更新機能を加え、AMD ChatやImage InspectorといったAI機能群と連携することで、利便性向上に直結する設計がなされている。

こうした統合的な機能強化は、NVIDIAやIntelが推進するAI戦略とも共通点を持ちつつ、オフラインAI処理やソフトウェア最適化に重点を置くというAMD独自の方向性も感じられる。加えて、ドライバーの細かな挙動を制御できる「Driver Experiments」ツールや、視聴体験をインタラクティブに変えるAdvanced Interactive Streaming(AIS)SDKなど、開発者向け機能も強化されている。

GPUドライバーが単なるデバイス制御ツールではなく、AI活用やユーザー体験向上の核となる存在へと変貌していることは、今後のGPU市場における差別化要素となり得る。AMDの取り組みは、単なるスペック競争から抜け出し、ソフトウェア・AI・クリエイター支援といった多層的な価値創造を志向する動きを強く示唆している。


Source:Neowin